【1/15まで無料公開】こたけ正義感『弁論』が袴田事件の世界一わかりやすい解説ドキュメンタリーなので、みんな見て。というか、見なきゃダメ!
これはもうタイトル通り。1/15まで無料公開中のこたけ正義感『弁論』が袴田事件の世界一わかりやすい解説ドキュメンタリーなので、みんな見て。というか、見なきゃダメ!
わたしの感想は下の方に書きます。
まずは煽り気味の言葉でこたけ正義感『弁論』を見てほしいという気持ちを押し付けてしまって申し訳ありません。すごくいい内容なので、一人でも多くの人に見てもらいたくて、あえて耳目を引くような形で出してみました。
結果、「お前になんでそんなこと言われなきゃいけないんだよ」と逆効果になってしまうんじゃないかと不安を抱えつつ、無料で見れる1/15が差し迫っているので、攻めたフレーズを使うことにしました。
そして、この作品は袴田事件に関する世界一わかりやすい解説ドキュメンタリー映画であるとわたしは感じているので、以下、映画としてこたけ正義感『弁論』の感想を記していきます。
【映画感想文】誰もが笑ってしまうくだらない小話がすべて、袴田事件における検察の不正を説明するための伏線だとわかったとき、もはや誰も笑えない - 『弁論』監督:こたけ正義感
弁護士芸人・こたけ正義感がYouTubeで無料公開している漫談ライブ『弁論』が本当にすごい。もはや袴田事件についてのドキュメンタリー映画と言っていいレベルで、子どもから大人まで、検察がいかにめちゃくちゃな理屈で冤罪事件を生み出し続けているのか、「お笑い」というフォーマットで見事に表現していた。
しかも、それを「袴田事件」について扱うという看板を出すことなく、普通に楽しい小話みたいな法律漫談を積み重ねていくから素晴らしい。
最初、観客や視聴者はリラックスした気持ちで笑っているのだが、後半、正義感さんが2024年に関わった最大の仕事として袴田事件の話を始めたあたりから、だんだん様子がおかしくなる。
これまで、あり得な過ぎて笑ってしまうエピソードがすべて、実際に検察が袴田事件で主張していたことに類似しているとわかり、もはや笑えなくなってしまうのだ。こんなにも見事な伏線回収をわたしは見たことがない。
袴田事件の無罪判決が確定した際、正義感さんが「再審無罪」を手にメディアに出ていたことは印象的だった。その後の本人の説明で、弁護団の一員ではなく、弁護士会の広報仕事として参加されたことを明かされていた。
タレント活動をしている弁護士として、広報活動とはいえ、袴田事件に関わることは勇気が必要だったと思う。なにせ、冤罪を主張することは検察という国家権力に楯突くことであり、特に袴田事件は世間的な注目度も高い。再審無罪の判決は三つの証拠が捏造されたと認定しているし、検察側の反発は大きいと予想されていた。
先日、ポレポレ東中野で見てきた東海テレビ制作のドキュメンタリー『いもうとの時間』は名張毒ぶどう酒事件に関する映画だったが、その舞台挨拶に立った仲代達矢さんと阿武野勝彦プロデューサーは冤罪事件を扱う役者的リスクについて語っていた。主要なメディアから干される覚悟で出演するんだとか。
検察側からメディアに圧力があるのかどうかはわからない。ただ、いわゆる忖度が働いて、検察を刺激しないようにしようという空気が主要メディア(というかテレビ局)に蔓延しているということは想像に難くない。どの局だって、規模の大きさから叩けば埃は出てくるはずで、わざわざ蛇の尻尾は踏みたがらない。
袴田事件についても同様だ。一応、ドキュメンタリーとしては袴田巌さんの無実を信じ、裁判やり直しを求め続けた姉・ひで子さんや弁護団を取材したものは放送されてきた。でも、ドラマの形で有名な役者が演じたケースをわたしは知らない。
唯一、高橋伴明監督が劇映画『BOX 袴田事件 命とは』を2010年に公開しているぐらい。
この作品も相当な覚悟が感じられた。まず、プロデューサーとしてクレジットされている「忠叡」という人物、実は後藤組の元組長・後藤忠政であり、私費を予算に投入したというのだ。
現代ビジネスの記事を読むと反体制派の人たちが集結し、袴田事件で国家権力がいかに酷い捏造が行ったか、「俺たちが明らかにしてやる!」という強い義務感に駆られて制作された映画であるということがよくわかる。
逆にいうと、元暴力団組長で、肝臓がんで余命いくばくもないような人しか、袴田事件をエンタメの世界で扱おうとしてこなかったというわけだ。
そんな背景を踏まえると、お笑い芸人としてのぼり調子の中、正義感さんが袴田事件に関わるというのはとても勇気が必要だったと想像される。
恐らく、弁護士会としても正義感さんがメディアに取り上げられることで、少しでも多くの人に袴田事件の理不尽さを知ってもらえればと期待していたのではなかろうか。そして、その期待には既に十分過ぎるほど応えているにもかかわらず、正義感さんは漫談ライブで袴田事件を扱い、さらにはYouTubeで無料公開までしてみせた!
こんなにも広報の仕事にまっすぐ向き合えるなんて、芸人や弁護士という肩書きを超えて、人間として最高にカッコいい。
おかしいことをおかしいという。それは司法と芸人に共通していることなのだと思う。なのに、気づけば、司法も芸人もおかしいことをおかしいと言えないようになってしまった。
ライブの最後に、正義感さんが「取り調べの問題や再審制度の問題、様々な課題がありますけれども、やはりその肝として皆さんが覚えておかないといけないのは裁判にかけられようがその人は原則無罪なんだと、被疑者・被告人はイコール犯人ではないということ。今日は絶対に覚えて帰ってください」と言っていたことは重たい。その直後に検察庁の子ども向けホームページの文章を紹介する究極の皮肉。
2025年1月11日現在、未だ検察庁は被疑者・被告人をイコール犯人として扱う考えを発信し続けている。
こんなにも『弁論』が話題になり、このホームページのおかしさが各所で取り上げられているにもかかわらず、文章を改めようとしない検察庁はこれまで通りのやり方を押し倒すつもりなのだろうか。
たしかに国家権力である検察は恐ろしい。恐ろしいけど、おかしいことをしているならおかしいと指摘していかなくてはいけない。日本国憲法の三大原理にある通り、日本は「国民主権」、国家権力を司っているのもわたしたち国民なのだから。検察の歪んでしまった価値観なんて、ギャグとして笑い飛ばしてしまおう。
そうやって、わたしたちがおかしいことはおかしいと笑えるようになれば、司法権の最高機関である最高裁判所だって、この判決は相応しくないとさすがにわかってくれるだろう。
検察も裁判所も、わたしたち国民を遠ざけようとしている。わたしたちがそのおかしさに気がついたら最後、強引なことはできなくなってしまうから。そういう意味ではわたしたちが司法に関心を持つことはとても重要だ。
いま、正義感さんは弁護士芸人として、わたしたちと司法をつなげる橋渡し役を担ってくれている。
特に、YouTubeチャンネル「COCHO COCHO」の「こども法律相談」という企画で、子どもたちの相談を受ける正義感さんの姿勢は素晴らしい。相手の目線に立ち、先入観を排除して話を聞くとはどういうことか、実践し、見せてくれている。
新たな冤罪を生まないために。すでにある冤罪を晴らすために。まずはわたしたちが変わらなくてはいけない。
感情的に強い言葉で誰かを非難するのはやめよう。表に出ている情報は一部だし、嘘も多分に含まれているかもしれないのに、それらでわかりやすい物語を組み立て、こうに決まっていると突き進むのは危険だ。世界はそんなに単純じゃない。
まずは話を聞く。ちゃんと聞く。強制してはいけない。誘導してもいけない。間違っていてもいいし、虚偽であってもいい。いつ、どこで、誰が、どういう状況だどのように語ったのか。そのすべてが公開されていれば、どんな内容であっても意味のある情報になるのだから。
裁判の結果を勝ち負けで表現するのはやめよう。勝負となったら勝たなきゃいけないと錯覚してしまうから。どんな判決であったとしても、真実に迫れるのであれば、目的は果たせているはず。逮捕した被疑者が無罪となれば、消去法から真犯人に迫りやすくなるわけで、本来は次に進むためのステップとみなすべきだろう。
なのに、負けたくないとこだわって、58年後に無罪が確定するってさぁ。袴田さんの人生はめちゃくちゃだし、真犯人は一生を謳歌しちゃってるし、あまりのおかしさに誰も笑えない。
おかしなことがまかり通ってしまう世の中はどう考えても健全ではない。シェイクスピアの演劇にはたびたびピエロが出てきて、王様や貴族たちの傲慢な振る舞いを早々に笑い飛ばし、恥ずかしさで権力者たちの行動を変えさせる。こたけ正義感『弁論』もまた、そういう役割を果たすだろう。
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