【料理エッセイ】東京23区役所のカレーぜんぶ食べるぞ!
先日、近所の区役所が綺麗になったので行ってみたら、カフェみたいな食堂があってビックリした。普段は必要な手続きをささっとやって、ささっと帰るだけなので、ご飯を食べる場所があるなんて知らなかった。
考えてみれば、わたしたちは住民税を払っているわけで、そのお金を司っている役所に対してもっとコミットしていかなくてはいけないのかもしれない。理想として併設されている議会を見るべきなのだろうけど、それはちょっとハードルが高い。だったら、まずは食堂でご飯を食べるということから距離を近づけていこうかなぁ。と、そんなことを思った。
そうなると23区の他の区役所はどんな感じなのか気になってきた。で、完全な思いつきで23区役所のカレーをぜんぶ食べることに決めた。カレーならどこにでもあるはずという単純な発想だった。
役所の食堂は平日しか開いていないので、結果、1ヶ月かかった。最初は何軒か梯子すればいいやと甘い戦略を立てたものの、カレーってお腹に溜まるんだよね。実際は2件が限界だった。
あと、東京は狭い気がしていたけど、いざ電車で動いてみると意外に広い! 特に駅から離れている場所にある区もあって、めちゃくちゃ歩いたー。
とはいえ、なんとか23区役所を回ることができたので、その記録をまとめていく。
結論、食堂があったのは23区中18区だった。なかった区の内訳は江戸川区・世田谷区・江東区・中央区・墨田区。かつてはどこも食堂があったけれど、庁舎の建て替えやコロナ禍を理由に業者が撤退していた。
なんでも、役所内の食堂は入札によって運営会社が決まるようで、基本は民間がやっているから必ずも存在し続けるわけではないのだ。してみれば、食堂のカレーを通して、各区の状況が見えてくるかもしれない。少なくとも実際に食べ歩いた身としてはイメージに反した感触を諸々掴めた印象はある。
そんなわけで、訪問順に23区のカレーを並べていこう。
杉並区役所 FikaFika
杉並区役所もかつては大きな食堂があったらしいけど、いまは撤退してしまっている。ただ、1階に就労支援のカフェエリアがあり、そこでカレーを提供しているので頂いてきた。
ルーは家庭的な味わいで、具がゴロゴロとたくさん入っているのが嬉しい。地域密着型で店内に一般のお客さんが多い一方、職員向けにはお弁当を販売していて、お昼時は賑わっていた。
新宿区役所 職員食堂けやき
歌舞伎町のど真ん中に位置する新宿区役所。改めて、すごい場所にあると思わされた。その地下に昭和の匂いをとどめて存在している食堂けやきだけど、新宿ゴジラカレーという特色のあるメニューが!
これがめちゃくちゃ辛い! 5倍激辛で5G辣ということみたい。トルティーヤ・チップスで背中のとげとげを表現し、メンチカツは卵をイメージしているみたい。こういう工夫があるのは新宿らしい。
練馬区役所 職員レストランRa dish
練馬区役所に入ると広い吹き抜けになっていて、立体的な建築で余裕が感じられた。その地下にあるのが職員レストランRa dishで、レストランと銘打っているところに気概が見える。
名物はメガカレーで通常の3倍入って800円。ただ、今回は食べ切る自信がなくて普通のやつにした。ザ・食堂といった味わいで具はひき肉少々。とはいえ、物価高の昨今、この値段で食べられるのはありがたい。
渋谷区役所 渋谷ハチ公そば
大きくて綺麗な渋谷区役所だけど、食堂らしい食堂はなく、一階にハチ公そばというお蕎麦屋さんしかないのはちょっと意外。まわりに飲食店も多いし、新規入札業者がなかったのかなぁ? なんて邪推してしまう。
でも、ハチ公そばは評判みたいで、わたしはアレルギーだから食べられないけど、たくさんの人が食べに来ていた。カレーも和風出汁が効いていて、あっさりとした食べ心地なんだけど、よく煮込まれた牛肉の塊が3つも入りかなり嬉しい。
港区役所 レストラン・ポート
大門駅からすぐのところにある港区役所は好立地にもほどがあり、11階の食堂からは東京タワーがよく見える。ここは想像通りにリッチな雰囲気。
なお、カレーはめちゃくちゃ本格的。専門店で出てくるクオリティで、野菜もたくさん入っているし、コクも凄いし、それが550円というのは破格だと思う。
豊島区役所 cafeふれあい 本店
池袋区役所も現在の庁舎に食堂らしい食堂はなくて、カフェが入っているんだけど、この位置がすごい。役所の窓口の並びに平然と存在している。
このお店、めちゃくちゃ人気店で最初行ったとき入ることができなかった。ランチも予約でいっぱいになりがちだとか。職員というより、地域の人が利用している感じみたい。
そんなわけなので、2回目でやっとありつけたカレーは然もありなんな美味しさ。大きくてホロホロな鶏肉が堪らない。甘さと辛さのバランスがよくて、作り手のこだわりが伝わってくる。
目黒区役所レストラン
中目黒にありながら、ロの字型の建物で、その中心に池があるという贅沢な目黒区役所。就労支援のお弁当や雑貨の販売があったり、けっこう盛り上がっていた。
ここの食堂の名物はブラックカレー。黒ゴマと黒糖とココアでこの色を出しているから、相当に甘い。でっかいエビフライが二つも載っている。Xに投稿した際、目黒だからブラックなんですねとコメントがあり、そういうことかと合点がいった。
板橋区役所 カフェダイニング NAKAJUKU
地下鉄の駅を出てすぐに位置して、首都高や幹線道路に囲まれている板橋区役所はどこよりも都会の役所って雰囲気だった。
ビーフカレーのお肉は薄切りタイプ。ビーフストロガノフみたいだけど、まったりとしたルーは香り豊かでスパイシー。地元のお年寄りが多く訪れ、テラス席を優雅に楽しむ方もチラホラ。
荒川区役所 レストランさくら
荒川区役所は最寄りの町屋駅から相当に歩くのだけど、まわりを多くの緑で囲まれ、昔ながらの役所って感じで雰囲気があった。住んでいる方々はバスを利用されているようだった。
その地下にあるのがレストランさくら。タマネギがたっぷり入り、コクと甘みが深く出ていた。そして、それに負けないだけのスパイスは香りよく、毎日食べられる味わいで嬉しい。
台東区役所 チカショク さくら
細長い建物がずどーんっと高く伸びた台東区役所。ここの食堂はテレビの特集などでもよく出てくる。というのも、上野動物園のパンダにまつわるオリジナルメニューを考案するから。
いまは双子のベジぱんだカレーが提供されている。黒の部分は海苔の佃煮で、大豆ミートを使ったキーマカレーは言われなければわからないレベルでちゃんと肉! 意外と辛いのでお子様向けではないよ。
大田区役所 Cafe Cosmo
大田区も杉並区と同様、かつては大きな食堂があったけれど業者が撤退してしまったらしい。でも、1階にカフェが入っていて、地域の人たちが集まる場所になっていた。
よく煮込まれた牛肉が柔らかく美味しい。深めにソテーされた玉ねぎの味わいが深く、バターの甘さとマッチしていた。今回は食べなかったけど、日替わりのケーキも美味しそうだった!
江戸川区役所 食堂なし
江戸川区役所には、むかし、ラウンジおあしすというお店があり、大盛りカレーが有名だったらしい。区役所の移転や建て替えの話を受け、撤退してしまったんだとか。残念。
そのスペースは現在、休憩室になっていて、職員や地元の人たちが集まって、お弁当を食べたり、談笑したりしていた。使われていない厨房がちょっともったいないよね。
世田谷区役所 食堂なし
世田谷区役所は新庁舎建設のため、絶賛工事中だった。今回、建物ごとなかったのはここだけ。一応、役所の機能は近くの施設に移っていてるので、食堂以外はちゃんとしている。
ネットではいまも食堂の情報が載っていたので、到着したとき、なにもない風景に唖然としてしまった。アクセスが大変なのに困ったなぁ。とりあえず、近くの松陰神社で吉田松陰先生にご挨拶してきた。
中野区役所 ナカノヤ NYAcafe
今回の23区役所のカレーをぜんぶ食べるきっかけとなったのが中野区役所のカフェ食堂。ここでお昼に定食を頂き、あまりの美味しさにいろいろ知りたくなったのだ。
ここは雑穀米がデフォルト。薄切りの牛肉がたっぷりで、おとなと言うだけあって、かなりスパイシー。アクセントの蓮根チップスが嬉しい。実はポテトより好き。
江東区役所 食堂なし
ここも下町食堂というお店が人気だったけど、設備の老朽化を理由に撤退したみたい。そのフロアはいま組合の事務所になっていて、一般の人は中に入れない。
せっかくなので、近くの文化センターでやっていた俳句展を見て帰ることに。「今日のこと今日片付けて月仰ぐ 美津」「人の世に紙風船の軽さあり えい志」など名句がいっぱい。面白かった。
中央区役所 食堂なし
ここも食堂なし。もともと2軒あったのがコロナ禍をきっかけに両方撤退してしまったらしい。いまは休憩スペースになっていて、職員の人たちがお昼休みしていた。
だんだん東部の区役所は食堂がないらしいとわかってきた。人がいないのかと言えば、そうでもなく、近くの築地場外市場へ行くとインバウンドが凄かった。人も価格も。サーモン2貫、マグロ2貫で1,400円。これが売れているんだからすごい。
文京区役所 職員食堂
文京区役所は地下鉄春日駅と直結しているのでアクセスはよかった。でも、食堂が人気らしく、最初13時ごろに行ったらカレー売り切れと言われてしまった。衝撃。
仕方がないので別日に再訪。東京ドームを見下ろしながら、角切りの人参と薄切りの豚肉に甘めなルーを頬張ると子どもの頃が思い出される。今日はコーン入りのコロッケが載っている。これまた懐かしい味だった。
千代田区役所 Dining 九段
武道館のそばに位置する千代田区役所はまるでオフィスタワーのようで、なんとなく、働いている人たちも仕事ができる感にあふれていた。その10階に位置するDining 九段もオシャレな雰囲気。
ただ、カレーは家庭的。ニンジンもジャガイモもゴロゴロ! 玉ねぎも形が残っているし、野菜を食べたって感じがすごい。お母さんのカレーっぽくて、たぶん、2日目も美味しい。
カフェ&BAR桜日和というお店も併設されていて、夜にお酒も飲めるとか。それはそれで行ってみたい。
墨田区役所 食堂なし
やはり東の区役所だからか、食堂はなし。コロナ禍で三密を避けるため閉じてしまったみたい。
ただ、他の食堂がない区役所と違って、近くのお店のお弁当が集まる社食DELIを行なっているので面白い。12時台に行ったけど、もう売り切れ。イートインスペースも混雑していたし、職員の人たちがけっこう利用しているようだった。この動きは他の役所にも広がるような気がする。
葛飾区役所 かつしかの元気食堂
京成立石駅が最寄りなので、昼から飲める居酒屋の誘惑を振り解き、テクテク、葛飾区役所へ向かった。いかにも下町の食堂って感じだけど、盛り付け方がオシャレでビックリ。
豚こま肉と玉ねぎで甘めな味わいのカレーはキャンプっぽくて楽しい。なお、「かつしかの元気食堂」は健康的な食事を提供するお店を対象にした認定事業で、現在、葛飾区内に69店あるらしい。独自の取り組みで面白い。
北区役所 みんなのさくらキッチン
王子駅からすぐの遊歩道を進み、北区役所に向かうのだけど、この道がすごくよかった。北区と言えば赤羽の飲み屋街をイメージしていたけれど、こんな暮らしやすいところなのかと驚いた。
食堂では王子にちなんだカレー王子というオリジナルメニューを提供している。星形のコロッケがついているのは『星の王子さま』ってことなのかな? まろやかなルーは野菜の旨味がたっぷり溶けていた。栄養バランスを意識したお店らしい。
品川区役所 食堂
どこよりもシンプルなカレーだった。ひき肉と玉ねぎで甘めな仕上がり。ルーはとろみたっぷりでお腹に溜まりそう。23区で唯一ご飯が自動盛り付けだったのは見ていて「おお!」となった。
他の区にはないサービスとして、庁舎内で働く方限定の配達は特徴的。職員に寄り添いまくっている。
足立区 北館地下食堂
駅からかなり歩くけど、その分、土地を広く使えるのか足立区役所はめちゃくちゃ大きかった。県庁みたいな規模でテンション上がった。
とはいえ、その地下は昭和なムードにあふれていて、食堂のカレーも懐かしい銀皿で嬉しい。大きな具がたくさん入っているし、食べ応えも抜群だった。
ちなみに14階にはソラノシタというお店もあって、最後だし、そっちにも行ってみた。給食と同じものを提供しているのが売りで、足立区の定番メニュー・エビクリームライスを頂いた。
いわゆるシチューライスなんだけど、今回はホワイトカレーということで23区役所のカレーぜんぶ食べるぞ! チャレンジはこれにて終了。
おまけ 都庁 職員食堂
せっかく23区役所をまわったので、最後におまけで都庁のカレーも食べてみることにした。
都庁はさすがに身近な用事を済ませる場所じゃないので、区役所と違って中に入るための申請が必要だった。タッチパネルでできるんだけど、警備員さんに目的を聞かれ、カレーを食べるためと答えるのは恥ずかしかった。
でも、カレーを食べるために来庁するというのも納得のレベルで美味しかった。こういう場所では珍しいしゃばめのルーなんだけど、コクがすごい。具材は溶け切り、旨味にあふれかえっていた。これは一回ぐらい味わってみる価値がある。
ちなみに載っているのはコーンクリームコロッケ。外はサクサク、中はトロッと。いい揚げ具合だった。
さて、以上が23区役所のカレーまとめ。
たかがカレー、されどカレー。
カレーを食べに行くだけでも、その地域のことがなんだかんだでわかってくるから面白い。ぜひぜひ近くの役所に行ってみよう。食堂がないならないなりに、どうしてなくなってしまったのかを通して社会の課題が見えてくるはず。
マシュマロやっています。
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