
「太平洋のかけ橋 新渡戸稲造」の授業をつくってみた(5年「国際理解、国際親善」)
今回は「太平洋のかけ橋 新渡戸稲造」(Gakken新版5)を使って授業づくりをしました。
内容項目の「国際理解、国際親善」については前回の記事で考えたことをまとめているのでもしよかったら読んでみてください。
なんとなく苦手意識のある「国際理解、国際親善」を扱う道徳授業。
感想、疑問、質問などぜひコメントしてみてください。
考える過程が学びになります。
内容項目と教材について
今回扱う内容項目はC:主として集団や社会との関わりに関すること「国際理解、国際親善」です。
〔第5学年及び第6学年〕
他国の人々や文化について理解し、日本人としての自覚をもって国際親善に努めること。
今回教材を読んで特に「国際理解」の方にフォーカスしているように感じました。
本教材では新渡戸稲造さんが大学入学試験を受ける場面から始まります。
面接官の先生に「太平洋のかけ橋になりたいのです。」と語る新渡戸稲造。
その後入学してから「武士道」の出版まで新渡戸稲造が日本の良さを伝え続けた様子が描かれています。
最後の段落では日本人から非難されていた様子についても触れられていました。
それでも世界の人々に向けて日本の良さを発信し続け「太平洋のかけ橋になりたい」という想いを体現し続けてきた姿についても書かれています。
「発信する」という方法
教材を読んで最初に思ったのは、「互いの国について理解する手段として自分の国の良さを発信することも大切なんだ」ということです。
相手の国の人々が自分の国の良さに気づいてくれるのを待っているのではなく、新渡戸稲造は自分から積極的に発信していました。
そして発信する際には互いの文化の違いを尊重した発信を心がけていたということが教材分から読み取ることができました。
自分の国の良さを語るということは、伝え方によっては「自分の国が1番だ!」と主張するように聞こえても不思議ではありません。
それでは相手の国から反発されてしまうでしょうし、「あなたの国も素敵だね」なんて想いをもってもらうのは難しいでしょう。
本教材では「武士道」の内容が少し紹介されていますが、その伝え方は「A国ではこのような文化があり、その文化にはこのような考え方や良さがある。反対に日本ではこのような文化があり、その文化にはA国の文化とは違った考え方と良さがある」というニュアンスで書かれていました。
「どちらがいい」「どちらが優れている」というのではなく、「あなたの国の考え方って素敵だよね。ちなみに日本にはあなたが知らないこんな良さがあるんだ」とどちらの良さも讃えているように感じます。
こんな風に自分の国の魅力を伝えてもらったならば理解しよう、もっと知りたい、素敵だな、という想いをもってもらえそうな気がします。
今回の授業ではこのような新渡戸稲造の態度に着目して、「互いの国の人々や文化を尊重し合う大切さ」を感じられる授業にしていきたいと考えました。
授業の展開について
板書案は以下のようになりました。ここからはこの板書案も見ながら読み進めていただければと思います。

①導入
今回は教科書の主題から教材と価値への導入を図ろうと思います。
〔主題〕
世界とつながるかけ橋
「『世界とつながる』と聞いてどんなイメージが思い浮かびますか?」という発問から主題に対する素朴なイメージを出し合います。
世界は物理的につながっている国もあれば繋がっていない国もあるので、子どもたちは「インターネット」や「SNS」などを挙げるのではないかと思います。
また、道徳の時間ということで「心」「仲良くなる」のような発言も出てくるのではないかと予想しました。
そのような発言を受け止めて「今日は『太平洋のかけ橋』というお話を通して勉強するんだけど、その中で『世界のかけ橋になった』と言われたのがこの新渡戸稲造さんなんだ」と紹介します。
さらに、「世界とつながる“かけ橋“とあるけれど物理的な橋が繋がっているわけではなさそうだね。新渡戸さんは世界の何と何を繋げたんだろうね。」と本時の問いを示します。
②展開前段
範読のあと、新渡戸稲造が「世界とつながるためにしたこと」を確かめます。
そして、リストアップした中から「最も影響の大きかったものは何か」を問います。
世界中で翻訳・出版されたことなどから「武士道を書いたこと」が選ばれるだろうと思われます。
そこから「新渡戸稲造が武士道に込めたのはどんな想いだろう?」という中心発問につなげます。
おそらく子どもたちの考えとして、
「日本の良さを知ってもらいたい」
「互いの国について理解し合う大切さ」
のように、「日本のことをもっと理解してほしいという想い」や「お互いの国のことを理解し合う大切さ」についての発言が出てくると考えられます。
ただ、そこまで多様な考えは出てこないでしょう。
なので、問い返しで広げていきます。
(問い返し)
「自分の国を自慢したかったってこと?」
「お互いの国のことを理解するのって大事?」
「ここでいう国の良さって例えばどんなこと?」
「新渡戸さんはどんな世界をつくりたかったんだろうね」
「互いの国を理解しようとしなければどんな世界になっていきそうかな?」
こうして、道徳的価値についての理解を豊かにした上で、本時の問いである「新渡戸稲造がつないだものとは?」について個々の考えを形成していきます。
ここではすぐに自分なりの答えを紡ぎ出すのは難しいと思われるので、ペアやグループで簡単に考えを交流してから全体で共有していくといいのではないかと考えました。
③展開後段
ここまでの学びを自己の生き方と結びつけて考えられるようにしていきます。
新渡戸稲造が世界とつながるかけ橋となったことは世界がつながる大きなきっかけになったかもしれません。
しかし、1人の人間にできることは限られています。
結局は一人ひとりが互いの国を理解しようとしなければならないのではないでしょうか。
つまり、「国」を主語にするのではなく、「自分」を主語にすることが「国際理解、国際親善」という道徳的価値を実現する一歩になるのです。
これらのことから、「もし自分も小さなかけ橋になれるとするならば、どんなことを大切にしたいですか?」という発問を考えました。
新渡戸稲造ほど大きなことはまだできません。
けれど、その想いを自分の手の届く範囲で実現していくことはできるはずです。
④終末
「一人ひとりが大切にしたいと考えたことを大切にすることができれば、少しずつ世界がつながって平和な世界をつくることができるかもしれないね」と子どもたちの考えを価値づけて振り返りの時間にします。
おわりに
最初に書いた通り、「国際理解、国際親善」の授業には苦手意識があります。
今回授業をつくる中でももやもや悩んだ時間が多かったように感じます。
正直この授業案もあまり納得度は高くありません。
もっとブラッシュアップできる余地が山ほどありそうだな…と。笑
もしよかったら「自分ならこうする」「この発問よりもこっちの方が…」などコメントいただけると勉強になります。
次回はD:主として生命や自然、崇高なものに関わること「生命の尊さ」について考えをまとめ、授業をつくっていきます。
ぜひそちらもチェックしてください。
ぶっく📚