たゆたうなら 今のうち 探し回るうちが 必要だったんだって 気がつく日がくるわ ある日走り出してしまうと なかなか止まれなくなるから きみの思った通りに行かないうちは料理が完成しないんだわ 今にいい香りの料理を 満面の笑みで きみが テーブルの上に披露する日を 待っているから… 待ってるわ…
祝祭の光遠のく闇篝 燻るのみの夏証 花描く光の糸のほどけるを きみにとどけと祈る花火 一筋の光 闇の帳に花開く 彼岸の花火見えますか 君 とりどりの屋台の灯 満天の星月夜 天地 夏祭りに酔うていた 星屑の夜空に花火 咲き誇り 思い出一つ また生まれ 産声あげる刹那愛しき
とりどりのいろの 言葉を 拾いあつめるのに 時おり疲れて わたしは なにをしていたか わからなくなり 咽び鳴いている この形だったか… この色だったか… はたまた こちらだったか… 天は 素知らぬ顔をして 更に言葉の雨を降らせ続けて もう わからなくなる… 光や風やあらゆるものも 言葉を万華鏡のように変えて見せ 時の流れも力を貸すから 手に追えず… おろおろする… 純粋な目をした 言葉を持たない獣たちは 可笑しそうに微笑う 正しい言葉ってなんだい? 正しいって誰が決
前に出たがる人に 譲っただけ 群れたり 集うのは 苦手だわ… 面倒だし 疲れるし 目立つことは好きじゃない 小説家にも 詩人にも エンターティナーにもなりたかないの… ロマーニみたいに 流離っていたいだけ… 誰かになって 役を得ると 地に縫われて 動けない… 生涯 蒲公英の綿毛がいい… 無責任な? そうかもね… 地に縫われ 枯れてゆくのと 何処かの地で 人知れず 果てるのは …だけど 同じじゃない? つまりは なんにも 持って旅立つなんて不可能 うつそみの
裾を掴んで 駄々を捏ねたりしない ただ 夏は終わるけど… 辛かったとだけ 暑かったとだけ 忙しかったとだけ 祭りの喧騒が 目の前を過ぎてゆく寂しさみたいに 秋の名乗りを挙げる花を 最初に見つけた 安堵も混じり 空を見上げれば 千切れた雲の隙間から 高く青い空 不思議な星に生まれたわたしたちは 糸巻きするみたいに 季節を巻き取る まだ暑いけど夏と呼ばない 涼しくもないのに秋という季節 新たなことは いつも風が連れてくる レモネードをジンジャーティーに 変えるのもそ
窓辺にて 神妙な顔する我は神鳴りを待つ 叱りを受ける子の如く 夏雲は育ちに育ち 高く厚く 胸の不安のそれに似て 震える 向日葵も虫取り網も 線香花火も夢かと思う良き夏は 遥かに静か 遥かに涼し 夏詣の村の社の階段を 苔の香りも心地よき 蜻蛉と詣でた 忘れ得ぬ夏
わたしが子どもの頃過ごした故郷は田舎だったし 自然が当たり前にあった。 夏は 今の如く狂ったように暑くなく 日も落ちれば 涼風が吹いた。 田んぼの畦道の水路には 夕暮れを知らせるように蛍が飛び交い 親に許しを得て近所の水路の脇へ蛍を見にゆくのは 夏の短夜の楽しみの一つ。 夕涼みを兼ねて どこかしらの近所の大人が出てきて子どもたちを見守り なんとも長閑かなよい風景だった。 わたしは一度虫取り籠に いっぱい蛍を採り 大人が止めるのも聞かず 持って帰った。 淡い薄い緑色の灯
遠く迄行く暇も お金もなかったので… だからといって 長く続いた 流行病の制約も緩んだようなので… 許されるという有り難さを 少し味わいたくて 週末のドライブもわたしの小旅行なのです。 三浦半島は わたしの大好きな場所で 何かしら懐かしい場所。 今日は 走水神社へ… わたしの夢枕に現れて以来…時間ができたら 節目には参拝に行く。 そのおかげかさまざまな危難から避けられた。 ご存じの参拝者は少ないかもしれないけれど、常駐の神主さんがいらっしゃらない社殿は この港町の小さな
讃え 褒められた花々も 枯れて仕舞えば なんの木だったか 忘れられる かつてあなたは なんの木だったか… かつてあなたは どんな花を咲かせたか… 尋ねたところで 過去のこと 如何に見事に咲かせようとも 如何に人々を惹きつけようとも たまゆらの夢… うつそみの微睡に見る 幻… 何にありがたくて手を合わせていたのか… 目覚めたようで 生まれてこのかた 一度も 目を覚まさぬまま 死んでゆくような気分で いえいえ それすら気づかず 死ぬのかも知れぬと ふと思ったら 可笑しくて
五月の風は 心地よい ほんとうに 口に含んだら ミントのゼリーのような 味がするのではないかと 思う… わたしの大好きな 立原先生の 詩に違わない… 五月の空は 美しい 多分一番きらきらしている 夏空よりも 緑色して きらきらしている 翡翠と アクアマリンを 重ねて覗きみたよう… 五月の雨は 梅雨よりも 晩秋の霧雨よりも 冬の長い夜の雨より憂鬱 わたしの心を濡らすならば 明るい花が咲き乱れる春に 一面濡らす雨が沈むのだ どんなに明るい光を持ってみせても どんなに花の世
休み初めは 曇り空 みんなは休み 明日から我は 普段通りに 商う皐月… 皐月の薔薇は 凛として 自信あり気な 淑女の顔で ツンと澄まして 尖ってイル 風は 湿気を少し帯び 括りし髪を くしゃくしゃにする シャツはアイロンかけ忘れ ままよと 出かけたわたくしは なを 小さき生き物とナル 翠濃すぎて 酸素は多く 肺に吸い込み過ぎて 咳混む… 抗う力も無いわたし 窓辺の鴉が覗き見る 黒曜石よりうつくしき瞳で その純粋が わたしは ほしい…
ささやかな 場所にジャスミン 二度植え替えて 我が背丈と等しうなりぬ 名を羽衣と言う 真白なるジャスミンの 香りただよふ 五階の窓辺 もう今年 いよいよ終いとなりぬ哉 良く咲きし年 散るも潔く 花も人も かくあるべしと 教えられ 散りにし花も 残り香ぞ良き
汚れや疲労を洗うように 雨が降り続いている 黄砂や花粉に塗れた街も わたしも… ただ…わたしは懇々と眠る 眠る… 一週間の疲れは 眠ることでしか解決しない キツイニコチンも ヘビーなカフェインも… 真逆の身体に良い無農薬の野菜も 香りの良いハーブも…解決の糸口ぬらない。 夢の中で凡ゆる冒険をしなくなるまで眠る… 夢の中で穏やかに眠れるまで眠る。 若い頃の休日とは違う… 知らないうちに花は違う種類の花が満開になる。一週間のうちに季節は足早。 目覚めたら朝でなく夜に
花曇りの春は 過ぎ去るようで… 菜種梅雨の 寒さも ゆるゆると去るようで… 雪解け水が 小川のせせらぎに 同調するように… いつの間にか何もかも 水彩の淡いものが 滲んで溶け合うように… 春は限りを決めている 協調できなかったわたしだけ ガラスに閉じ込められた人形みたいに佇んでいる 交差点の後ろのビルの片隅 スプリングコートは いくつになっても似合わず イラつきながら 蹴り出した一歩 散り染む桜に 足を掬われた… 春はいつでも 迷うばかりの交差点 桜色に微笑
我慢して我慢して 見つけた春は 名残の桜を 満開にして 急ぎ経つ支度する佐保姫を 暫し暫しと引き留めて いるようでありました 〜幻想春〜 いつの季節も美しいけれど 寒さを掻い潜り 長雨で お預けを 頂戴した分 有り難さは 増すというもの… ほぼ春の去り逝かむとす その刹那 花の風吹に前も見えねば あわあはわと 夢見心地 万華鏡の中に居て 迷い込むやうなり 風の吹くたび カタカタと色が変わり 花の色も変わり染むものだから 目眩とともに狂気芽生える 嗚呼 真昼間の夢が
ホワイトデー 短歌 一度とて 返礼などはせぬ きみの 1日早い 白き日の菓子 萌黄色の缶に 品良く納まるハートマシュマロの 柔らかさゆえ 込み上げる熱 言葉無くて 後ろ姿をみるばかりの いつ咲く花や 散る花や 桜花の如キきみ