春 錯乱
我慢して我慢して
見つけた春は 名残の桜を
満開にして
急ぎ経つ支度する佐保姫を
暫し暫しと引き留めて
いるようでありました
〜幻想春〜
いつの季節も美しいけれど
寒さを掻い潜り 長雨で
お預けを 頂戴した分
有り難さは 増すというもの…
ほぼ春の去り逝かむとす
その刹那
花の風吹に前も見えねば
あわあはわと 夢見心地
万華鏡の中に居て
迷い込むやうなり
風の吹くたび
カタカタと色が変わり
花の色も変わり染むものだから
目眩とともに狂気芽生える
嗚呼 真昼間の夢が
これほどに 豊かに香り立ち
けむり立つのだったか…
輪郭のはつきりと為ぬ
ものばかり 触れているのに
触れて無きかのやうな…
隣りに添いたる人の名をすら
この身すら忘却のあわいに
溶けゆく…
春…あわい…春…
これは いつたい
なんの香りか…
菫とも菜の花とも 梅とも違う
桜は主張しないから…
春が混沌とする香り立つ…
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