発達障害の子どもにとってのネット・ゲーム
こんにちは、心理士のなべたです。
発達障害を持つお子さんにとって、インターネットやゲームの世界は、どんな意味を持っているのでしょうか。
彼らに共通するいくつかの特徴と、それがネット・ゲームとどう結びついているのかをまとめてみます。
参考にした書籍はこちらです。
自閉症スペクトラム症(ASD)
ASDの子どもたちは、人との関わりが彼らの行動の原動力に大きな影響を与えることが少ないです。
また、彼らのもう一つの特徴として、興味や関心がなかなか広がらないため、自分の好きなことややりたいことがなかなか増えていかないということが起こります。
さらに、彼らは記憶力が良い一方で、忘れるのが苦手で、嫌いなものが増えていく傾向があります。
このような特性は、ネットやゲームの世界でどのように働くのでしょうか。
彼らは、文字を使ったコミュニケーションが得意です。
そのため、自分のペースで返信を書き込むことができるため、文字を介したコミュニケーションが有利に働きます。
さらに、スタンプやイラストなどのマンガ的な表現による非言語的なコミュニケーションは、情報量が少ない分、明確で理解しやすいものになっています。
また、興味や関心の特性についても、ネット上では彼らの好きなものをより深め、人との関わりにつなげる可能性があります。実際、ASDのある青年がSNSを使っていることは、友人関係の質が高いことと関係しているという研究もあります。
ネットやゲームの世界では、ASDの子どもたちが自分らしく表現し、コミュニケーションを取る上で有益な環境となっているようです。
しかし、彼らの特性である興味を持ったことに没頭しすぎることは、行動の切り替えの苦手さにつながります。
ネットやゲームを止めることが苦手なのです。そのため、彼らはネットやゲームに費やす時間が長くなってしまったり、約束を守ることが難しくなることが起こりやすいのです。
注意・欠如多動症(ADHD)
ADHDの子どもたちは、注意力を長く持続することや必要なところに注意を向けることが苦手という特性を持っています。
しかし、ネットやゲームの世界では、不注意の問題よりも過剰な集中が問題となることが多いです。
ADHDの子どもたちは、好きなことや関心のあることには飛び抜けた集中力を発揮することがあります。
そのため、ゲームの最中に声をかけても全く気づかなかったり、何時間も集中してプレイし続けてしまったりすることがあります。
そして、ADHDの子どもたちのもう一つの特徴は多動性と衝動性です。
ネット上には情報があちこちに散らばっており、このような雑然とした環境は彼らにとって居心地の良いものとなります。
しかし、衝動性の特性により、ネットショッピングで無駄な買い物をしてしまうなどの問題も生じることがあります。
またアメリカでは最近、ADHDの治療のためのゲームが正式に認可されました。このゲームをプレイすることで、不注意の症状が改善する可能性があるとされています。このような治療法の進展は、ADHDの子どもたちにとって希望をもたらすものとなるでしょう。
限局性学習症(SLD)
SLDの子どもたちは、全般的な知的能力の発達には障害はないものの、読むことや書くこと、計算することなど、学習に関わる特性の領域に困難を抱えています。
ネットの技術の進歩によって、一番メリットを得られるのは、このSLDの子どもたちかもしれません。
読むことが苦手な子どもたちは、スマホやパソコンのテキスト読み上げ機能を利用することで、文字情報を音声に変換して受け取ることができます。
書くことが苦手な子どもたちは、音声入力を使用することで文章を簡単に作成することができます。また、デジタル端末での入力により、「字が下手」といった恥ずかしさを感じることなく、自己表現ができます。
計算が苦手な子どもたちは、一般的な機器に計算機能が組み込まれているため、問題なく計算を行うことができます。
発達障害とネット、ゲームの使い過ぎ
発達障害のある子どもたちにとって、ネットやゲームは良い効果と悪い影響の両面を持っていますが、使い過ぎはしばしば問題となります。
特にASDやADHDがある子どもたちにとっては、ネットやゲームの止めにくさ、没頭しやすさが課題となります。
実際、発達障害のある子どもの多くがインターネットに依存的です。
また、興味深いことにネットに依存的だった子どもが、その2年後には半数以上が依存的ではなくなっていたという報告があります。つまり発達障害のある子どものネットへの依存は思ったより流動的で、依存的になったり治ったりするということです。
最後に、発達障害とネット、ゲームの関係は見えやすいですが、そうではない子どもたちにおいても、ネットやゲームとの関わり方には、個々の特性やこれまでの経験が反映されます。
ネットやゲームの問題を考える際には、発達障害の有無に関わらず、子ども一人ひとりの特性を考慮する視点が必要です。
子どもの生まれ持った特性やこれまでの成長環境によって好みや行動パターンが形成されており、それがネットやゲームとの関わり方に影響を与えるのです。
したがって、個別の子どもの特性を理解し、その子に合ったアプローチを取ることが重要です。
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