喜劇2編。
1971年 シェイクスピア
福田|恆存《つねあり》 訳
・真夏の夜の夢 A Midsummer Night's Dream 1595~96年
・あらし The Tempest 1611年
「夏の夜の夢」
軽く見れる。長くもないし、重くもない。単純に楽しめる。2組の恋愛問題、妖精たちの介入、職人たちの芝居、その物語の織りなし方がすごく良い!最後は、万事解決で終わるのでスッキリした気分になれる。
長い話ではないけれど、面白ポイントがいくつもあり、何より物語の展開・構成が素晴らしく、また、それぞれのキャラが活きてて魅力的。そして、その全体的に醸し出される雰囲気がすごく好き。
話の要は、妖精王オーベロンとパックで、これで話が大きく動いていくと思うんだけど、なぜオーベロンは、この人間の恋沙汰を気にしてくれたんだろうか。けっこう面倒見の良い性格なのかな。
でも、妖精女王タイターニアとは、よくケンカしているようで、サブストーリーというのか、惚れ薬使ってタイターニアを懲らしめるところもまた面白い。ロバ頭のボトムのことも好きになったよ。
ボトムの妖精とのやり取りが、思いのほか紳士的で好印象。何気に、このボトムだけが、妖精とコミュニケーション取ってたから、けっこうレアいキャラなんじゃないか。てか何でロバ頭になったんだっけか?
パックはパックで、問題児っぽいけど憎めないキャラで、人気ありそう。なんか、事がめちゃくちゃなのが好きなんだよね、確か。因みに漫画「ベルセルク」のパックって、きっとここからきてるんだろうと勝手に思ってる。
この地の大公・シーシアス。Wikiによると「大公」(grand duke)というのは、王(king)の下、公(duke)の上に位置する身分らしい。このシーシアスがまたご立派な感じで好印象を持った。
あとは職人たち。なんともバカっぽくコミカルで愛らしい。最後の本番のところは、シーシアスたちの冷静なツッコミが入りつつで、楽しいコメディ。劇で見たらまた違うんだろうな~もっと面白そう。
締めにパックの語りがあるが、「ちょいと夏の夜のうたたねに垣間見た夢まぼろしにすぎない」と。もしこのような事象、不思議な経験することになったら、きっと妖精たちの仕業なんだと思うことにしよう。
訳者の福田恆存さんの解説によると、「Midsummer-Day」は夏至で、ヨハネ祭日前後、その前夜、らしい。なので本作は、正確には「夏至前夜の夢」となるようだ。5月?6月?あたりか。
「あらし」
この作品は、シェイクスピア最後の作品らしく、訳者・福田恆存さんの解説によると、喜劇の最高峰は「あらし」だと書いてあった。プロ目線だとけっこう意味深いもののようだが、そこまでの理解には至れなかった。
ド素人の私にはそれほど面白味はなく、好みではなかった。話の展開から終わり方、キャラクターなどに魅力を感じない。プロスペロー、それとエーリアル、キャリバンなんかの印象が強いかな。
最後のプロスペローが、旧来の敵たちを許すというところに大きなポイントがあるようだが。またエーリアルの解放、魔法を手放す?ことなんかも、同じ意味合いがあるのか。プロスペローは作者でもあると、解説に。
最後に、シェイクスピアは解放されたということか。人間の闇を突き抜け、悟りの境地に至ったみたいな?まあ、詳しくは分からないけれど。とりあえず今のところ、やっぱり「夏の夜の夢」の方が好き!
★\(^^)/☆