検診結果
会社の定期健診の結果が返ってきた。そしてそれを、主治医のところに持っていった。
尿酸値が高くて。定期的に通院している。行きつけの医院の、主治医は、私よりもひとつ年上である。
年が近いこともあって。昔から、仲が良い。
診察しているのか、雑談しているのか、分からないときが、よくある。
主治医は、健診結果の数値に目をやった。
定期健診では、薬を飲んでいる効果もあり、尿酸値は、平常値である。
だが、主治医が目を留めたのは、腹囲と体重とBMIである。
そして、言われた。
ちょっと痩せないと、肺炎になってしまったら、重症化のリスクが高くなると思うよ。どうする?
と。
まあ、運動でもしますよ。少し、本気で。
すると、主治医は、良いことを教えてあげると言って、自分の経験談で、このご時世、飲む機会が減り、お酒を飲まなくなって痩せたことを教えてくれた。
主治医曰く、今まで、色んな人に運動しろと言ってきたけれど、このご時世で、まる一年半以上、ピタリとお酒を飲まなくなった。すると、それだけで、体重も3キロ痩せて、腹回りも、すごく引っ込んだ。健康的に痩せた。ビックリしたんだ。
だから、お酒を控える、というよりも、一度、やめてみることをお勧めする。
そう、言うのだ。
私は、即座に会話を続けた。
いやいや。先生。それは、出来ない相談ですよ。なぜならば、あの、ビールサーバーが、家に届いたんです。それも、自ら申し込んだんじゃなくて、長男が、誕生日プレゼントに、申し込んでくれたんですよ。
主自治は、笑って、話に乗ってきた。
あの、泡奉行が?
そうなんです。あの、泡奉行ですよ。
なんと、親孝行な息子だね。
いやあ。思いもよらなくて。ビックリです。
で、美味しいの?
ええ。極上です。
ほう。
昔、缶に乗っけるタイプの、サーバー機を手に入れたことがある。なかなか、あれも、良かったよ。
そうですよね。あれも、良かったですよね。
でもね、泡奉行は、2週間に一度、1リットル樽が二つ贈られてくるんですが、この鮮度が、また、売りなんです。
賞味期限が、なんと、2週間。工場直送で。味わいは、まさに、工場の樽出しビールに引けを取りません。
素晴らしいです。
心の中の、リトルkojuroが、笑って、つぶやいた。
コジ、麒麟の営業マン、できるよ。
主治医は、そこまで聞いて、腕組みして、唸った。
そりゃあさあ、お酒は、止められないな。当分。
じゃあ、運動するしか、手がないね。
はい。仰るとおりで。
悪代官と越後屋のように、狭い診察室で、二人で顔を見合わせて、高笑いをした。
たまたま、その日は、家内が車でクリニックまで送ってきてくれていて。
車に帰ると、家内が、言った。
今日の診察、長かったね。
それと、二人で、何を笑ってたの?ここまで聞こえてきたよ。
相済まぬ。
事情を説明すると、家内は、笑った。
診察してもらってんだか、雑談してんだか、あなた達は、分からないわね。
こうして、泡奉行談義は、運動するということで、決着がついた。
心の中の、リトルkojuroが、最後に、つぶやいた。
笑止。
きっと、運動なんて、コジは、しない。