【セールスイネーブルメント実践】コンサルって口だけ? ~営業コンサルの僕が、実際に自社の営業改革をやってみた結果~
こんにちは、セールスサイエンスラボ /(株)マツリカの中谷です。
本日はタイトルの通り、『営業コンサルってナンボのもんじゃい?!』の疑問にお答えしたいと思います!
このテーマを語るために、改めて自己紹介をさせて頂きます。
自己紹介
モットーは、
『セールスというアートをサイエンスし、日本の営業をアップデートする』。
Sales Science Lab, Inc.のCEOとして営業コンサルティング、講演、営業研修、書籍出版(ただいま執筆中)の事業を営むとともに、セールステックのスタートアップ、㈱マツリカにてVP of Sales & Marketing (2020年3月時点)として勤務しております。
~ 経歴 ~
このように、ずっと営業領域の仕事をしてきました。
最近では、営業×コンサル×ITが主戦場となっております。
一方で最近、『コンサルって口だけだよね』という意見を多く聞き、やるせない気持ちになったりします。
(コンサルファームを経験せず、名乗った者勝ちの『エセコンサル』が蔓延っているのも事実ですし、現場を経験していないコンサルファーム出身が成果を出せないことがあるのも事実。。)
なので僕は、
つまり、現場感×ロジックでどれだけ成果を出せるのか、証明したいと思います!!
突然のセールスマネージャー就任
そんな僕は2018年10月にマツリカにJoinして以降、カスタマーサクセスの統括をしてきました。
MRでの営業経験としてはルートセールスメインですし、SFAの導入~成果創出(CS業務)はコンサル経験も活きますので当然ですかね。
(『MR トップセールス』でGoogle検索していただけると、僕が一番上に出てきます!)
そんなこんなでカスタマーサクセスの立ち上げをやってきたのですが、2020年1月から体制変更があり、急遽セールスのマネージャーに就任しました。(詳細は下記の記事より)
『2020年1月からセールスマネージャー宜しく!』と言われたのは2週間前くらいのタイミング。
さぁてどうしようか、と正月休暇を迎えました。
セールスマネージャー就任2ヶ月間でやったこと
さてここからが本題ですね!
基本的に営業改革のコンサルプロジェクトは半年くらい掛けて成果を出していくので、まずは下地作りが大事です。
一方で、スタートアップで半年掛けていては遅い。半年も待ってくれません。
その間に、『やっぱコンサルって口だけで成果出ないじゃん』と見切られてしまいます。
なので、超期間短縮をして成果を出しに行きました。
というのを目標に走り始めました。
大方針は、『案件を絞って、確実に、大きく獲る』です!
まず、やったことを一度書き出します。
ざっと書き出してみただけで17項目です。(MECEじゃないのは目を瞑って。。)
全部詳細に説明していくと日が暮れてしまうので、簡単に一つずつ(ポイントだけ)ご紹介していきます!
※「セールスイネーブルメント」は、日本においては「=人材育成」などの文脈で誤認されていることが多いですが、その本質は「再現性を持って、かつ予測可能な形で売上を上げ続けることのできる営業組織作り」であり、そのためには「データと型」が必須であることは言うまでもありません。
① 過去失注案件の分析(約2,400件)
我々はSFAベンダーで、自社のSFAであるSenses(現Mazrica Sales)を利用しているので、失注データが山のように貯まっています。この失注データは宝なんですよね。
このデータを元に、
を一つ一つ確認していきました。
ここには膨大な時間を費やしました。(これで僕の正月が終わったと言っても過言ではない)
そうすると、
があることが確認できました。
まず、機能要因に関しては、『この半年以内に開発されない機能』が必要な案件を追わないことにする。(早めの見極め)
営業要因に関しては、
といった理由が、機能要件を除くと半分強でしたので、ここの攻略をオペレーションに組み込みました。
②法人における決裁ルート攻略手法の浸透
上述のChampion(キーパーソン)を探す活動に関わってきます。
このあたりを、『Champion』、『Coach』、『Economic Buyer』、『Blocker』の4つに分けて共通言語を作っていきました。
ここで参考にしたのは@DJ141さんのnoteと、書籍『隠れたキーマンを探せ』です。
③ Mutual Start Planの制定
失注分析で『時期ズレ』が非常に多かったので、ここも手を打ちました。
『半年以内に導入したい』とお客さんは言っているが、本当なのか?それは何故なのか?
ここが握れていないと、高確率で滑りますし、予定通り受注できたとしてもそれは『運』です。
なのでコンペリングイベント(その日までにお客さんが買わなければならない差し迫った明確な理由)を確認しつつ、Mutual Start Planをお客さんと握る、という型を作りました。(コンペリングイベントの用語理解はこちらから)
※CloseではなくStart Planとしているのは、プロダクトを買って貰うのがゴールではなくスタートだから。
【イメージ】
④ 初回商談資料の改訂
初回商談資料が数十枚あり、プロダクト紹介と自社紹介、その他なぜあるのかよくわからない資料が膨大にある一方、『これを握らないといけない』を補足する資料が無かったので、添削し、より筋肉質にしました。
放っておくと、『あれもこれも入れておけば安心』となってしまうのが営業ですよね。
これは永遠の課題なので引き続きブラッシュアップしていきます。
ポイントは、『Whyから始める』を大事にして、最初に『できるだけプロダクト(機能)の話をしないこと』。例えば、自社の紹介をする際には、
このあたりを丁寧に伝えられていると『機能/価格勝負』を避けられる可能性が上がります。
⑤ デモスクリプト設計
デモも、各個人で思い思いににデモをしていたので、型がありませんでした。
結果、皆バラバラのデモ内容、かつ、『機能の話』が中心になっていました。
大事なのは【機能<効能<イメージ】です。
この機能により、どんな良いことがあって、どう業務に結び付くか。
このイメージを伝えるのがデモの意義であるはずなので、デモのスクリプトを作り刷新しました。
例えば、
これは全然ダメ。このケースでは、
この方が伝わると思いませんか?当たり前ですが、こういうところには最新の注意を払いましょう。
⑥ 初回商談の型化
これも型がありませんでした。
・最初にヒアリングをするのか
・まずは簡単にデモをするのか
・資料を使って伝えるのか
これが統一されていないと初回商談の振り返りも上手くいきません。
なのでこれは、
といった型を作りました。
⑦ MEDDICの導入(メソッド)
上記の『何を握るか』、これが超重要です。
営業はとにかく『案件を前に進める』のが仕事。
案件を前に進める為には何を握ることが大事なのか?
これから逆算して、『握るべき項目』を設定しました。
これが、『MEDDIC』と『SSM』を掛け合わせたものです。
(MEDDICとSSMについてはこちらから)
私たちは、
この項目をSFA上で管理しています。
⑧ 捨てる案件の再定義
失注案件の中には、『どうしても取れない』案件がありました。
機能的に実現できないこと、どうしても価格的に出せない条件など。。
それでも『お客さんの反応がいいから』と追った結果、最後の最後に『やっぱり難しいよね』と失注してしまう案件はけっこうあります。
なので、こういったパターンの失注案件から、『このパターンはいけそうだと思っても追わない』という基準を作りました。
これによって、無駄な工数を割かないことと、失注リードタイムの短縮を実現しています。
また、『本当に取るべき案件』にリソース配分を高め、その案件のマインドシェアを取り受注リードタイムを短縮する&受注確率を高めるということをしています。
⑨ 自社の強みの再設計
意外と難しい『強み』の伝え方。
『強み』と『特徴』は似て非なるもの。
『特徴』というのは、自社サービスとしての推したいポイント(自社軸)で、『強み』というのは『特徴』の中でも他社と相対比較した際に勝っているポイントです。
なので、他社の特徴を洗い出し、〇×表を作って『勝っているポイント』にフォーカスし、『A社と競合したらこの強みで押す』などを再設計しました。
⑩ ストーリーメイク
僕は全案件同行できるわけではありません。なのでその商談に行かなくてもある程度その商談の質を担保するために、『受注までのストーリー』を描きます。
いつも書いている項目は、
このあたりです。
これとMEDDIC/SSMがあれば、ある程度誰でも商談をこなして案件を前に進められる状態にします。
これは、契約しているCTIのピクポン(@yobata_tw)があってこそ。
アポ取得をした電話の録音を聞き、サマリーを読んで顧客を想像しストーリーメイクします。
⑪ フィールドセールスの事前架電
我々は、インサイドセールスがアポ取得をしてフィールドセールスが訪問(ないしはWeb商談)するオペレーションですが、稀に『今、取らざるべきアポ』は紛れ込んでしまいます。(インサイドセールスが悪いとかではなく)
このアポで無駄な工数を割くことが無いよう、セールスは再度自分で電話をし、より有意義なアポにするための追加ヒアリング等を行います。
これにより、無駄アポは減り、初回商談での案件進捗率が上がります。
⑫ 値引き対応⇒Deal Size拡大
『SaaSはNetflixなどと同じで、月々定額の~』と牽制していても、やはり最後に値引き交渉が入ることは多々あります。
※大前提、値引きはしません!!(他のお客さんに対しても不公平ですし)
そんな際に、『お客さんが求めるから値引きしていいですか』という営業は最悪です。
ロジックと妥当性のない値引きは断固反対。
値引きをするなら、バーターで何かお客さんにも譲る部分を用意してもらいましょう。
例えば、『こちらが求める期日での契約の約束』や、『オプション付けて頂く』、『複数年契約にして頂く』など、タダで譲ってはいけません。(もう一度言いますが、正規価格で買っていただいている他のお客さんに極めて失礼です)
⑬ 内勤日の導入、2件/日の商談数設定
我々SFAベンダーでも、『全ての案件で入力漏れがない』状態、というのは非常に難しいです。
なので、毎週月曜日は『内勤デー』にしました。
という形で、週の頭に一週間分の動きを整理し、火曜~金曜は『商談に集中する』状態を作ります。
そして、火曜~金曜は1日2アポまで。
1日に3アポやると、商談の質が落ちます。
我々はホリゾンタルなSFAを提供しているので、様々な業種業態のお客さんに提案をしなければなりません。
なので、商談の質を落とさないために1日2アポまで、というのを決まりとしています。なので月の商談件数は30~35アポくらいでしょうか。
⑭ フェーズ設計
今までのフェーズでは少し曖昧な部分があったり、中規模以上のB2Bセールス(社内意思決定プロセスの複雑化)に対応していない設計になっていたので、『誰と、何を合意しているか』をフェーズに盛り込みました。
例えば、
このあたりですね。
これにより、フェーズ進捗の難易度は上がり、案件が前に進みづらくなりましたが、その分読みの精度が上がりました。
そして、そのフェーズを進めるための商談をするようになったので、結果フェーズが進捗した際の受注確率も上がってきているように思います。
⑮ Close Rate/アポ数(率)のKPI撤廃
チーム立ち上げ初日に、『うちのチームは案件を絞ります!』と宣言しました。
つまり、より精度の高いターゲティングをして、『追わない案件』を明確にすること。
そうすると、トップファネルからのアポ率は減少し、初回アポからの受注率は向上します。
つまり、受注率(Close Rate)やアポ数(率)をKPIにするのはあまり意味がないということになります。
なので、参考として基準値を設けてはいる程度です。
そして、各フィールドセールスの案件保有数(キャパ)を見ながら、アポ基準の蛇口をキツくしたり緩めたりして調整し、月間アポ数が30~35程度になるようにコントロールしています。
⑯ SDRナーチャリング手法の型化
SDR(インサイドセールス)はアポを取るだけではありません。見込み顧客の検討温度を温めるのもミッションの一つです。
今はMAツールもあり『ナーチャリングメール』が送られたりしていますが、メールでナーチャリングされる人なんて滅多にいませんよね。笑
一方で、あまり熱くないeBookの資料ダウンロードをされた見込み顧客にアポイントを取っても『今すぐ』案件ではないので無駄アポになってしまう。
なので、eBookをランク付けし『ランクC→B→A(自社サービス概要資料)』と温められるように、インサイドで誘導していきます。
この際ポイントは、
とすることです。
これで、将来への種まきをオペレーションに組み込みます。
⑰ SDRの業務スコープ再定義
上述でもありますが、インサイドセールスの役割はアポイントを取るだけではありません。
チームとして、フィールドセールスと共に受注を増やすことを目的とすると、スコープ(業務範囲)は多岐に渡ります。
例えば、
このあたりでしょうか。
つまり、インサイドセールスが主導で案件を進めています。
どちらが上でどちらが下、ということはありませんが、一般的にフィールドセールスが主導でインサイドセールスはそのお膳立て、というイメージがあるように思います。
しかし、この我々のオペレーションにおいてはインサイドセールスがコントロールセンターになっているとも言えます。
【参考】mazrica Z model operation
2ヶ月経過しての成果はいかに?!
結果から先にお伝えしましょう。
第一四半期(1月~3月)の売上目標を6週間で達成しました。(2倍速!!)
もちろん私のチームが圧倒的社内最速目標達成です。
さらにチームメンバー全員受注、今後のパイプラインも潤沢です。
つまり、『営業コンサルのスキルは本物だった』を証明できたのではないでしょうか。
振り返り
この2ヶ月間で型を構築し、一定の成果を出す事ができましたが、まだまだ修正点がたくさんあります。
それは、型を作ったから修正点が見えるわけなので、まずは『型作り』からスタートしたのが成功要因だと思っています。
実は僕、B2BのITセールスはプレーヤーもマネージャーもやったことが無い中での突然の就任でしたが、『営業には普遍的なスキルが存在する』という重要な事も証明できたのではないかと思っています。
また、最終的に2020年通期としては前年比で約3倍の売上成果を残すことができました。
『うちは特殊だから』は言い訳になりません。
そして、『やったことがない中でも成果を出せる』のがコンサルタントの最強のポータブルスキルなのでそれを存分に発揮できたと思います。
これを実現するためには何よりも『学習し続ける』ことが必要であり、特に参考にさせて頂いたりアドバイス頂いたのは石井さん(@DJ141)です。感謝!!
(今回、項目数が多すぎて全部詳細に書くのは不可能に近かったので、ポイントだけ記載しました。詳細はまた追って。。ご興味ある方はDMください!)
さいごに
※2023年5月追記
日本のセールス、そしてセールステックへの愛と、憂うる気持ちから、私なりの理想の営業を具現化した新たなセールステックプロダクトを開発しリリースしました。
デジタルセールスルームという2023年現在、世界(特に北米や欧州)で最も注目を集めるセールステックの新領域の一つで、日本で初のプロダクトになります。
買い手の顧客とデジタルに繋がり商談情報(資料、議事録、タスク等)を共有し、その中でチャットコミュニケーションし、営業と購買をスムーズに成功させることが可能になります。
本記事でご紹介させていただいたセールスイネーブルメントの取り組みの根幹を実現するプロダクトとなっています。ぜひご覧ください。