NagaM

詩・散文・日記・雑記。♂。 ゆっくり書いていきます。(R6/01/19)

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  • Kisikaの日記

    亡きキシカの日記から。

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最近の記事

電 話「Kisikaの日記 38」

    H16/04/18 果てしない光の国から 果てしない夜の国へ   電話を掛けて来たので 星は鈴になって鳴り響き 三日月はまあるい赤子に戻った   もうすぐですよ もうすぐですね   受話器から零れて来る 小鳥達のメロディー   おはよう!   朝の風に乗って あなたがやって来る   幼い掌が差し出す 赤い珠の三つ四つ   おはよう!   わたしは受話器を置いて 草の実を受け取りました   お庭に撒いて 涼しい朝を 祝福しましょう

    • 見送る「Kisikaの日記 37」

         H16/04/17 風が色を失う日に あなたを見送る   空が深さを無くす日に あなたを見送る   森が呟きをやめる日に あなたを見送る   山々が輪郭をほどく日に あなたを見送る   海が陸に沈みゆく日に あなたを見送る   かつてわたしも そんな日々に 見送られて きたのだろうか   あなたの微笑みが 遠い光に溶けてゆく日に   わたしを纏いながら 影があなたを見送る    

      • なまこ壁「Kisikaの日記 36」

                 H16/04/16   久し振りの 日帰り旅行   ここは酒造りが盛んな 内陸深くの盆地の町   私は酒蔵通りを 歩いています   道路の両側に続く 木造白壁の建物   お酒を飲まなくても 歩いているだけで ほろ酔い気分   白壁の下側の壁には 平らな瓦を張り付けて 継ぎ目の斜め格子に沿って 白い漆喰を塗り付けています   その盛り上がった形から なまこ壁と呼ばれているの ああ いつの間にか 周りで海藻が揺れている 白いなまこが 何十匹も何百匹も そこ

        • カラオケ「Kisikaの日記 35」

             H16/04/15 たびたび私の様子を 見に来てくれる 長女のアキちゃんと 姪のケイちゃん   もう 二人とも 還暦を過ぎているの   今日は私と三人で 海鮮料理をいただいて めったに行くことのない カラオケ店で歌いました   熟年おんな二人と 高齢おんなの私   世界の最果ての島の 海辺の岩窟に住む 三人の魔女の歌 むかしロックバンドで 格好を付けていたあの子に 聴かせてあげたいものね   セイレーンの歌に魅了されて 狂ってゆく船乗りのように 耳を塞いで やめてく

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        • Kisikaの日記
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          2本

        記事

          サクラソウ「Kisikaの日記 34」

             H16/04/14 あなたと二人で ゆっくりと 朝食を摂っている   こんな気持のよい 春の朝には 話もはずみます   ふと 庭先に目をやると 白いサクラソウが 咲いていました いつも庭で遊んでいた あの子は今頃 どうしているかしら   視線を戻せば いつもの朝と変わらない ひとりの食卓 遠い 遠い 青空の下 サクラソウの咲く庭に あの子がいて あの人もいて 空では小鳥が 囀っているかしら

          サクラソウ「Kisikaの日記 34」

          箱庭の詩 3「Kisikaの日記 33」

             H16/04/13  3. 箱の中に 砂があって いのちがある わたしが生まれる 遥か昔から ずっと ずっと ずっと未来まで 続いて行く 小さいけれど  あたたかくて まあるくて コロコロと 動いている 水晶よりも 透きとおった いのちがある 冷たい風に 吹かれても 固い石に ぶつかっても 明るい昼も 暗黒の夜も 自分の色で 精いっぱい 輝くことを 忘れない 海と空の青さを 足したより深くて  暴風と岩山を 足したより勁くて 初夏の風に揺れる 若草よりも しなやかな

          箱庭の詩 3「Kisikaの日記 33」

          箱庭の詩 2「Kisikaの日記 32」

             H16/04/12  2. 箱の中に 砂があって こころがある わたしの こころや あなたの こころや みんなの こころに じっと耳を 傾けながら カタコトで お喋りしてくれる 紙粘土で作った 赤ん坊の こころがある 時にはみんなを 包み込むくらい でっかくて 時には七色の 金平糖みたいに 小さくて キラリと光る ふしぎな ふしぎな こころがある あなたの つぶやきは ひと粒の 星の砂みたいに 小さいけれど 巻き貝の 螺旋の中に 果てしない 時間を収めて 透明な緑や

          箱庭の詩 2「Kisikaの日記 32」

          箱庭の詩 1「Kisikaの日記 31」

             H16/04/11  1. 箱の中に 砂があって 世界がある 空があり 山があって 湖がある 森があり 川があって 妖精達や 恐竜がいて 樹々の間を 鳥達が飛び 草の生えた 道がある 建物があり ともだちや みんなが 暮らしている 町がある わたしと お父さんと お母さんが 住んでいる お家がある 世界の岸辺から 真っ青な海が 別の宇宙から ワープして来た 星雲の両脚まで 広がっていて 気持よさそうに 魚達が泳いでいる わたしは今夜 星の砂の浜辺まで 出掛けて行って

          箱庭の詩 1「Kisikaの日記 31」

          春のモーニング

          今朝のモーニングは 頭痛が痛くて 情動が動いたので 重言を重ねようと 尽力を尽くしていたら 馬から落馬した そんな気分だ    「ご機嫌いかが?」   君は微笑みながら 僕の前に座っている   カフェの窓から 空を見上げると 豆腐を潰して 塗り付けたような 曇り空に 巨大なムカデが へばり付いている   目を瞑って ゲンショー学的な エポケーを施したら ムカデとは 僕の頭痛だった    「今日はちょっとムカデが、   いや、頭痛がしてて」  「え? ムカ‥‥?   あなた何言

          春のモーニング

          髪を洗う「Kisikaの日記 30」

             H16/04/10 夜中に 髪を洗う 女が 髪を洗う 夜中に 女が 髪を洗う 女が 夜中に 髪を洗う   だから 何? そこに 何か あるの?   何も 無いの 何も 無いの 本当に 何も 無いの お医者が 監修した 正しい シャンプーの やり方の CM記事に 朝シャンNGと 書いて あったから 朝シャンは 控えて 普通に 夜中に 髪を 洗って いるの です   本当に 無いのです 本当に 何も 無いのです 本当に 何も無い からっぽな 女が 本当に からっぽな 一日

          髪を洗う「Kisikaの日記 30」

          耳鳴り「Kisikaの日記」29

             H16/04/09 気持のよい時候になったのに 朝起きると耳鳴りがする 何が鳴っているのでしょうか 私は耳の穴に入って行く   耳の穴って魅惑的ですね 入り口の形状がたまらない 耳介 耳珠 耳垂  舟状窩 三角窩 珠間切痕 耳甲介艇というのは どちらの星団の宇宙艇? ああ 癖になりそう   名残り惜しいけど耳孔に入り 外耳道の洞窟を歩いて行く 鼓膜のトビラを恐る恐る開いて ほの暗い中耳の空間を探索 ツチ キヌタ アブミの耳小骨  何て可愛らしい「コツ」なのかしら  

          耳鳴り「Kisikaの日記」29

          桜雨「Kisikaの日記」28

             H16/04/08 昨日までは 黄砂に染まっていた空から 今日は雨が降って来ます 白く煙る水のカーテン 向こう側にはぼんやりと 山肌が透けて見えます 満開の桜の木を包む 水の立体がゆらゆら揺れて うす暗い納戸の奥の 私の横顔が揺れている いつか雨が上がり 水の立体が崩れ落ちて 桜の木を囲む広い湖になれば 風に散ってゆく白い花びらが 湖面を覆うことでしょう あなたは花びらを踏みながら 湖面の道をひとり歩いて 私のもとへ 帰って来てくれるでしょうか それとも花は散

          桜雨「Kisikaの日記」28

          春の夜明け「Kisikaの日記」27

                 H16/04/07 真夜中の 川堤の道を 紅い布が のたくりながら 這うように 這うように 走る   桜の木の横を 通り過ぎて 逃走する 私のからだに 絡み付いて 拘束して 捻じる   私は 必死になって  紅い布を 振りほどき あなたに 縋り付くけれど   ああ そんなことをしては いけないよ わたしは 石の海溝に住む 女の元へ 会いに行くのだから   あなたは そう言って 紅い布で 桜の木に  私を縛り付けて 草叢に うずくまり 夜明け前に 鬼が来るのを

          春の夜明け「Kisikaの日記」27

          死の島

          噴水と橄欖樹のある広場 くすんだ色の神像が並ぶ市街 水盆から零れる水が 広場の敷石を濡らし 何処へ行くのか誰にも告げず 暗い布を纏った女が歩いて行く 街角で籠が倒れる 転がり出た無花果の実を ひとつ拾う 翳を抱いて歩く人々 木陰で薄笑いを浮かべる老婆 遠くで子供が泣いている 夕刻には遥かな沖合の 大渦に群がる鳥達が 今朝は街の上空を舞っている とも綱を解いて 海へと漕ぎ出す小舟に 青い花を懐に隠し持つ女が 乗り込んでゆく 肌を打つ潮風 波に揺れる小舟 魚が跳ねる

          死の島

          黄砂の歌「Kisikaの日記」26

             H16/04/06 舞い上がる黄砂の中を 私は歩いています 見渡すばかりの砂漠の上を 頭にはターバン 鼻や口を布で塞いで オアシスを求めて ひとり歩いています 黄砂の向こうに 現れては消えてゆく セピア色の人影が 黄砂の歌を 口ずさんでいます そんな夢を見て 今朝は目覚めました お庭に出て 今日は洗濯日和かどうか 確かめましょう 青空は出ているけれど 遥か西の空を眺めてみれば うっすらオレンジ色の 黄砂の空 洗濯はまたにして 夢で聴いた黄砂の歌でも 歌いましょうか

          黄砂の歌「Kisikaの日記」26

          天国への階段「Kisikaの日記」25

             H16/04/05 今朝はいつにも増して 頭がボーッとしています 何だか不安になってきました お薬を飲めばスッキリするかしら でも このままの方が 天国に近いのかも知れませんね あら 電話が鳴っています 受話器を取ると しばらくの沈黙の後 「天国への階段を探しなさい」 ひと言だけで プツと電話は切れました あの子が二十歳を迎えた頃 繰り返し聴いていた曲 「天国への階段は  ささやく風の上に横たわっているよ」 ふうん そうですか でも 何を寝とぼけたようなことを 歌って

          天国への階段「Kisikaの日記」25