安部公房作『壁』を読んで

はっきり言って、私には難しすぎる感じがしました。

ストーリー展開も、複雑な比喩も、あまりわかっていないと思います。

それでも、読んで良かったと思っています。
心に残った部分があり、好きな表現があり、『うーん。。。。。』と考えることができた部分が、少しずつありました。

壁を読みながら、なぜか頭の半分ぐらい『VR』や『仮想現実』のことを考えていました。
登場人物の世界が現実から、二次元の世界などの別の世界へと移遷が多く起こり、それが今でいうところのバーチャルリアリティのようだという感覚になったからです。

特に私が「んー、なるほど」となったのは、
第一部S・カルマ氏の犯罪をめぐる裁判のY子と哲学者の問答です。

裁判が何のためにあるのかという点を
Y子は無罪を主張するために、こんな裁判をしているのだと説明しますが、

哲学者は、犯罪者が安心して犯罪を犯せるために裁判が存在する、裁判が存在するから犯罪が安心して行われる、犯罪を犯したいという気持ちがあり、犯罪を犯すことができるようになるために、裁判が必要とされると主張します。
(はい、この時点で私の理解は及ばなくなってきます。
このあたりが安部公房が唯物論者かどうか?の論点になっているのでしょうか。さっぱり分かりません。)

私は『壁』の中では
『第一部 S・カルマ氏の犯罪』と『魔法のチョーク』が好きでした。

『魔法のチョーク』については、主人公が描いた女性が生まれてすぐに「死」を描くことを主人公に要望する、
その理由として何事にも区切りを最初に作っておくことが重要とする場面が印象に残りました。

なんだか大人だな、おしゃれだなと思いました。
(私ならもっと、主人公のような欲望に直接効くようなものを望んだと思います。)

あと解説も良かったです。
特に壁があって、遮られるから、人間は想像し、思考するという部分は心に残りました。
現在はインターネットで遮られる感覚というものからは離れている感じもありますが、想像する、思考するためには壁が必要なんだと自分で納得しました。

もう少し、味わって読むべき作品だと思いますが、理解できない。
味わうための知性が及ばない。
そんな感覚になった作品でした。
(購入したので、3年後ぐらいにまた読んでみたいと思います。)


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