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「日本の『まん画の神様』」の授業をつくってみた(5年 個性の伸長)

今回は「日本の『まん画の神様』」(Gakken新版5)を使って授業づくりをしました。
前回内容項目について考え、それをもとに授業をつくったのでこちらも併せて読んでいただけると嬉しいです。

今回の教材では漫画の神様と呼ばれた手塚治虫さんについて書かれています。
手塚治虫さんの生き方から「個性の伸長」について理解を深め、自分の生き方に生かしていくことができるような授業をつくっていきたいです。

もしよかったらコメントいただけると非常に嬉しいです。
あなたのアウトプットの機会として活用していただくつもりでお気軽にお願いします。

内容項目と教材について

内容項目については学習指導要領解説を読んである程度解像度を上げるようにしていますが、教材を通して考えているとより一層自分の考えが深まっていく感じがします。

今回の内容項目はA:主として自分自身に関すること「個性の伸長」。
学習指導要領を読んでみると、

〔第5学年及び第6学年〕
自分の特徴を知って、短所を改め長所を伸ばすこと

学習指導要領解説 特別の教科道徳編

とあります。
今回教材を読んで、特に「長所を伸ばすこと」にフォーカスしているように感じました。

手塚治虫さんが自分の好きな漫画を描き続けて人々に貢献する姿から、最初に考えた落とし所は「好きなことを大切にする」ということでした。
けれど、「本当にそれでいいのか?」となんだかモヤモヤしてしまったんですよね…。
理由は好きなことをやりこんで伸ばしていくというのは自分勝手と表裏一体だなと思ったからです。
その違いを明確にしないまま授業すると、「好きなことだけやってりゃいい」という考えに行き着いてしまう気がしました。

好きなことを極めることが、「自分勝手(≒短所)だ」と認識されるのと「長所だ」と認識されるのはどんな違いから生まれるのだろうと考えてみました。
うーん…。
「人に貢献しているかどうか」かな?

手塚治虫さんの場合、漫画を描き続けることによって多くの子どもたちに喜んでもらうことができるようになりました。
クラスで自分の漫画が回し読みされることから始まり、担任の先生に認められる経験を経て、漫画家となって多くの子どもたちの心を虜にしました。
手塚治虫さんの好きなことであり得意なことは、多くの人々を喜ばせ続けてきたということですね。

もしかしたら人に喜んでもらえるのであれば漫画でなくてもよかったのかもしれません。
けれど、「漫画ならばより多くの人に、よりたくさんの喜びを届けられる」という確信があったのかもしれません。
つまり、自分の好きなことを続けることは「人々を喜ばせるための手段の一つ」であり「目的を達成するために最も有力な手段」だったと考えることができそうです。

好きなことが人の役に立っているのであれば、好きなことに夢中になっていても周囲の人々から認めてもらいやすくなりますよね。
そうなると好きなことを極めることは「自分勝手(≒短所)」ではなく、「長所」として認識されるのではないでしょうか。

そんなことを考えて、最終的には「好きなことを通してどうすれば人に貢献することができるかどうかを考えることが大切だ」という落とし所をねらいとしました。

授業の展開について

板書案はこのようになりました。↓

板書案

ここからは板書案も見つつ読み進めていただければと思います。

①導入

「あなたが好きなことはなんですか?」という問いから、価値への方向づけをしていきます。
子どもたちの答える「好きなこと」に対しては、「それの何に対して好きだなぁと思うの?」「それのどんなことが好きなの?」とより具体的な部分を掘り下げるようにします。

板書案にもありますが、「サッカーが好き」と答えた子は「シュートで思いっきり蹴るのが好き」なのかもしれません。
同じ「サッカーが好き」でも「みんなで作戦を考えることが好き」なのかもしれませんよね。
「好きの対象」は同じでも、「好きの要素」は違う可能性があります。

「好きの要素」を抽出しておくことで、自分の「好き」を転用させることができるようになるのではないかと考えています。
転用可能な「好きの要素」を見つけることができれば、「好きなこと」を人に貢献できるようにカスタマイズできるのではないでしょうか

導入で「好きの要素」を抽出することで、授業の終末で振り返りをする際に「自分の好きなことをどのようにして人の役に立てたいか」を考える材料になるのではないかとも考えています。

続けて手塚治虫さんの情報について先に示します。
手塚治虫さんが好きなことを列挙し、「みんなあと比べて、何か特別変わっているわけではないよね?」と問いかけます。
漫画の神様と呼ばれる人が決して最初から人と大きな違いがあったわけではなく、自分たちと同じようなことが好きなんだと、存在を身近に感じてほしいからです。

自分たちの「好きなこと」と手塚治虫さんの「好きなこと」を見比べてみたら、「手塚治虫さんはどうやって好きなことを自分のよさとしてここまで伸ばすことができたんだろうね。今日はそこを考えてみよう」と呼びかけ本時の問いにします。

②展開前段

範読したあと、手塚治虫さんは40年間漫画を描き続けたことを確かめます。
「戦争中に規制されることもあったのに40年間も漫画を描き続けられたのはどうしてだろう?」という発問を中心に据えて道徳的価値に迫っていきます。

理由は手塚治虫さんへの影響度の違いはあれいくつか考えられます。
子どもたちと考えられる理由をリストアップし、子どもたちの考えの理由を掘り下げていきます。

ここでねらいに迫るために用意した問い返しは以下の2つです。

A:「自分ってすごいだろ!」という気持ちで続けているのかな?
B:喜んでもらえるなら好きなことじゃなくてもよかったってことかな?

Aは、「周囲の人に認められた」という意味の発言に対しての問い返しです。
多少は自分の力を認めてもらいたいという承認欲求はあったと思います。
けれど、それよりも「自分の漫画を読んだ人が喜んでくれる」という事実がもっと描きたいという意欲につながったのではないかと思います。
好きなことをして自分だけが満足するのではなくて人の心をも満たしていくことで、自分の好きなことが長所として認識されます。
これが「自分のよさを生かす」ということではないでしょうか。

Bは、「みんなに喜んでもらいたい」という意味の発言に対しての問い返しです。
内容項目の部分でも触れましたが、手塚治虫さんにとって「人に喜んでもらう」ことを実現するために最も有効な手段が漫画を描くこと(=好きなことや得意なこと)ということを捉えます。

ここに気づくことができれば、「好きなことだけしていれば手塚治虫さんのようになれる」という勘違いが起こることは減りそうです。
あくまで手塚治虫さんは「好きなことを通して人に貢献した」
だからこそより長所を伸ばすことができて漫画の神様と言われるほどの漫画家へと成長することができたのだと。

③展開後段

展開後段では、本時の問いに戻って「自分のよさを伸ばすために大切なことは?」という問いについて考えていきます。

子どもたちの発言としては
・好きなことを見つける
・どうすれば人に喜んでもらえるかを考える
・もっと面白くなるように工夫する
・好きなことを続ける
などが考えれます。

発言を聞いてそのまま板書するのではなく、
・どこからそう考えたの?
・それを大切にするとどうなりそう?
など問いかけながら板書していきます。
特に「好きなことを続ける」という発言が出てきた場合は、「好きなものって変わることがあるよね。それでも同じことをやり続けなければいけないのかな?」と問い返します。

そうすることで「好きなものは変わっていい」「また見つければいい」というように、「何か一つのことを好きでい続けなければならない」のではなく「その時々の自分の「好き」という感情を大切にする」ことが自分のよさを見つけることにつながると考えることができるのではないでしょうか。

④終末

終末では「本時で学んだことをこれからの自分にどう生かしていきたいか」という視点で自分の生き方と重ねて振り返ります。
展開後段で「自分のよさを伸ばすために大切なこと」を考えているので、それを自分の生き方につなげる時間です。

おわりに

今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。
ここまでで3,000字くらいあるのでそんなに手軽に読める文章ではないですよね。笑

授業に関しては正直なところまだスッキリしない感じがするのですが、一旦ここまで。
目の前に子どもたちがいないのでどんな子に届くのかイメージがしづらいのかもしれません。

次回は再び5年生の教材で授業づくりをしていきます。
内容項目はC:主として集団や社会との関わりに関すること「国際理解、国際親善」で行います。
次回も読んでくださると嬉しいです。


ぶっく📚

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