死の島
噴水と橄欖樹のある広場
くすんだ色の神像が並ぶ市街
水盆から零れる水が
広場の敷石を濡らし
何処へ行くのか誰にも告げず
暗い布を纏った女が歩いて行く
街角で籠が倒れる
転がり出た無花果の実を
ひとつ拾う
翳を抱いて歩く人々
木陰で薄笑いを浮かべる老婆
遠くで子供が泣いている
夕刻には遥かな沖合の
大渦に群がる鳥達が
今朝は街の上空を舞っている
とも綱を解いて
海へと漕ぎ出す小舟に
青い花を懐に隠し持つ女が
乗り込んでゆく
肌を打つ潮風
波に揺れる小舟
魚が跳ねる
徐々に晴れてゆく
朝霧の向こうから出現する
死の島
鳥達の叫び声が
湧き上がる雲を突き刺し
黒い海藻の纏わりつく岩場で
青い花が波に濡れながら
歌う呪術
群雲の炸裂
轟く雷鳴
海上の驟雨を照らす
サンバースト
純白の衣に着替え
死の島の拝殿に身を投げ出して
女は虚無を受胎する
天使に誘われて
昇天して行く死者達の
うすあおい
翳のゆらめき