60話 ソープランドボーイ・ブルース
眼鏡が燃えた。
忘年会でのことだった。私の業界は12月が書き入れ時のため前倒しで忘年会が行なわれる。
社歴が浅い組で忘年会と新人歓迎会を兼ねて催すことになり、その新人に、新人と言っても私と同い年なのだが……。
そいつに私の眼鏡を燃やされ、久々に人生に刺激を感じたので書いていく。
ちょっと良い焼肉屋に集まり、乾杯をする。
みんないうてももうアラサーなので、大学生のような荒い飲み会ではなく(私は大学生のとき、大学生とか全員うぜーと思っており、馴染めていなかったのでまずこの感覚があっているかどうかが分からない涙)、節度のある和気藹々とした雰囲気だった。
それが面白くなかったのか、ここらでドーンと盛り上げようとしてか、俺の右側に座っていたそいつが、「おれ盛り上げます!!」と言って、ソープ
ランドに行くために50万円をサラ金で借り、それが会社にバレた話をし、スベり、スベった空気を挽回するためにチンコを出し、それもウケずにチンコをシゴくとかいう地獄のフルコースをぶちかましてきたのだ。
それもエグスベりし、挙げ句の果てには、他の社員に「嫌いな社員はー!?」とか聞いたり、他の人とむりやり肩を組んでセックスという言葉の連呼、隣のやつを脱がせようとしたり、急にスイッチが入ったように暴れ出す。
ビール2杯でこの豹変ぶりは安上がりでいいなと思っていたが、ずっとうるさいし、女性社員の身体まで触り始めたので、さすがにみんな「コイツ急にどうした?」の空気が凄かった。
そして、自分の左に仲良しの先輩が座っていたのだが、そいつが先輩に「〇〇さーん!面白いことしまーす!!〇〇さんのメガネ焼いちゃいまーす!!」と言い私のメガネを焼肉の網に乗せたのだ。
いよいよ俺の出番だ!
私は、オタクのツイートでよく見る。おれキレたら頭真っ白になるんすよ〜笑タイプなので、秒で
そいつに掴みかかって思いっきり喰らわしていた。
そいつは最初面食らっていたが、逆ギレし始め、私に殴りかかってこようとしたが、私より全然フィジカルガチ勢の社員2人に止められた。これはいよいよ収拾がつかないので、会社から上司が来ることになった。
上司が到着し、酒も抜けたそいつは青ざめながらタクシーで無事帰宅したとのことだった。
後日、眼鏡を弁償してもらえる感じになり、同じ
価格帯は癪だったので、燃えた眼鏡の4倍の価格の
ものを購入した。てか安い眼鏡があんまり売って
ない。マジ眼鏡って高いんすよ〜
そして領収書は会社の名前で貰うかとおもいきや
そいつの名前で!とのことで、そいつの名前で
もらってきた笑
で、例のそいつはそのまま契約が更新される事は
なく、会社を去ったのだった。まさかそいつの歓迎会と送別会が同時に行なわれることになったのは
笑ってしまった。
しかし少し前にシラフのそいつと話したとき、
どうやら「生きづらさ」があるような人生を歩んでいるらしかった。なんか根は真面目そうなのにクズというか…朝起きられずに大学の単位を取れないやつ的な…
そいつは先のことを考えてか、考えなしか、子供ができた勢いで4000万円のマンションを購入し、
頑張ろうと思った矢先に、仕事がうまく行かなく
なり、嫁子供にも逃げられて、その寂しさを紛らわすためにソープに通い、飲んだくれて欠勤し…
この業界に転職したみたいなことを言っていた
のだ。
それを聞いて、ハッと我に帰った。そもそもこういう業界には人生にっちもさっちも行かなくなった人が最終地点で応募してくるもんだよなぁ と、
とは言いつつ、にっちもさっちもというのは結果で、そいつは頑張って嫁も子供も一回は手にしたのだ。両方とも未だ成していない俺にこう書かれるのは癪だろう笑
行動した結果、マイナスになってしまったやつ、
行動したやつを笑う、マイナスにすらなれてない
やつ
そもそも人生におけるマイナスの定義とは…
俺は…
お前は…
っていう話を考えてみたんですけど、
どうですかね?