ヤバい。今日、投稿する予定のショートショートがまだ書けていない。このままでは毎日投稿の記録が途絶えてしまう。もうすぐ365日連続が達成できるというのに。そう簡単には諦められない。だから、わたしはMacBook Airをカバンに入れて、駅前のスタバでこうして執筆に勤しんでいるわけなのだけど、さて、なにを書いたものか? さっぱりアイディアが湧いてこない。結果、焼き芋フラペチーノがあとちょっとでなくなりそうだ。これはまずい。なんでもいいから書かなくては。迫り来るタイムリミットに焦りつつ、土壇場で捻り出した苦肉の策はこの状況そのものを書いてしまえというものだった。それは以下のような文章である……
と、書いたところで、noteのエディタ画面に表示されている文字数カウントが1,000文字になった。これだけの長さがあれば、ショートショートの体裁は保てるだろう。ホッと一息。左手でフラペチーノのグラスをつかみ、太めのストローを吸い上げてみれば、ズババッとはしたない音が鳴ってしまって恥ずかしかった。
そして、それがきっかけで冷静になって考えてみれば、自分のやっていることが急にバカらしく思えてしまった。こんなの単に文字数を増やすための小細工で、読む価値のある情報が一ミリも含まれていないじゃないか。こんなゴミみたいな記事を投稿してまで、毎日投稿の記録が伸びてなんになる?
気づけば、わたしは飲み物を持ったまま、キーボードの右上に位置するバックスペースを強い力で押し込んでいた。
半分ぐらい消したところで、スッキリすると同時に、妙な違和感に襲われた。そうは言っても連続投稿を悔やむ気持ちが残っているのかもしれない。戻るボタンで削除した文章を復活させたい欲求がむらむらっと湧いてきた。
でも、バックスペースの長押しで言葉が消えていく速度は見る見るうちに上昇していて、画面に書かれたものはほとんど残っていなかった。
そして、まもなく、カウンターの数字は0文字となった。
これで終わるはずだった。いや、終わらなくてはいけないはずだった。
しかし、なぜか、エディタ画面には例の文章がもう一度姿を現した。カウントは0文字のままなのに。
なにかがおかしい。不審な挙動に戸惑い、事態を把握するためnoteのヘルプを確認したかったけれど、どういうわけか、わたしの指はバックスペースキーから剥がれてくれなかった。
やがて画面の文字は少しずつ消え始め、文字数はなぜかマイナスの値を示しだした。
そのとき、左手が軽くなった。さっきまでなにかを持っていたような気がするけど、それがなんだったのか思い出せなかった。
モヤモヤとした。
気持ちが悪かった。
でも、あまりに不思議なことが起こり過ぎていて、それどころではなかったのである。
あれ? 外出していなかったっけ?
いや、そんなわけないか。ここはリビングだもんね。そして、目の前にはMacBook Airがある。
そうそう。今日、投稿する予定のショートショートがまだ書けていないんだった。急いでネタを探さなきゃいけないっていうのに、自分の心境をありのまま記してどうする。
消さなきゃ、消さなきゃ。
あ!
その瞬間、わたしは自分が消しちゃダメなものまで消してしまっていることに気がついた。