【挿絵あり】№9_召喚術の授業は××な魔物と、 (月下美人系魔物 VS 安全第一なぼっち学生)
【月下美人系魔物 VS 安全第一なぼっち学生】の召喚契約を巡る攻防を描く、割と現代的で現実的なファンタジーです。
この№2~№●まではBL版・ブロマンス版、共通になります。
「お前の魔力は、魔物にとって特殊だ。
甘美であると同時に、力を与える特徴がある。」
「………………は?」
……………何を、
何を言ってるんだ、この魔物は…
(そんなこと、あるわけがない……ッ)
脳裏に一番最初と、その次に召喚した魔物達の姿がよぎる。
その悲惨な最後も。
「、ッ!………」
あんなことになったんだ。
毒になる、と言われた方がまだ納得できた。
否定を露わにした僕が言葉を発するより先に、魔物は静かに補足を添えた。
「強すぎる薬は劇薬になる…お前の魔力は魔物からすれば、人間が認識している量の500倍はある。
1年前にお前が召喚した劣弱な魔物らには、幽かでも身に余る力だった。
結果、召喚に応じた対価として得た過大な魔力に耐えきれず、身を滅ぼした。」
ガツンと頭を殴られたような衝撃が走った。
――対価として得た過大な魔力に耐えきれず…
(ぁ、だから、あんなに身体が膨らんで…)
"調査ではこれといった異常は見当たりませんでした。やはり突発的な現象だったのでしょう"
"召喚する側にアレを引き起こす要因があったとは考えられないな。魔力を送った先の魔界で偶発的に、ゆらぎが生じたとしか…"
先生方にはもちろん調査にあたった外部研究者の一部にも、僕は原因を尋ねて回った。
しかし誰も明確な答えを持ち合わせていなかった。
自分なりに似た事例や参考にできそうな文献を探したりもした。
3回目の召喚以降、問題なく召喚ができるようになっても調べ続けた。
(ただの学生が調べたって、自己満足でしかないだろうけど…)
そう思いながらも、僕は何かできることをし続けなければいけなかった。
あんなことを二度と起こさないために。
そして何より。
魔物を殺してしまった罪悪感から意識をそらし、自分の心を守るために。
でも結局、その答えを知ることはできなかった。
「…………」
追い求めてきた答え。
それがいきなり降ってきたことに気持ちが追いつかず、茫然とする。
そんな僕に魔物は高みから言葉を言い放った。
「気にすることはない。お前達の世界にも極小の生物がいるだろう?人間の目に入らない位のもの達が。
お前はそれらを気にしながら地を歩くか?
…潰したことを嘆いてもキリがないはずだ。」
「………、」
(気にすることはない、か…
確かに目の前の魔物からみればそうだろう、けど)
視界に入らないちっぽけな存在を踏み潰してしまうのは、仕方のないこと。
その言い様は、弱い魔物を見下している風ではなく”当たり前の事実を述べただけ”のように聞こえた。
(そしてこの魔物から見れば僕も、人間だって似たような存在だろうな)
”強い魔物ほど狡猾で人間を騙そうとする者も多く、とても危険な存在です”
授業で先生が言っていた警告。
一方で目の前の魔物は、こちらへの悪意や害意を全く感じさせなかった。
だがそれは気軽に刈り取れるものにただ、手を伸ばそうとしているだけだからだろう。
(この魔物の言葉を鵜呑みにするべきじゃないな)
僕の魔力が魔物にとって特殊だという話も疑ってかかった方がいい。
何か隠された思惑があると考えるべきだ。
「私はあの後すぐに、お前の魔力の特殊性に気付いた。
そしてここ1年ほど、他の魔物に横奪されぬよう監視していた。」
淡々としたその言葉で、僕は重要なことを思い出した。
(なら、3回目以降の召喚はどうして問題なく出来たんだ?)
原因調査のため教諭や外部研究者らの前で行った3回目の召喚から、自分は何事もなく魔物を召喚できるようになった。
(1、2回目と同じ魔物だって召喚した。僕の魔力が原因なら、同じようになっていたはず…)
やはりこの魔物は嘘をついている。
僕に言った内容とは違う目的のため、僕を騙して召喚契約を結ばせようとしている…
そうとしか思えなかった。
「話を召喚契約に戻すぞ。
私はこのままここで、お前から魔力を搾取することもできる。
だが契約を結んでいた方が有事の際などを考えると都合がいい。
だから、お前と召喚契約を結ぶ機が熟すのを待っていた。
……契約を結ぶ気はあるか?」
今回はここまでにします~
ではまた~
1話目はそれぞれこちら↓
BL版↓
ブロマンス版↓
確認不要/作者用メモ
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