![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/72890298/rectangle_large_type_2_e02c1e213653726ec9284da4af3c2f7c.png?width=1200)
【読書】『鹿の王 水底の橋』を読んだ
この間、『鹿の王 ユナと約束の旅』を観ました
『鹿の王』原作を何度も読んでいるせいか、とてももやもやする場面と映画だからこその良さを交互に浴びて、なんだか不思議な気持ちになりました
そんな気持ちの中、ずっと読みたかった『鹿の王 水底の橋』を購入し読みました
先日の病院の中で読み始め、そのままカフェに入り帰りの電車の中そしてご飯を食べる前・・・と一日で読みきってしまいました
最初に
まず一つ言うと、映画を見ただけでこの作品を読むのは無理です
映画を見て興味を持ったなら、絶対原作を読んでください
『水底の橋』には、映画に出てこない人物からオタワル聖領という映画には出てこなかったけどかなり重要な地域、そして映画には入りきらなかった東乎瑠帝国の動向がたくさん絡んできます
さすがに『水底の橋』の感想を読みに来た人に映画だけを見た人が来る、ということはなかなかレアだと思いますが、念のため書いておきます
ネタバレは言うほどないとは思いますが、もうすでに読了している人間が書いているので、注意してください
それから、この記事に書いてあることは私個人の考えなので、100%正しい!とは言えません
そのことを了承して続きを読んでください
あらすじ
この話には、『鹿の王』で主人公だった「ヴァン」と「ユナ」は出てきません
その代わり、もう一人の主人公であった「ホッサル」と「ミラル」そして「マコウカン」がメインのお話です
あらすじは簡単に話すと、清心教医術と皇帝のそれぞれトップ争いを軸に進みます
『鹿の王』のように、大きな病がきてそれにどうこうするお話ではないです
ただ、本編で語られる「清心教医術」とはなにか、「オタワル医術」とはなにか、それが語られています
二つの医術について気になった人にはおすすめの作品です
個人的ポイント
個人的な考えですが、このお話の深いところは
・「清心教医術」と「オタワル医術」の違い
・宗教によって、受けられない治療による死は必ず不幸で苦しいものなのか
の二点だと思います
どちらも『鹿の王』で書かれてはいますが、『水底の橋』ではより深堀りされて書かれているといった感じです
前者については、基本はホッサルの目線で進むので、「清心教医術」の良くないところがピックアップされがちです
それゆえのもどかしさや、救える命をなぜ救わないのかなどの気持ちが読者にもかなり伝わります
ただ、「清心教医術」にも良い点はあります
これはネタバレになるので言えませんが、確かに「オタワル医術」による治療を行うホッサルからはなかなか見られない部分です
これは後者にもつながります
後者については、私もすごくもどかしい問題だと感じます
後ほど書きますが、現代日本ではなかなか身近にたくさんある問題ではない気がします
患者さんが治療方法を選べるとはいえ、社会問題になったり宗教的な考えのせいでたくさんの人が亡くなる、ということは普段のニュースではなかなか見ません(私が疎いだけかも)
そういう点から、本当に難しい問題ではあります
しかし、それで亡くなった方が「必ず不幸である」と言えるのか?というのは考えさせられます
感想、考え
先ほども書いた通り、現代日本において「宗教的に受けられない治療法による死」というのはすごく問題になっているといった感覚は無いと思います
それに対して自分は、医療の勉強をしていた時期に「宗教を理由に治療や予防を拒むのはおかしい」「死にそうな人を前にして生きられる選択をしないのは怖い」と考えていました
ただ、ときどき母や母の同業者の方から似たような事案を聞くたびに「本当にあるんだ」という驚きと一緒に胸がヒヤリとします
私の考えはその宗教に入っていないから生まれるものであって、実際に信じている人からしたらもしかしたら治療を行うことで生き延びても一生苦しむかもしれない
この問題は難しいもので、簡単には結論を出したりはできないなぁと感じます
ただ、こんな難しく考えてはいますが、純粋にファンタジー作品として面白いです
上橋作品らしい、リアルな世界とファンタジーな世界がほどよく混ざった素敵な作品でしたね
ファンタジーなのに、ファンタジーじゃないというのは読んでいて本当に惹かれます
その分難しかったりしますが・・・
そして、これは読んだ人にしかわかりませんがホッサルとミラルの関係が本当にもだもだする・・・!!!!
ホッサルの立場、ミラルの立場、それぞれあって、ただ単純な結論だけではいい方向には進まない、というところが難しい
正直、いちばんのファンタジー要素を含むのはここのような気がします
まぁでも『鹿の王』読んでいて一番この後が気になる二人なので、はっきりしないとはいえ続きが出て、二人のことを追えるのは幸せでした
最後に
なんだかんだ書きましたが、難しい問題が内包されているけれども純粋に面白いファンタジー作品、フィクションとして読めます
本編『鹿の王』もかなりおすすめですが、そちらを読んだのなら『水底の橋』も読んでください!