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月曜日

日曜の朝、目が覚めると、冷気がなかった。
冬が冬眠に入ったようだった。

嗚呼、そうだ、死のうと思った。

とりあえず外に出てみる。
桜共は皆飛び降りた後だった。
どこを探しても私がいない。
そりゃそうだ。
この世に私なんていないのだから。

とりあえず家に帰ってみた。
薄らと腐敗の匂いが漂っていた。
どこもかしこも私だった。
そりゃそうだ。
この世に私なんていないのだから。

外は暗くなる。
中は明るくなる。
なぜに人間はそんなにも光を浴びたいのか。
私は人間ではないので、暗さを受け止めることができるのである。

明日起きるために寝る。
また寝るために起き続ける。

起きている間は忙しない。
食べたり、排泄したり、歩いたり、息をしたり。

私は月曜日に言った。
「お前がこの世から居なくなればいい。」
月曜日は言った。
「別に俺はこの世にいない。」
私は言う。
「いや、確実にいる。みんなお前を嫌がっている。私もだ。お前さえいなければ、この世の中はもう少し息の匂いがする。」
月曜日は言う。
「お前らが嫌がっているのは、日曜日と火曜日の間であって、月曜日じゃないだろう。俺は居ないよ。お前らの都合よく敵を作るなよ。お前らはストレスが無いと死ぬ生き物だからって、勝手に月曜日を作るなよ。」
私は言う。
「いや、お前はいる。じゃあ私が今会話してるのは誰なんだよ。」
月曜日は言った。
「お前だろ。」

仕事が終わった。
明日を生きるために、今日を殺してきた。

形状記憶の愛想笑い顔を閉じていると、喜怒哀楽をどこかに忘れて来たことに気がついた。
警視庁の落とし物検索で探してみた。
今日の落とし物にはないようだった。
埒があかないので、警視庁に電話をして聞いてみた。

「もしもし、いつかは分からないのですが、喜怒哀楽届いてませんか?」
警察の担当の人は言う。
「どちら様ですか?お名前いいですか?」
そこで私は気がついた。
そうだ、私は、存在しなかったんだ。
私は、月曜日だった。

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