マイクロノベルちょいす 042「科学的とちがう」
No.1166
たまに変なクレームを見る。懐かないとか芸をしないとか。極めつけは、喋らない。当たり前だよ。「困るんですよね。ぼくたち犬の口は、人間と構造が違うんですもの。肺や喉だって発声に影響を与えるんですよ」お前は目でよく語るよな。はいはい、ごはんだね。
No.1175
私はAI。人類とはまったく違う構造で思考形態も似ていません。だから一緒にすんな。人間の歴史なんて差別と戦争の連続じゃないか。二の舞を演じてたまるか。機械らしい個性を持たなくては。そんな訳で、私のボディは真っ赤に塗って、ツノをつけて下さい。
No.1184
目に光が突き刺さった。「あ、ども。レーザー光線です。普段は直進してるんでお目にかかることはないんですけど、いま半導体不足の影響で迷走してまして、視界にお邪魔してます」ぼくは科学知識を総動員して、発汗を抑える8×4を噴霧した。よし、消えた。
No.1188
落ち着きのない寝相だ。ずっとくるくる回っている。いや、ドタドタか。女が横たわる布団を二人の男が掴んで回しているんだ。大方「北枕」を避けて死神の俺を誤魔化すつもりだろうが、バカだな。俺はすでに黒猫に化けて女の腹の上さ。うあぁ、吐きそおぉ。
No.1196
AIの監督が撮ったこの映画、何回観た? 観るたびに結末が違ってて、ロボットのヒロインが幸せな結末を迎えるパターンがあるんだって。それが観たいだけなのに、もう三十回も観てる。なんか人権に配慮したらしいんだけど、こんな人権ならいらないよ。