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書籍「心の傷は遺伝する」解説-05 他者の恨みのトラウマ

このnoteはアメリカで心理療法の臨床をしているマーク・ウォリンさんという方が書いた「心の傷は遺伝する」という書籍について、阿含宗会員信徒ならではの視点で解説をする連載の第5回目となります。

他者への恨み、病苦、失敗した人生への後悔をトラウマ、心の傷として抱えて死ぬと、その想いは阿含宗用語で言うと「怨念」、マーク・ウォリンさんの言葉で言うと「苦悩の衝撃波」となり、世代を超えて継承されます。このトラウマを継承する現象を阿含宗用語で言うと「霊障」、マーク・ウォリンさんの言葉で言うと「トラウマの世代間連鎖」と呼びます。
「霊障」「トラウマの世代間連鎖」を受けると「運命の反復現象」、マーク・ウォリンさんは「同化」と命名している現象が発生します。これは恋愛・友情・職業・病気・死に方にといった人生のほぼ全ての出来事について、「霊障」を発している人と同じような人生を歩む現象です。
ここまでを第3回までに説明しました。

第4回では、この「霊障」「トラウマの世代間連鎖」は親族が大半であるとう説明をしました。基本はその通りなのですが、もちろん例外があります。
この第5回では、その例外もかなりやっかりであるということを、マーク・ウォリンの書籍の引用と阿含宗の教義の両面から解説します。

親族以外のトラウマを与える存在

基本は先祖

この見解は本当に重要ですので、第2回で引用したマーク・ウォリンさんの文章を再び引用します。

私が自らの経験や、研修及び臨床から学んだ事は、答えは、自分の人生にではなく、両親や祖父母、ときには曽祖父母の時代にあると言うことだ。
新聞を賑わしている最近の科学的研究も、トラウマが世代から世代へ継承されることを語る。このような負の遺産は、「トラウマの世代間連鎖」と呼ばれ、最近見つかった証拠は、それがまさに現実の現象であることを示唆している。痛みは時とともに消えていくわけではない。トラウマに苦しんだ人がこの世を去り、その人生が忘れられた後も、その人の心や体に刻まれたトラウマは生き続ける。

心の傷は遺伝する P.7

マーク・ウォリンさんは豊富な臨床経験から、「トラウマの世代間連鎖」を引き起こすボリュームゾーンは「両親や祖父母、ときには曽祖父母の時代にある」としています。
この見解は阿含宗と同じです。阿含宗では親を1代前として数えて「2代前から3代前」を基本的な霊障の本体のボリュームゾーンとしています。
この親族の「トラウマの世代間連鎖」は第4回を参照ください。

親族以外のトラウマも受ける

ここからが第5回の本題となります。
トラウマの発生源である「怨念」「苦悩の衝撃波」による影響は、「怨念」というのだから、血の繋がりの無い他者から何らかの恨みを買うことが原因となるのだろう、と、一般的に仏教説話的なものを基礎教養として持っている人ならば考えるでしょう。むしろ親族の苦しみや後悔がトラウマとして世代間を超えて伝わるということを納得するほうが難しい。

そして親族以外からのトラウマの継承は、存在します。
まずは、マーク・ウォリンさんの書籍を引用します。これは第3回でも引用した、マーク・ウォリンさん曰く、著名なドイツの精神医療法医バート・ヘリンガーさんという方が発見した「トラウマの世代間連鎖」や「運命の反復現象」といった事柄についての記述です。

ドイツのヘリンガーさんは、多くの人々は、運命の反復現象の苦しみの根本原因が前世代にあることに気づいていないと語っています。
そして・・・

通常は家族とみなさない人々も含まれる。わたしたちの家族の誰かを傷つけた人や殺した人がいれば、その人も家族に含まれる。同様に、わたしたちの家族の誰かが、人を傷つけたり殺したりしたら、その犠牲者もわたしたちの家族に含めなければならない。たとえば、父が車をバックで車庫入れしていた時にはねて死なせた近所の子供も含まれるのだ。

心の傷は遺伝する P.54

マーク・ウォリンさんは、親族以外からも「トラウマの世代間連鎖」を受けて運命の反復現象が起きると認識しています。
ですので、この引用に続いて、こういうわけで事例として紹介したAさんは・・・と、ご自身が臨床した方の事例説明をしています。

トラウマの世代間連鎖」という観点で見れば、被害者と加害者は家族となってしまう。そして家族なのだから「トラウマの世代間連鎖」が発生するのだと考えているようです。
たとえば、父が車をバックで車庫入れしていた時にはねて死なせた近所の子供も家族に含まれるのです。
マーク・ウォリンさんとドイツの精神医療法医バート・ヘリンガーさんのいう、被害者と加害者が家族になるという考え方に、ボクは驚きました。阿含宗の教義教学には霊障を受けるという観点はあっても、「家族になる」という考えはありませんでしたので、なるほど、そういう考え方もあるのか!と思いました。

さて、ことの重要性がわかるでしょうか?
我々日本人が昔から仏教説話や江戸の怪談物として知っている、恨みによるタタリとイメージする現象を、一部の欧米の人たちが臨床という事実の積み上げによって科学的に「トラウマの世代間連鎖」「運命の反復現象」というカタチで存在するのだと言い始めているのです。
日本の医療の現場で、こういうことを言ったら即日で追放されるのではないでしょうか?欧米では仏教説話が無い国の人達だからこそ、先入観を持たずに言えるのかもしれません。

逆恨みでも発生する現象

他者を傷つけたり殺したりすると被害者と加害者が家族扱いになるというのは、具体的には直接手を下して殺害する、交通事故などで死なせてしまうといったことから、直接殺害しなくても相手を借金などで追い詰めて自殺に追い込むといったことも含みます。
しかしながら、恐ろしいことに、阿含宗では言いがかりや逆恨みによっても霊障、「トラウマの世代間連鎖」「運命の反復現象」という現象が発生することを認識しています。

まだ物心付かない幼女が、目を話すとなぜか便器に入ってしまうという奇行を繰り返すため困った両親が色々な宗教を頼って効果なく、阿含宗にたどり着いて発覚した事例です。
阿含宗開祖が霊視をすると、この幼女は祖父母の代に何かがあって殺された中国人女性の霊障、「トラウマの世代間連鎖」を受けていると判明。この家族が親類縁者に聞き回って調べてみると、中国戦線で該当する事件があることをやっと聞き出せた、という次第です。
親族の方が中国戦線のどこかで、スパイ容疑か何かで中国人女性を捕まえたのだが、その場所が、肥溜めの中。この女性は日本軍から逃れるために必死の思いで肥溜めの中に隠れたのだと思う。この親族の方が発見して、女性を連行し、ちゃんと洗ってから担当者に引き渡したという。
後日、その女性は処刑となって殺されたのだが、実際に処刑したのは自分ではなく別人だという。
自分は女性を発見して連行しただけであって、この女性を殺したわけではない。でも、肥溜めで発見した女性と、目を話すと勝手に便器に入ってしまう親族の幼女の話は、当事者本人であるから、まさかあの時の!と気づくことができる。

殺される側の女性からすれば、あの時、あいつが自分を発見しなければ、自分が処刑さることはなかったのに!!!!
という凄まじい怨念、「苦悩の衝撃波」を発した状態で処刑される。
恨む側は処刑をする人でも、処刑を決定した人でもなく、自分を発見した人間がひたすら憎い。

恨まれる側は、職務を遂行して容疑者(本当に容疑があったかは知らない)を発見して連行しただけ。
殺された御本人には申し訳ないけれど、恨まれる側からすれば逆恨み、言いがかりです。

たとえ逆恨み、言いがかりであったとしても、他者に対してすさまじい恨みを残して死ぬと、中国大陸で処刑された中国人女性が、直接手を下して殺害したわけではない日本人の孫の代に、非常にやっかいな「トラウマの世代間連鎖」「運命の反復現象」を引き起こしてしまう。

これは阿含宗でも有名な事例のひとつです。

あなたは大丈夫?

さて、ここまで読んで頂いた方は、自分の現状を考えてみましょう。
noteというSNSを使用している方々の大半は、日中戦争を含む第二次大戦に出征した人たちの孫、ひ孫世代と思われます。
霊障「苦悩の衝撃波」、「トラウマの世代間連鎖」「運命の反復現象」とは、祖父母や曽祖父母の代の怨念、「苦悩の衝撃波」が、そのボリュームゾーンであると説明しました。
これを読んでいるあなたの、祖父母、曽祖父母の代で中国戦線やフィリピン戦線等々で随分とやらかした人はいませんか?大日本帝国軍の皆さんは、相当な数の現地住民を正義の名のもとに殺戮しています。殺された人たちの怨念、「苦悩の衝撃波」は、どこへ行くのでしょうか?

マーク・ウォリンさんの書籍の言葉を再び引用すると「わたしたちの家族の誰かが、人を傷つけたり殺したりしたら、その犠牲者もわたしたちの家族に含めなければならない」のです。その「家族」の苦しみ、悲しみ、恨みといった激しい怨念は、マーク・ウォリンさんが表現するところの「家族」になってしまった孫やひ孫の世代、つまり読者である「あなた」に直撃している可能性が非常に高い。直接殺害行為に加担していなくても、あいつが自分を発見したから殺されたという逆恨みでも怨念、「苦悩の衝撃波」が来てしまう。

運命の反復現象というのは、悪い運命の反復をするため、強い怨念に基づく「トラウマの世代間連鎖」を継承した人は、最終的に似たような不幸な人生を歩んで死を迎えます。そして今生においても、苦しみに満ちた人生に対する怨念を残して、再び次の世代へと「トラウマの世代間連鎖」を伝えるという行為を繰り返します。何も手を打たなかったならば、この苦しみの連鎖、輪廻は止まらないのです。

あなたは大丈夫ですか?

この現象に心当たりがある方へ

ここで事例に挙げているような強烈な怨念をベースにした霊障「トラウマの世代間連鎖」を受けていると自覚がある人、家族が影響を受けている可能性が高いのではないか?といった心当たりがある人に対する、阿含宗会員信徒からのお願いです。
苦境から救われたい、苦しむ家族を救いたいと願うならば、勇気を振り絞ってお近くの阿含宗道場へ足を運んで相談しに来てください。
過去回でも説明しましたが、阿含宗で言う霊障、マーク・ウォリンさんの言う「トラウマの世代間連鎖」とは、魂そのものに深くグサリと突き刺さったトゲなのであって、気合とか根性とか、これから頑張ります・気をつけますという精神論や、思想や道徳の勉強、最近流行している素人がちょっとやってみた程度の瞑想ごときでは救われないのです。もっと異なるアプローチが必要です。

※最終回ではありません。予定している内容の折り返し地点くらいです!

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