ワイナリーの四方山話|ワインと食的嗜好
ドイツに初めて来たとき、驚いたことがありました。菜食主義を掲げる人の多さです。
日本にいた時からベジタリアンの人は多少は身の回りにいましたが、それほど多くはありませんでした。彼らがいることは分かっていても、身近な存在と思えるほどではなかったのです。一方で、ドイツに来てからは様相がかなり変わってきています。驚くほど身近なところに菜食主義の人が存在していて、かつ、その人数は増え続けています。
ドイツと言えばソーセージ、というあまりにも単純なイメージを持っていたためでもあるのでしょうが、欧州の中でもなんとなく肉食の傾向が強い印象のある国でした。ところが実際に現地に来てみると、肉食を拒否する人が少なからずいます。ドイツの連邦統計局によれば2020年には肉の消費量が過去最低を記録する一方で、肉代替製品の生産量が40%近くも増えているとされています。
菜食主義への転向は社会的背景や個人のライフスタイルの変化に伴うもので、必ずしも大きな決断を伴うものではありません。チャーハンに入っているグリーンピースや酢豚に入っているパイナップルなどと同じようなもので、個人的嗜好に合わないから食べるのを止める、という程度の事柄です。グリーンピースやパイナップルといった個別品目と違って、肉という1つの食品カテゴリ全体を対象としているために周囲からの反応が大きくなりがちですが、最近のドイツではそうした反応さえなく、ああそうなんだ、と受け入れられるようになっています。それほどまでに菜食主義への転向は珍しいものではなくなったといえます。
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