コンサルタントの加点回帰 Vol.2:メンバーの育成と夏の公園
PR・コミュニケーションコンサルタントの加点回帰 第2回として、2009年9月初旬に書いたブログ記事をベースにチームマネジメントやメンバーの育成に関する私の考え方をご紹介します。
【タイトル】
メンバーの育成と夏の公園(2009年9月5日発信)
【本文】
先日、知人から「若手メンバー育成のコツは?」という質問を受けました。
マネジメントを担う立場としてメンバーの育成は最重要課題であり、私も日々、頭を悩ませながら取り組んでいるのですが、改めて“コツは?”と聞かれると即答するのは難しいです。
答えを模索しつつ夏休み最後の週末に駒沢公園を散歩していると、いくつかのヒントに出会いました。いずれも親子連れで、最初は「プールで泳ぎ方を教えている」、続いて「自転車の練習」、最後は「木登りする子どもを見つめる」という、いずれもよくある光景です。
まず「プール」ですが、いきなり背の届かないところに連れていかれて「泳いでみろ」と投げ出された経験がある人は多いと思います。突然の試練にもがき苦しみ、とても学校で教わった綺麗なフォームで泳ぐなんて無理です。それでもなんとか親のいる場所まで必死で泳ぎ切ります。ヒトを本気にさせ、大事なのはマニュアルではなく、体を動かすことだと教える際に、この“切羽詰まった環境をつくる”は非常に有効だと思います。
続いて「自転車」です。「ちゃんと押さえていてね」と子どもに念押しされ、「大丈夫、しっかり持っているよ」と言いつつ、手を放す。子どもは安心してペダルをこぎ、自慢げにチラッと後ろを見ると親は遠くで見ている。これもよくあるシーンですが、若手メンバーに“安心感を与えつつ、少しずつ距離を広げて(権限を与えて)いく”というプロセスに似ています。この事例には“嘘も方便”という実用的な教訓も含まれています。
最後の「木登り」は、目的地までの道筋をイメージさせ、状況に応じて軌道修正しながらゴールまで辿り着くことの大切さを学ばせる絶好の機会だと考えます。市場環境や産業構造の変化に臨機応変に対応する力が問われる今、常に“次の手”を考えることは企画力・発想力が問われる我々のようなコンサルティング業のみならず、全てのビジネスパーソンにとって必須条件だといえます。
そして、これら全てのシーンにはメンバー育成の3つの必須条件が含まれています。
①実際に本人にやらせてみる:人は目や耳のみならず、肌から学ぶことも数多くあります。そして失敗を繰り返しながら得た体験記憶(まさにコツを掴むこと)こそが本当に使えるスキルになると思います。
②“達成感”という自分へのご褒美を実感させる:どんなにやりがいのある仕事でも苦労だけでは長続きしません。神秘的な水の中、風を切る爽快感、高い所から見える異次元の世界、それらを体で感じることが次の挑戦の原動力になります。
③致命傷は負わせない:挑戦には失敗がつきものですが、取り返しのつかない失敗はさせないように十分な配慮が必要です。とくに我々の仕事はクライアント企業あってのものですし、社会一般の方々に影響を及ぼすことは忘れてはいけません。私自身は“本番を人材育成の場にしない”ことを常に肝に銘じています。
もちろんこれらが全てではありませんが、日常生活にはヒントがたくさん隠されていることを実感した瞬間でした。
【2020年8月16日の書き加え】
この10年間で5つ以上の組織を経験したことに加え、「シチュエーショナル・リーダーシップ(SL理論)」「ダイバーシティ&インクルージョン」などの研修を受ける機会に恵まれたことにより、自身のマネジメント手法の幅は広がっていると認識しています。一方で、自分の得手・不得手や頭では分かっていてもうまく実践できないことも年々明確になってきています。
また、最近は駒沢公園ではなく新宿御苑が散歩の定番コースになっていますので、私が特に心がけている事項を植物の成長に例えて記します。
①花開くタイミングは人それぞれ:季節ごとにみどころが違うことはもちろん、なかには数十年に一度しか咲かない植物があることを知りました。同様にメンバーの数だけ成長曲線があると考えています。
②注目すべきは開花ではなく芽吹き:開花を祝い、満開を堪能するのは来園者(お客様)であり、成長や変化の兆しの察知したり、停滞期をケアするのがマネジメントの役割です。
③肥料を与え過ぎず、雑草を抜き過ぎず:個体としての抵抗力や生命力を高めるためには快適すぎる環境をつくらないことも大切ですので、メンバーと適度な距離感を保つことも意識しています。
以上、思いつくままに書きました。私にとって休日の散歩は今も昔も心身の凝りを解きほぐしてくれる身近かつ最高のリフレッシュ方法です。