見出し画像

「父の仕事」の授業をつくってみた(5年「勤労、公共の精神」)

今回から教科書を変えて授業を考えていきたいと思います。
今回扱う教材は「父の仕事」(日本文教出版社 小学道徳生きる力 5)です。
どのような教材なのか、そこからどのような授業展開を考えたのかをまとめていきます。
ぜひ教材研究の参考にしてくださいね。

アウトプットのつもりで感想や質問をコメントしていただけるとぼく自身の学びも深まります。
よかったらお願いします。

(前回の記事では内容項目について考えたことをまとめています。よかったら読んでみてくださいね↓)

教材と内容項目について

「父の仕事」はC:主として集団や社会との関わりに関すること「勤労、公共の精神」という内容項目について考える教材です。

〔第5学年及び第6学年〕
働くことや社会に奉仕することの充実感を味わうとともに、その意義を理解し、公共のために役に立つことをすること。

学習指導要領解説 特別の教科道徳編

教材を読んでみて、今回は「働くことの意義を理解する」ということにフォーカスした内容だと感じました。
1学期教材の「サタデーグループ」は「働くことや社会に奉仕することの充実感を味わう」にフォーカスした内容になっていると思うので、同じ「勤労、公共の精神」でも焦点の当て方を変えることで多面的・多角的に考えることができますね。

教材のあらすじ

主人公のぼくは電車の運転士をしている父に対して「お父さんの仕事って、つまらないんだね」と言います。
(こんなこと自分の子どもに言われたら、びっくりしちゃいますね。笑)
仕事の都合上家に帰ってこられない日があったり休日や祝日に出勤することもあり寂しい気持ちから出た言葉のようです。
そんなぼくに対して父は「お父さんには、今の仕事が楽しいんだ。でも、楽しいだけではなくて、とてもだいじな仕事だと思っているよ。」と言ってにこにことしていました。

ある日、ぼくは弟と二人でおばさんの家へ出かけます。
たまたま乗った電車は父が運転していました。
運転席のすぐそばで父を見つけたぼくと弟は「お父さん!」と叫びましたが、父はちらっと見るだけで返事をしません。

ぼくは、家に帰ってきた父にどうして返事をしてくれなかったのか尋ねます。
すると
・お父さんの仕事は多くの人の命を預かっていること
・運転する時は前方だけでなく、車内のお客さんにも注意を向けていること
・スピードの出し方やブレーキのかけ方によって、お客さんに迷惑をかけてしまう可能性があること
を伝えます。
そんな父の話を聞いたぼくは車内で父を呼んだことがおそろしいことのように思えた、というお話です。

声をかけたくなるぼくの気持ち、なんだかわかる気がします…。
休みの日もなかなか遊ぶことができない父に会えた喜びもあったでしょう。

仕事の先に人がいる

主人公の父は運転士の仕事を楽しいだけでなく、大事なものだと言っていました。
ここに父の価値観が表れていますね。

子どものなりたい仕事の中でYouTuberが挙がることは珍しくなくなりました。
それはきっと楽しそうに見えるからだろうと思います。
好きなことをめいっぱいしてお金をもらえるなんて子どもにとっては理想ですよね。
けれどYouTuberはもちろん、どんな仕事においても責任は発生します。
接客する仕事でなくても自分の仕事の先にはお客さんがいますよね。
自分の仕事の先にいる人に対して責任を果たすことは大事です。

父は自分の仕事が「乗客の命を預かる」という重大な責任があることを自覚していました。
また、乗客が安心して乗ることができるようにスピードのだし方やブレーキのかけ方にも気を配っています。
自分の仕事の先にいる人に対して自分の責任を果たそうとする心が見えてきませんか。

父が子どもたちに対して「今はごめんね」くらいの返事をすることはできたかもしれません。
ちょっと手を振ってあげることもできたかもしれません。
しかし、それを見ている乗客はどう感じるでしょうか
「やさしい運転士さんだな」と思う人もいるでしょう。
しかし、「ちゃんと運転に集中してほしい」「事故が起きたらどうするんだ」と不安になる人もいるのではないでしょうか。
教材には描かれていませんが、主人公の父は「乗客がどう感じるか」ということまで考えていたのではないかと思います。

仕事は楽しい

子どもの頃の自分を振り返ってみると、「仕事は大変そうだ」「仕事は家族のためにお金を稼ぐということだ」というイメージがあり、「仕事を楽しむ」とか「仕事が好き」のような印象がありませんでした。

この教材では「働くことの意義を理解することにフォーカスしている」と書きました。
しかし、自分の思いとしてはそこで終わらせるのではなくその責任がやりがいにもつながっているということにも目を向けられるといいなと思っています。

もし子どもの頃のぼくのように仕事に対してそこまでポジティブなイメージを持っていないのであれば、少しでもこの授業の中で「働くっていいな」「働くのって楽しいんだな」「そういう捉え方なら仕事を楽しいと思えそうだ」という気づきを得られるようにすることで、働くことに対して希望をもてる時間になるのではないかと考えました。

だから、「楽しいだけではなくて、とてもだいじな仕事だと思っているよ。」の楽しいにも着目して授業を展開しようと考えました。

授業展開について

板書案は以下のようになりました。
ここからは板書案も見ながら読んでいただければと思います。

板書案

①導入

教科書に示されている主題から導入していきます。

「働くってどんなイメージ?」

「お金を稼ぐ」
「楽しそう」
「人のためになる」
というポジティブな考えも出てくると思いますが、反対に「大変そう」「めんどくさそう」という考えも出てくるかもしれません。

子どもたちが普段している当番活動も仕事の一つだと考えたらどうかを尋ねてみると、自分の経験をもとにしたイメージも出てくるでしょう。

働くということは「      」ということだ。

「ここまでの話を聞くと『人のためになるものだ』とか「お金を稼ぐということだ」が入りそう?『大変で面倒なものだ』が入る?今日はこの空欄にどんな言葉がぴったり合いそうか考えてみよう」と、主題を使って本時の問いを設定します。

②展開前段

範読後ぼくのさみしかったであろう気持ちに触れつつ内容を簡単に確かめます。
「お父さんのことが大好きなんだろうね」
「休日も遊べなくて寂しそうに見えるんだけどみんなはどう思う?」
「そんなお父さんと電車の中で会えたらきっと嬉しいよね」
などとやり取りしながらぼくの心情をとらえていきます。

そして、

「みんなはお父さんが知らんぷりしたことをどう思う?」

と中心発問をします。

ここでは座標軸で自分の立場を決め、考えた理由を話し合います。
座標軸の両端は「ダメだと思う」「仕方がない」という項目にします。

〈「ダメだ」に近い子どもの考え〉
「ぼくと弟がかわいそう」
「ちょっと手を振るくらいならいいと思う」
「無視しなくてもいいと思う」
などが出てくることが考えられます。
子どもたちから出てこない時は教師から「ちょっと手を振るくらいならいいと思ったんだけどどうかな?」と伝えてもいいと思います。

〈「仕方がない」に近い子どもの考え〉
「お客さんの命がかかっている」
「事故につながるかもしれない」
「怪我をするかもしれない」
「集中しないといけない」
などが出てくると考えます。
これが父のいう「大事さ」の一つですね。

〈問い返し案〉
「もし振り向いて返事をしているところを他のお客さんが見たらどう思うかな?」
「電車がゆっくり止まるのと急に止まるのと何が違うの?」
「命がかかっているって責任重大だよね。そんな仕事をお父さんは『楽しい』とも言っていたけど、お父さんが考える仕事の良さってなんだと思う?」
問い返しで子どもの考えを掘り下げたり、違う視点から考えたりできるようにしていきます。

③展開後段

改めて本時の問いに戻ります。
中心発問で拡散した思考を収束させます。

働くということは「     」ということだ。

「あなたならどんな言葉を入れる?」と問い、これまで思考してきたことを短い言葉に収束させていきます。
ここで子どもたちが選ぶ言葉にその子らしい価値観が表れますよね。
責任感を大切にしている子もいれば、やりがいを大切にする子もいるでしょう。
実際働いている人たちの価値観も様々です。
この⬜︎にどんな言葉を入れるかを考える時間を、自分なりに働くことについての現時点の価値観を表面化することができるような時間にしたいです。

④終末

仕事や働くことというと「将来のこと」というイメージがありますが、導入でも触れたように当番活動や委員会活動のように「現在のこと」でもあります。
将来のことというとどこか自分とは遠く感じてしまうこともありますよね。
だから現在の自分がしている仕事(当番活動や委員会活動など)にどのように生かしていくかという視点で考えると本時で学んだことが自分ごとになりやすいのではないかと考えました。

「将来自分がするだろう仕事もあると思うけれど、今みんながしている当番活動や委員会活動も立派な仕事だよね。今日の学習が一人ひとりの働き方にいい影響を与えられるといいね。今日の学習でこれから自分に生かしたいと思うことは何かな?」と個々に振り返ります。

おわりに

今回の授業づくりでは、働くということの意義について理解することにフォーカスしていましたが、充実感にも焦点を当てる展開にしました。
もしかしたら盛り込みすぎなのかもしれませんが、様々な面から道徳的価値について考えてほしいという思いがあります。

学級の実態に応じて「どこまで」を考えていくことも大事ですね。
今は子どもたちと実践できないので感覚がちょっとわからなくなっているかもしれません。笑

あと、今回は教材の登場人物の心情理解にはあまり重きを置かず、「自分はどう思うか」という発問を中心にしました。
指導書の展開やインターネットでの情報では主人公の心情理解を中心に進めているものが多かったです。
ぼくの中では今回「自分はどう思うか」という切り口の方が自然と道徳的価値の理解に迫ることができるのではないかと考えました。
もしその点について皆さんの感想や質問があればコメントしてみてくださいね。


ぶっく📚

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集