風呂に入って後悔する人はいない
「風呂に入るまでは面倒くさくても風呂に入って後悔する人はいない」そんな言葉を聞いたことがある。
確かに風呂に入るまでに面倒になる瞬間は多々あっても風呂から出た時に「どうして風呂なんて入ってしまったんだ」と感じることはない。
そして唐突にこんなことを思いつく。あぁ、温泉に行きたいと。
風呂が好きだ。サウナも好きだ。それを実感したのは一昨年のコミックマーケット、夏コミが終わってすぐに知り合いと行った大江戸温泉物語だった。
別に大江戸温泉物語だからよかったわけではない。ただ、朝から炎天下の中列に並び続けてさらに会場内も歩き続け、さらに撤収までした体はもう疲労困憊、軽い熱中症だったかもしれない。
そんな状態で行った温泉はじんわりと体を温め、体の中を巡る血液がどろどろとしたものからさらりとしたものへと変わっていくのがわかった。
そして誘われるがままに入ったサウナで人生初の「ととのう」体験をすることとなる。
じわじわと熱のこもっているサウナの中でただ座り話す。そして何分か経った頃、掛け湯をして全身が凍るような冷たさの水風呂へと足先からゆっくりと入っていく。
断末魔のような呻き声は次第に気持ちよさを表すため息へと変わる。
全身の血液は巡りに巡り、温度はすっと下がっていく。骨の髄まで冷え切った体は水風呂に居残りたいと懇願するのを振り切ってまたサウナへ。
全身の毛穴という毛穴から汗に含まれる疲れが流れ落ちていくのを体は示さずとも心が理解する。
そして待ちに待った水風呂。
さらに自分を待ち構えていたのが、屋外で涼むという「ととのう」ための最後の関門。
既に気持ちよくなっているのにこれ以上気持ちよくなったらどうなってしまうのか自分でも不安になるほどの期待感とともにドアを開け椅子に腰掛ける。
肌に触れる風に愛おしさを覚え、椅子に座る頃には身も心も凪のような安定を魅せてくれていた。
どうやらそれは全身の自律神経が「整う」ことによる気持ちよさだったらしい。風呂から出て数時間、いや数日は体が軽かった気がしている。
その体験をして以来サウナが好きになった。
あと、これは後から思い出したことだけどあの時俳優の中村倫也と同じ風呂にいたらしい。どうして脱衣所まで気づかなかったんだ自分。
最後の高校の体育祭が終わってすぐ、あったのかすら知らないクラスの打ち上げには目もくれず、気の合う友達と銭湯を探しさまようこと数十分、サウナのある銭湯へと辿り着いた。
汗だくの体にまとわりついた疲れを適当に洗い流し、そして風呂。じんわりと体が温まることを確認してからは本命のサウナへ。
あの日は消費税が10%になった日で、既に中にいたおじさんたちがあぁでもないこうでもないと話していたことを覚えている。
そんなおじさんを尻目に自分たちは勝手気ままにサウナを楽しむ。
全身の汗がしたたり落ち体が乾きを知らせるまで絞り切ると足早にシャワーを浴びて本命の水風呂へ。
あの日の全ては水風呂に入る瞬間までの前座だった
今でもあの時の体の悦びを思い出せる。きっと締められる魚もあんな感じで締められているんだろう。全身の感覚が消え、水と一体化する。
水が自分であり、自分が水だった。
それを何度か繰り返し、鳥貴族で焼き鳥を食べて帰ったことまでを覚えている。あの時の焼き鳥、めちゃくちゃ美味しかった。
やっぱり食事ってシチュエーションによって美味しさが左右される気がする。あの日の焼き鳥は最高に美味しかった。
きっと数年後、ビールを飲みながらまた来ようと約束をして今年は20歳の年。そろそろ連絡をしないといけない。彼は元気にしているのだろうか。
サウナでととのう体験だけで1日分くらいの文量を書いているけど、ここまで来たら最後まで書こう。
そう、闇風呂だ。闇風呂。
風呂に入る時に周りの電気を全て消して入るだけ。
簡単。
これの何がすごいかというと、疑似的に自分自身の体が「ととのう」瞬間が来ること。
というのも、闇風呂の中では視覚を必要としないから目がとにかく休まる。
目の疲れを取るにはどうすればいいか?
そう、自律神経を整えてあげればいい。
真っ暗な中だと脳が休む時間だと錯覚して休んでくれるうえに、お湯で体の深部体温が上がることでリラックス効果が倍増されるそうな。
もちろん暗いので滑るとか寝てしまうとかは気をつけないといけないけど、この闇風呂、めちゃくちゃおすすめです。
エヴァの旧劇場版を観たことがあるひとならわかってもらえるかもしれないけど、これも次第に自分が水と一体化する感覚に包まれいく。
さながらLCLと化す感覚。水面に映る自分の足はゆらぎ、水の中で本当に溶けたのかと不安になって動かして確認をしてしまうほど。
目元にお湯につけてあったかくしたタオルをのせると目の奥の筋肉のコリがぐーーっとほぐれていく感覚を知れますよ。
風呂から出る時の全能感、一度味わえばもう元の生活には戻れないでしょう。
もしこのnoteを帰り道で読んでいるなら、一息ついている時に読んでいるなら、風呂に入る前に読んでいるなら、是非ともこの闇風呂を試してみてほしい。
そしてコメントをください。お前のせいで闇風呂を知らない生活に戻れなくなってしまったじゃないか。と。
闇風呂、いいですよ。
それはそうと温泉に行きたい。
銭湯にすら行きづらくなってしまったこのご時世、なんとかならないものでしょうか。