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silent(ドラマシナリオブック)

生方美久氏初連続ドラマ「silent」のシナリオブックを読了したので、感想を綴っていこうと思う。

silent公式サイト↓

去年Twitter世界トレンド1位にも輝いた大ブレイクドラマ「silent」のシナリオブック。
このドラマのおかげでめめにハマった母のために、このシナリオブックを購入した。

母に負けず劣らず、私もこのドラマにハマったので、脚本がどのように描かれてるのか気にはなっていて、やっと母が読み終わったので、次は私の番と言わんばかりに読んだ。 

あらすじ

青羽紬には、かつてかけがえのない恋人佐倉想がいた。
紬と想は音楽好きというお互いの趣味を通じて、仲を深め、順調に交際を進めていたが、卒業後のある日、想は紬に突然「好きな人がいる。別れて欲しい」と一方的に別れを告げ、紬の前から姿を消してしまう。
突然の幸福の喪失に打ちひしがれつつ、それから8年という月日が流れ、新たな人生を歩み始めていた紬は、ある日偶然駅で想の姿を見かけたことをきっかけに、再び彼の存在を意識するようになっていく。
ついに想に再会した紬だったが、彼が徐々に耳が聞こえにくくなる“若年発症型両側性感音難聴”を患い、聴力をほとんど失っていたという思いがけない現実を知ってしまいーー。

自由度の高い脚本

読んでみると思った以上に「……」と書いてあることがが多い印象だった。

ドラマを見ていても、確かにセリフじゃなくて俳優さんの表情や視線、手の演技で表現するところが沢山あったなぁ、と思い返してみる。
そもそも手話を題材にしてるから、表情と手の演技が重要になってくる、という前提はあるにしても比較的この「silent」は役者さんの演技に表現を委ねている部分が多いことをシナリオブックを読んで改めて思った。

佐倉想を演じためめこと目黒蓮氏も、とある番組で「手話は手だけじゃなくて、表情も込みで相手に伝える」と言っていた。

その相手に伝えたい自分の気持ちを表情として最大限に引き出すために、こんなにも自由度の高いシナリオになったのかなと子のシナリオブックを読んでいて感じた。

良いところも、悪いところも。


「silent」に出てくるキャラクターは、基本的にはみんな良い人。
紬も天真爛漫で明るいし、湊は主成分優しさってくらいずっと優しいし、想は常に相手の気持ちを考えながら行動してる感じがして、彼の性格の良さを感じる。
その他の登場人物も、本当に優しくて穏やかな人ばかりなのだけれど、どのキャラも必ずと言って良いほど、どこかの場面で「え?そんなこと言うの?」と言う場面がくる。

ただ良い人だけでは終わらないのが、このドラマのミソだ。

例えば、紬と想が再開して間もない頃、紬が湊と付き合ってることを知った想は「2人きりで会わないほうがいい」と紬に伝える場面がある。
その時紬は「佐倉くんのこともう好きじゃない」と告げ、これからも友達として付き合っていきたいということを話す。
この紬のポジティブが故の自己中というか、目の前の相手の気持ちを考えきれない想像力のなさに、ドラマを視聴してた当時の私は正直イラッときていた。
(そのあと結局好きになってるし)

また、ドラマを通して聖母のように優しかった奈々ちゃん(私はこのドラマの中で1番好きな人)。
そんな奈々ちゃんも、密かに思っていた想からフラれそうになる時に、思わずこんなことを口走ってしまう。

18歳で難聴になって、23歳で失聴した女の子探して恋愛したほうがいいんびゃないかな?
「silent」/桃野奈々のセリフ

ドラマを見ていた時、大好きな奈々ちゃんの闇の一面に触れ、かなりショックを受けたことを覚えている。

だけど考えてみると、全部が全部いい人なんていないわけで、逆にここまでいい部分も悪い部分も描いてくれるところが人物の輪郭をより強調してくれて、リアル感と親近感が湧く。

脚本家の生方氏は元々看護師さんなので、多くの人を見てきた故の人物描写だと感じた。

第6話のラストの美しさ

「このドラマの名場面を挙げて」

そう言われたら、かなり悩みながらも私はこの6話のラストシーンを挙げたい。

どんなシーンか、言葉で説明するのが難しいけれど頑張ってみる。

カフェで紬と話していた奈々ちゃんは、紬と自分との差を目の当たりにして、惨めさ故に外に飛び出してしまう。
泣きながらお店から飛び出した奈々ちゃんの前に偶然にも想が通りかかり、何かあったのかと心配した想は、奈々ちゃんに電話をかける。
ずっと想の声を聞いてみたかった奈々ちゃんは、想からの着信音が鳴る携帯を耳に当てる。
もちろん、何も聞こえない。
向かい合い見つめ合う2人の間には、微かに聞こえる電話の着信音だけが響いていた。

他にも好きなシーンはあるかと聞かれれば、そりゃある。沢山ある。
ありすぎて困るくらいだ。

1話の紬と想が8年ぶりに再会してしまって、
想が手話で思いの丈をぶつけるシーンとか。
4話の湊の名前を呼ぶ想のシーンとか。
5話の紬と想が別れた後の電話のシーンとか。
それぞれの回で好きなシーンはあるし、もちろんそのシーンについても話したい気持ちは山々ではある。

でもやっぱりこの6話の繊細な美しさと、奈々ちゃんの想への思いと切なさを前にした時、涙を流さずにはいられず、同時に奈々ちゃんを演じる夏帆の演技の凄さに鳥肌が立ち、心の中深く深くに沈み込みこんだ。

このシーンほど画面に釘付けになったシーンは、他にはないだろう。


最後に

このドラマは2000年から2010年代のかつてのテレビ最盛期の時の気持ちを蘇らせてくれた。

ドラマが始まれば視聴者は、様々なミッションを請け負う。
手話と表情の移り変わり、繊細な感情の交わり、そして演者の一呼吸一呼吸の間の行間、それら全てを読み取ることに必死になり、おかげでながら見なんて出来っこない。
テレビに齧り付いて、集中して静かな空間で繰り広げられるありとあらゆる視覚的情報を取りこぼさないようにしなければならない。

でもそれが本当に楽しい。

テレビが面白くないと言われるようになってしまった時代に、これだけテレビを見ていたいと思わせるドラマを作れるのかと1話を見て感動したのを、今でも覚えている。

ドラマではなかったシーンも書いてある。
暖かくとも切ないラブストーリーの世界に浸りたい貴方に、是非。

おまけに

奈々ちゃんと春尾先生の関係性尊すぎない?
ドラマ中盤から、紬&想より奈々ちゃん&春尾先生の方が気になっていた。
2人が居酒屋で仲良く飲んでるシーンがくると自然と心が和むし、いつまでも眺めていたかった。
スピンオフでもいいから、この2人のこれからを知りたい。切実。

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