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白球

写真フォルダを整理していたところ、雪だるまに行き遭った。

なんてことはないただの雪だるま。
お世辞にも綺麗とは言い難い。
けれど、そんなところに風情というか奥ゆかしさというかそんなものを感じる。


この写真を撮ったのは某都内某江戸川区の某運動場。
関東でも割としっかりめに雪が降ったあの日の2日後の朝だったと思う。
「くそさみいな」って吐き捨てて道を歩いていると
運動場を通りかかった。

いつもなら誰かしらが何かしらをしているのだが、
この日は流石に誰も何もしていなかった。
パワフルな野球少年たちの声も、熱を持って見守る大人の視線も何もなかった。

何もない以上、そこに僕の存在意義はないので、足早に立ち去ろうとしたところ、先の雪だるま君と行き遭ったわけである。

ここは都内。
雪など降っても1日。
残雪に目をやることの方が珍しい。
積もるより先に消えるからだ。

雪が降ってから2日目を迎えたその日は当然、
目に見えるほとんどの範囲で地面が顔出ししていた。こんにちは。

雪が好きな僕としては、少しもの寂しくはある。
そんな折に雪だるま君と目が合ったのだから
嬉しくてシャッターを押してしまったわけなのだ。

作り手は子どもだろうか。
作り慣れていないのだろう、泥まじりで不恰好なそれは、それでも確かにそこに立っていた。
降雪2日後の東京で。

翌日見に行くと、そこに雪だるま君の姿はなく、代わりに子どもたちの声が地面を動かしていた。

桜じゃないが、僕は泥まじりの彼に
季節の世代交代を感じた。

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