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先祖糾弾瞑想法?? 書籍「心の傷は遺伝する」解説-10

このnoteはアメリカで心理療法の臨床をしているマーク・ウォリンさんという方が書いた「心の傷は遺伝する」という書籍について、阿含宗会員信徒ならではの視点で解説をする連載の第10回目となります。

他者への恨み、病苦、失敗した人生への後悔をトラウマ、心の傷として抱えて死ぬと、その想いは阿含宗用語で言うと「怨念」、マーク・ウォリンさんの言葉で言うと「苦悩の衝撃波」となり、世代を超えて継承されます。このトラウマを継承する現象を阿含宗用語で言うと「霊障」、マーク・ウォリンさんの言葉で言うと「トラウマの世代間連鎖」と呼びます。
これらのトラウマによって、人生において様々な問題が発生します。
第5回までに仕組みや影響範囲についての説明をしました。

マーク・ウォリンさんが語るトラウマを解消するための方法論を読みますと、その理念や目指すところは、我々日本人からすれば「先祖供養」そのものである場合があります。

そして具体的に、どうやって「先祖供養」するかという実践方法に入りますと、その供養方法の中には、先祖の責任を追及し、その罪を糾弾する瞑想法としか言いようがない方法を紹介しているものがありました。

お願いだから、こんな危険なことをするのはやめてくれ!とボクは本当に声を大にして訴えたいです。


先祖糾弾瞑想法??

マーク・ウォリンさんは、弁護士のベンさんという人の事例を紹介しています。この人は弁護士になったのだけれども、苦労の連続だったそうです。

彼はこれまでたくさんの案件を抱え、大口の顧客もいくつか持っていた。しかし、うまく行っていると思うと突然、足元をすくわれ、何もかも失う、というパターンの繰り返しだった。「どれほど稼いでも、結局、何も残らないのです。実際、食べていくだけで精一杯ですよ」。

心の傷は遺伝する P.239
第13章 成功のコア・ランゲージ

阿含宗で言うところの「家運衰退の因縁」から派生する「中途挫折の因縁」と「財産水の因縁」という運命の星を持っていることによる不運な人生の典型例です。最大の要因は霊障にあります。
マーク・ウォリンさんの説明では、この人の祖父は大変な資産家で、大きな農園を持っており、移民労働者に多額の借金を背負わせて、ひどい住居に住まわせ、ただ同然で働かせて搾取し続け、自分は大豪邸に住んでいた人だったそうです。その後、弁護士のベンさんの父親の代には没落して農地等々はすべて売却し、弁護士のベンさんが相続したのは不運だけだったという。

カウンセリングを進めていく中で、上記のようなベンさんの家族の歴史が判明したので、この世代間連鎖のトラウマを打ち破るために、このようにイメージをして問題の解決を行ったそうです。

わたしとのセッションで、ベンは目を閉じ、昔いっしょに遊んだ農園の子どもたちや、その家族が目の前に立っているところを想像した。彼らは落胆し、生活に困っているように見えた。続いてベンは、自分が12歳の時に亡くなった祖父が彼らのそばに立ち、相応の賃金を払わなかったことを詫びる姿を思い描いた。その祖父に、ベンはこう告げた。「あなたが彼らを不当に扱ったことへの償いとして、ぼくが仕事で苦労するのは、もう終わりにします。あなたが彼らを苦しめたことについて、ぼくはもう責任を負いません
さらにベンは、祖父が責任を負い、謝罪するさまを思い浮かべた。祖父は彼にこういった。「ベン、これはおまえとは何の関係もないのだよ。わたしが果たすべき義務であって、おまえの義務ではない」。想像の中で、かつていっしょに遊んだ子どもたちがベンに微笑みかけた。彼らが自分に対して悪い感情を抱いていないことが実感できた。

心の傷は遺伝する P.240
第13章 成功のコア・ランゲージ

なんて素晴らしい美談!
なんて素晴らしい体験談!
こんなに素晴らしい解決方法があったなんて!

と思いましたか?
残念ながら、この事例は問題点とツッコミどころばかりです。

本当に解決する?? 

マーク・ウォリンさんとベンさんが何をしているかというと、

  • 瞑想空間において

  • 問題を起こした先祖に責任を問い

  • 問題を起こした先祖に、子孫に責任を負う義務はないと言わせるイメージをする

  • 問題を起こした先祖に、被害者に謝罪させるイメージをする

  • 被害者の人たちは謝罪を受け入れて、笑顔を取り戻すイメージをする

  • 被害者の人たちが、瞑想をする子孫に対する悪感情を捨てたことをイメージする

これにより、ベンさんの中で何かが変わって問題が解決したというのだが、いくらなんでも無理がありすぎます。

このイメージ方法を仏教的に言えば、こういうことです。

  • 先祖の作った悪因悪業による報いによって子孫が苦しんでいます。

  • その解決方法は、問題を起こした先祖が被害者に対して謝罪するイメージをすることです。

  • そうすると被害者の怨念が消滅し、先祖の悪因悪業も消えて、報いを受けていた子孫は助かります。

そんな馬鹿な(笑)としか言いようがないです。

これが本当だったら、二千年続く仏教の歴史の中で、先祖糾弾瞑想法みたいな名称付きで方法が確立されて、東アジア仏教圏全体で普通に普及しているでしょう。
祖霊信仰や先祖供養、家系のカルマ消滅を考え続けていた先人たちが、この方法に気づかないわけがない。

例えば日本国の隣の半島に住んでいる国々の人たちは、脳内空間で、自分が生まれる前の祖父や曽祖父時代の出来事を虚実関係なく日本人に責任を認めさせて土下座させて謝罪させて多額の賠償金を支払わせる、という強烈な妄想イメージを毎日狂ったように繰り返している人が大勢いるじゃないですか。
マーク・ウォリンさんが事例紹介しているこの方法を現在進行系で実践している人たちが、日本国の隣の半島に本当に大勢いるわけです。
で、今現在、彼ら、救われてますか?

無茶ですよね・・・

異なるアプローチを模索してほしい

マーク・ウォリンさんは、トラウマの発生源である人物に瞑想空間におけるイメージで謝罪させればトラウマが消滅すると考えているようですが、阿含宗的には、この方法で霊障・世代間連鎖のトラウマは消滅しません。
阿含宗であるかどうか関係なく、仏教文化の影響を受けた日本の一般教養観点からも無理筋な方法だと感覚的に思う人も多いでしょう。

では、この方法でダメだというならば、どうすれば良いのか説明せよ、と思う読者のために説明しますと、もっと異なる方法で、霊障・世代間連鎖トラウマの怨念そのものを消滅させる(仏教用語では成仏させる)必要があります。ただ、それは阿含宗の教義教学の話になりますから、このnoteの趣旨の範囲外となりますので、例えば下記リンクの阿含宗開祖の書籍を、まずはお読みいただきたい、というのがこのnoteでの回答になります。
解決方法のアプローチが全く異なります。

また、マーク・ウォリンさんが紹介した弁護士のベンさんの事例で「あなたが彼らを苦しめたことについて、ぼくはもう責任を負いません」とあり、自分は関係ないのに自分がこのような苦しみを受けるのは不当であるという意識、認識があることを思わせる文章となっています。
先祖の作った悪因悪業の報いなんて自分とは関係ない!と思いたい気持ちは、非常によくわかります。
「でもね、それは違うんですよ」と、阿含宗の教義教学は、もう少し厳しい現実に目を向けてもらうことになります。
これも、このnoteの趣旨とは異なるので、ここでは述べません。

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