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書籍「心の傷は遺伝する」解説-03 運命の反復現象

このnoteはアメリカで心理療法の臨床をしているマーク・ウォリンさんという方が書いた「心の傷は遺伝する」という書籍について、阿含宗会員信徒ならではの視点で解説をする連載の第3回となります。

他者への恨み、病苦、失敗した人生への後悔が、死の間際を迎える本人の心の傷・トラウマとして発生して死ぬと、その想いは阿含宗用語で言うと「怨念」、マーク・ウォリンさんの言葉で言うと「苦悩の衝撃波」となり、世代を超えて継承される。このトラウマを継承する現象を阿含宗用語で言うと「霊障」、マーク・ウォリンさんの言葉で言うと「トラウマの世代間連鎖」と呼びます。これは第2回にて説明しました。

「霊障」を受けた人生は、ほぼ確実に不幸な人生を歩むことになります。その霊障が発現する様子を阿含宗では「運命の反復現象」と呼んでいます。

マーク・ウォリンさんの「運命の反復現象」

さて、マーク・ウォリンさんの書籍から二箇所、引用します。
1つ目はマーク・ウォリンさんが、他の心理学者がはこう説明しているという内容のものです。

人は家族のトラウマを受け継ぎ「追体験」するという見方は、著名なドイツの精神医療法医バート・ヘリンガーの多くの著書のテーマである。人は親や先祖と「家族意識」を共有する、と彼は説く。たとえば、親やきょうだいや子供の早すぎる死や、育児放棄、犯罪、自殺といったトラウマになる出来事は、人に多大な影響を及ぼし、何世代にもわたって家族に刷り込みを残す可能性があることに、彼は気づいた。これらの刷り込みは、家族の青写真になり、人は無意識のうちに、過去の家族の苦しみを繰り返し経験するのだ。

心の傷は遺伝する P.53
マーク・ウォリンさんによるドイツのバート・ヘリンガーさんの考えの説明

マーク・ウォリンさんを含む一部の欧米の臨床心理学者の人たちには「トラウマの世代間連鎖」によって、人は無意識のうちに、過去の家族の苦しみを繰り返し経験するという認識が確立されつつあるのでしょう。マーク・ウォリンさんだけの珍説、トンデモ科学では無いということです。

2つ目の引用です。

重要なので繰り返すが、わたしたちの振る舞いすべてが、自分に起因するわけではない。それらが父母や先祖に起因することは珍しくない。わたしたちはただ、その人々に共感し、その感情を共有しているだけなのだ。これを「同化」と呼ぶ。

あなたは家系の誰かと同化しているか?
・あなた自身の人生経験だけでは説明のつかない症状や感情や行動が見られるだろうか?
・家族史にトラウマ体験があったか(親や子供やきょうだいの早世、自暴自棄、殺人、犯罪、自殺など)?口にするのもはばかられる悲痛な出来事や、一族の恥となるような出来事が起きたか?
・あなたはその出来事と自分をつなげて、語られることのない人との同様の人生を送ろうとしているのではないか?
・あたなはこの父母や先祖のトラウマを、自分のものであるかのように追体験しているのではないか?

心の傷は遺伝する P.94

同化」という言葉が出てきました。
箇条書き部分に、語られることのない人(つまり「苦悩の衝撃波」を送ってきている人)と同様の人生を送ろうとしているという部分があります。
この、トラウマを生じた先祖と同様の人生を送ろうとしているという現象のことを阿含宗では「運命の反復現象」と呼んでいます。

「同化」という名称はどうかと思うけれども(このオヤジギャグは笑うところです!)、先祖のトラウマが世代間連鎖して、その人物と同様の人生を送ろうとしている、それは、まさに魂が結合して同化しているのだ、と考えれば、マーク・ウォリンさんが「同化」と命名したことも理解できます。

用語は異なるけれども、人は無意識のうちに、過去の家族の苦しみを似たような不幸な人生として繰り返し経験するという見解は、マーク・ウォリンさんも阿含宗の教義も完全一致するところです。

マーク・ウォリンさんのこの書籍では数多くの「同化」「運命の反復現象」の事例が紹介されています。いくつかの事例は別の回で紹介します。それ以外の事例に興味がある方は書籍を実際に手にとって読んでみてください。

阿含宗の説く「運命の反復現象」

「運命の反復現象」とは、特定の先祖の他者への恨み、病苦、失敗した人生への後悔といった怨念・苦悩の衝撃波を霊障・世代間連鎖のトラウマとして引き継いだ結果、そのトラウマを発生させた人と同じような不幸な人生を送ることです。

例えば、自分の不倫が発覚して家族も人生も失ってしまったという場合、この人の祖父母や曽祖父母の代に必ず不倫や浮気をして失敗した先祖がいるはずです。
ちなみに祖父母や曽祖父母の「代」なので、曽祖父や曽祖父母の兄弟姉妹、いとこ等も範囲に含みます。範囲が広いので、どこの誰の人生の失敗による後悔を霊障、世代間連鎖のトラウマとして受け取ったのかは、わからない場合の方が多いです。

マーク・ウォリンさんの限界を超える運命の反復現象

マーク・ウォリンさんは心理学者なので、心の葛藤とか、わきあがる謎の感情といった面の対処しかできません。ここは心理学者の限界です。

阿含宗の場合は、人生全体を見るので、運命の反復現象の範囲が広いです。
例えば、こういう実例があります。

Aさんは多額の借金を残して死亡しました。
Aさんの弟であるBさんは、色々な事情があってAさんの残した借金を相続するしかありませんでした。Bさんの家族の人生にも大きな影響が出ました。

この事件の追求をすべく先祖を調べてみると、過去の事件が判明しました。
AさんとBさんの曽祖父Cさんが事業に失敗して多額の借金を作りました。
AさんとBさんの祖父Dさんは、曽祖父Cさんの借金を返済するため、多くの土地を売り払うこととなり資産家の家柄ではなくなってしまいました。

阿含宗の運命の反復視点で見ると、霊障の図式がはっきりとわかります。
・Aさんは曽祖父Cさんの霊障を受けて、多額の借金を作る運命を反復した
・Bさんは祖父Dさんの霊障を受けて、他人の多額の借金の肩代わりをする運命の反復をした

Aさんは曽祖父Cさんから「トラウマの世代間連鎖」を受けたことにより、曽祖父Cさんと同じような性格・心理状態を引き継いで、同じような失敗をして、多額の借金を作って返済できずに死亡したという点で、マーク・ウォリンさんの心理学の範疇に入るといえるでしょう。

でも、Bさんは、とばっちりで他人の借金の相続をしなければいけなかったのであって、トラウマを抱えて生きていたわけではありません。
ですのでマーク・ウォリンさん視点の、精神的なトラウマだけに焦点を絞ってしまうと、Bさんの運命の反復現象が見えてこない危険性があります。
でも阿含宗視点では、Bさんの人生は典型的な運命の反復現象です。
ここの差異は要注意です。

ちなみに、かなり先走ったことを説明すると、阿含宗では運命の反復現象を追体験してから助けてくれと言うのではなくて、霊障によって運命の反復現象が発生する前に霊障を取り除きなさい!という指導をしています。
阿含宗の信仰の実践、修行の実践は人生のリスクマネジメントであり、リスクが発生する前に対処しておくことを求めています。

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