
夢幻劇、人生とはそのようなものなのかも…。 戯曲「夏の夜の夢・あらし」シェイクスピア ★4
喜劇2編。
・真夏の夜の夢 A Midsummer Night's Dream 1595~96年
・あらし The Tempest 1611年
「夏の夜の夢」
~なんとなーくの流れ~ (120ページ程)
第一幕
大公シーシアスとヒポリタの婚儀間近、ハーミアの恋愛問題、クィンスたち(職人)の芝居の話し合い。
第二幕
森でパックと妖精たち、そして妖精王オーベロンと妖精女王タイターニア、森の別の場所、オーベロンの計画、惚れ薬のミス、ライサンダーがヘレナに恋、クィンス達の稽古、タイターニアとボトム(ロバ頭)。
第三幕
デメトリアスとハーミア、オーベロン失敗に気づく、ヘレナとライサンダーも、かみ合わない4人、寝る。
第四幕
タイターニアとボトム、オーベロン登場、タイターニア覚める、シーシアス・ヒポリタ・イジアス登場、4人起きる、事情説明、クィンスの家、ボトム帰ってくる。
第五幕
シーシアスの宮殿、ライサンダーとハーミア・デメトリアスとヘレナ組になって登場、余興、クィンス達の芝居、妖精達。
エピローグ
パックの語り。
軽く見れる。長くもないし、重くもない。単純に楽しめる。2組の恋愛問題、妖精たちの介入、職人たちの芝居、その物語の織りなし方がすごく良い!最後は、万事解決で終わるのでスッキリした気分になれる。
長い話ではないけれど、面白ポイントがいくつもあり、何より物語の展開・構成が素晴らしく、また、それぞれのキャラが活きてて魅力的。そして、その全体的に醸し出される雰囲気がすごく好き。
話の要は、妖精王オーベロンとパックで、これで話が大きく動いていくと思うんだけど、なぜオーベロンは、この人間の恋沙汰を気にしてくれたんだろうか。けっこう面倒見の良い性格なのかな。
でも、妖精女王タイターニアとは、よくケンカしているようで、サブストーリーというのか、惚れ薬使ってタイターニアを懲らしめるところもまた面白い。ロバ頭のボトムのことも好きになったよ。
ボトムの妖精とのやり取りが、思いのほか紳士的で好印象。何気に、このボトムだけが、妖精とコミュニケーション取ってたから、けっこうレアいキャラなんじゃないか。てか何でロバ頭になったんだっけか?
「人間様の思いもつかない話だね。こうなると人間などは馬同然、いくら考えたって解りはしないやな……。」 ボトム
パックはパックで、問題児っぽいけど憎めないキャラで、人気ありそう。なんか、事がめちゃくちゃなのが好きなんだよね、確か。因みに漫画「ベルセルク」のパックって、きっとここからきてるんだろうと勝手に思ってる。
「何が楽しいといって、万事めちゃめちゃのこんぐらかりくらい、お気に召すことはないのさ。」 パック
この地の大公・シーシアス。Wikiによると「大公」(grand duke)というのは、王(king)の下、公(duke)の上に位置する身分らしい。このシーシアスがまたご立派な感じで好印象を持った。
「何にせよ、素朴と忠実が大切、その気持ちでしてくれることに、間違いのあろうはずがない……。」 シーシアス
あとは職人たち。なんともバカっぽくコミカルで愛らしい。最後の本番のところは、シーシアスたちの冷静なツッコミが入りつつで、楽しいコメディ。劇で見たらまた違うんだろうな~もっと面白そう。
締めにパックの語りがあるが、「ちょいと夏の夜のうたたねに垣間見た夢まぼろしにすぎない」と。もしこのような事象、不思議な経験することになったら、きっと妖精たちの仕業なんだと思うことにしよう。
訳者の福田恆存さんの解説によると、「Midsummer-Day」は夏至で、ヨハネ祭日前後、その前夜、らしい。なので本作は、正確には「夏至前夜の夢」となるようだ。5月?6月?あたりか。
かつて西洋では、この時期、若い男女が森に出かけ、花輪を作って恋人に捧げたり、幸福な結婚を祈ったりする風習があった。また古くは、この夜、妖精たちが跳梁し、薬草の効き目が特に著しくなると言われていた。
「あらし」
~なんとなーくの流れ~ (120ページ程)
第一幕
船が嵐で沈没、島でプロスペローが娘ミランダにいきさつを話す、弟アントーニオの簒奪された、妖精エーリアル、怪物キャリバン、船に乗ってたナポリ王の息子ファーディナンド、ミランダ恋。
第二幕
島の他の部分・森の中、アロンゾ王たち、眠る、アントーニオとセバスティアンが殺害を計画、エーリアルによって目を覚ますゴンザーロー、アロンゾ王も起こす、不毛の大地でキャリバン、トリンキュローとステファノ。
第三幕
ファーディナンドとミランダのラブ話、別の場所でステファノ・トリンキュロー・キャリバン、エーリアルが話を聞く、また別の場所でアロンゾ一行、食卓現れ消える。
第四幕
プロスペローの岩屋、ミランダとファーディナンド誓いを立てる、妖精たちの仮面劇、その後キャリバンたち三人来る、盗みを働く、猟犬の姿した妖精たちに追われる。
第五幕
プロスペローとエーリアル、アロンゾ一行来る、プロスペローの話、ファーディナンドと再会のアロンゾ、船長と水夫長も登場、キャリバン組も、プロスペロー詳しい話をしようと洞窟の中へ。
エピローグ
プロスペローの語り。
この作品は、シェイクスピア最後の作品らしく、訳者・福田恆存さんの解説によると、喜劇の最高峰は「あらし」だと書いてあった。プロ目線だとけっこう意味深いもののようだが、そこまでの理解には至れなかった。
ド素人の私にはそれほど面白味はなく、好みではなかった。話の展開から終わり方、キャラクターなどに魅力を感じない。プロスペロー、それとエーリアル、キャリバンなんかの印象が強いかな。
(仮面劇から)「あの役者どもは、先にも話しておいた通り、いずれも妖精ばかりだ。そしてもう溶けてしまったのだ、大気の中へ、淡い大気の中へ、が、あのたわいの無い幻の織物と何処に違いがあろう、雲を抱く高い塔、綺羅びやかな宮殿、厳めしい伽藍、いやこの巨大な地球さえ、因よりそこに住まう在りと在らゆるものがやがては溶けて消える、あの実体の無い見せ場が忽ち色褪せて行ったように、後には一片の霞すら残らぬ、吾らは夢と同じ糸で織られているのだ、ささやかな一生は眠りによってその輪を閉じる……。」 プロスペロー
「夢を見る、雲が二つに割れて、そこから宝物がどっさり落ちて来そうな気になって、そこで目が醒めてしまい、もう一度夢が見たくて泣いたこともあったっけ。」キャリバン
最後のプロスペローが、旧来の敵たちを許すというところに大きなポイントがあるようだが。またエーリアルの解放、魔法を手放す?ことなんかも、同じ意味合いがあるのか。プロスペローは作者でもあると、解説に。
最後に、シェイクスピアは解放されたということか。人間の闇を突き抜け、悟りの境地に至ったみたいな?まあ、詳しくは分からないけれど。とりあえず今のところ、やっぱり「夏の夜の夢」の方が好き!
★\(^^)/☆
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