映画レビュー:22年12月の14本
・アメリカン・エピック<エピソード1>元祖ルーツ・ミュージックの誕生
(2017年/アメリカ/バーナード・マクマホン監督)
リニューアルオープンの恵比寿ガーデンシネマへ。そう、この上質空間。1920年代、中央の音楽業界が停滞してきて、レコード会社は全米にスカウトを派遣してさまざまな音楽が「発見」された。孤独な集落で文化は生まれる。音楽も、豊かな歌も。
・アメリカン・エピック<エピソード2>「血と土」過酷な労働から生まれたブラック・ミュージック
(2017年/アメリカ/バーナード・マクマホン監督)
過酷な日々だから、そこに現実逃避の歌が生まれる。音楽は解放の手段。日本でも茶摘歌があるように。綿花畑には奴隷たちのアメイジング・グレイスがこだましていた。
・アメリカン・エピック<エピソード3>多民族音楽国家アメリカ
(2017年/アメリカ/バーナード・マクマホン監督)
儀式で使われる歌は、変わらない。正しく歌われることで、祈りは届く。歌は祈りだ。歌はメッセージを届ける。廃れてしまった歌もいのちを吹き返す。過去にさかのぼれる。
・バルド、偽りの記録と一握りの真実
(2022年/メキシコ/アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督)
俯瞰カメラが、どうやって撮影したんだかわからないけれど物凄く印象的だしすさまじく美しい。成功を口にしたら、舌の上で転がして吐き出せ。でないと毒になるからな。
・アバター
(2009年/アメリカ/ジェームズ・キャメロン監督)
アバター2を観る前にDVDで復習。アメリカ人の中に、ネイティヴを追いやった贖罪意識みたいのがあるのかなと思う。「エネルギーは借り物で、いつか返さねばならない」「エイワ(spirit的なもの)は誰の味方もしない。調和を保つだけなの」などなど、アニミズムな世界観が随所に。
・オルメイヤーの阿房宮
(2011年/ベルギー・フランス/シャンタル・アケルマン監督)
ホラーじゃないのにずっと「キンキンキンキン」みたいな、緊張感を持続させるような金切音がうっすらとBGMで流れていて、そのサブリミナル効果すごい。
・ダムネーション/天罰
(1988年/ハンガリー/タル・ベーラ監督)
冗長で哲学的な語りを登場人物に延々とさせる、その演技ばったあざとさに辟易する。けれど触れ込みにあるようにラストシーンの長回しワンカットは想像もつかず、すさまじく美しい。
・それでも獅子は旅を続ける~山本源太夫社中 伊勢大神楽日誌~
(2022年/日本/神野知恵&山中由里子監督)
ドキュメンタリー映画を撮る上で、ナレーションの活用法、編集法、台本作り、、などなどすべてがもう、めちゃめちゃ勉強になる。
・ミステリーズ
(2022年/ダニエル・グレコ&マウロ・マウゲリ監督監督)
ドキュメンタリーで観客はどんな映像を観せられることでどんな作用が生じるのか、コンテクストはどれほど必要なのか?などなど、新たな視座をバンバンいただく。
・チュプック―イカット文様に宿る魔除けの力
(2017年/日本/深津裕子監督)
祭り、儀礼や祭礼といった人々がアイデンティティーを確認する場で、「文様」が立ち上がってくる。文様は作家性というより匿名性が勝り、つかみにくいのに、アジアはアジアっぽい文様、アフリカはアフリカっぽい、など、地域性が表れる。小さな中に深遠なイメージがこめられている。
・吟遊詩人 -声の饗宴-
(2022年/日本/川瀬慈監督)
言葉に、節をつけて、歌にする。ことで、祈りに昇華され、遠くまで届いたりする。
・呪術師の治療 ータンザニア
(2022年/日本/松永由佳監督)
水は貴重。決定的な視点が欠けていて(それがどこなのかは釈然としない)寝た
・交霊とイスラーム:バフシの伝えるユーラシアの遺習
(2022年/日本/和崎聖日&アドハム・アシーロフ監督)
上に同じ。
・THE FIRST SLAM DUNK
(2022年/日本/井上雄彦監督)
リョーちんを主人公にして初見の人にも物語が判るように見せるなんて。流川とハルコの存在感をあそこまで薄めるなんて。こんなにいい塩梅に行間埋めてくれるなんて。ジャンプ世代も満場一致だろ。井上雄彦本人によるリメイクすばらしかった。原作あらためて読みたいわ。
<了>