外国人価格は必要なのか?
はじめに
姫路城の入城料に外国人価格を設けるかどうかで議論が起こっています。外国人価格は通常の入城料の4倍を想定しているようです。これについて、外国人差別だという声であったり、現状を鑑みれば至極真っ当という声であったりと様々な意見があります。今回は外国人価格導入の是非について書いていきたいと思います。
観光公害は日本だけではない
観光公害、いわゆるオーバーツーリズムと聞くと京都を思い浮かべ、円安で外国人がいっぱい来ている日本の問題のように思われるかもしれません。しかし、オーバーツーリズム問題はコロナが明けた現在、日本だけでなく、世界的な問題になっています。オーバーツーリズム問題とは、観光客が多すぎてそこに住んでいる地元住民の生活に支障を来すだけでなく、景観や自然環境に悪影響を及ぼすことです。つまり、観光地に人が集まり過ぎて観光地が本来の役割を果たせない状態を指します。実はこの問題は日本だけでなく、世界でも問題になっているのです。
ヨーロッパ各国でも問題になっており、先日、ヨーロッパへ行きましたが、僕がヨーロッパにいてた頃に比べて人が格段と増えている印象でしたし、ローマなんてどこも人だらけで歩くのが困難でした。スリに遭わないか前以上に心配になるレベルで人が増えていました。観光を楽しむというより人混みを避けようと有名スポットを避けることさえも考えてしまうほどです。
観光スポットや観光で人気の国はどこもオーバーツーリズムで頭を抱えていると言っても過言ではありません。オーバーツーリズム問題を解決しようと様々な取り組みがなされています。
イタリアのヴェネツィアでは長年オーバーツーリズム問題に悩まされており、今年の4月から日帰り観光客を対象に訪問税を課すようになりました。訪問税の導入目的はヴェネツィアの景観維持の費用を賄うためと、観光客数の抑制です。訪問税は5ユーロ(850円:170円/ユーロ)で、加熱していたヴェネツィア観光が以前のように落ち着いた姿を取り戻すことが証明されれば、他国や他の都市も真似る可能性はあると言えます。これが世界規模で起これば、政治学的に見ても面白い事例になるでしょう。ヴェネツィアの結果が世界を動かすことになるでしょう。産経新聞の記事にあるように現時点ではあまり効果がないようなので、値段を上げて再検証をすることになりそうです。抑制効果のある値段がこれらの検証で明らかになるでしょうし、物価からの比率で今後割り出せるようになるかもしれません。いずれにせよ、効果がどう出るか気になります。
今回、話題になっている外国人価格や観光客価格はオーバーツーリズム問題が表面化する前から取り入れられているもので、世界的に見ても珍しいことではありません。ルーブル美術館は26歳以下でEU圏在住であれば無料で入れますが、通常は22ユーロ(3740円)かかります。ルーブル美術館はもちろんヴェルサイユ宮殿も同様です。世界で一番入場料が高いと言われるヨルダンのペトラ遺跡は僕が行った当時で1万円ほどでしたが、現地の人であれば200円ほどで入れます。姫路城の4倍が可愛いレベルの価格差です。外国人価格や観光客価格を設定している理由はオーバーツーリズムの抑制だけでなく、地元の人や自国の人に文化や歴史を理解してもらうためにこういった価格設定にしていることがあります。姫路城も同様であると考えれば、ある程度納得できるはずです。
日本の「綺麗」を守るためにも外国人価格は必要
先に断っておくのですが、これから述べることは外国人差別でもなんでもなく、外国で見たことをそのまま書いているだけです。外国へ行くといつも思うことは日本は綺麗すぎる。あのヨーロッパでさえも、日本には遠く及びません。イタリアやドイツ、フランスなどの名だたる観光大国で街並みは綺麗ですが、街中にゴミが落ちていたり、排せつ物がその辺に転がっていたりして非常に汚いです。しかし、現地の人はそこまで気にしていない様子です。
日本と外国の「綺麗」に対する考え方の違いが如実に表れていると言えます。日本に来た外国人が日本は街が綺麗とよく言っているのがよくわかります。母国では考えられないぐらいゴミが落ちていないからです。このことから日本の綺麗さは外国の綺麗さとは遠くかけ離れていることがわかります。ここで言いたいのは、日本の綺麗さを守るために外国人に多少の負担は必要であるという立場なのです。外国人からお金を巻き上げればいいという卑しい考えではなく、日本という国の綺麗さは一種の観光資源です。それを守るためにはお金がかかることを外国人に示す必要がありますと思います。
外国人のマナーが悪いと言われて久しいですが、彼らからしたらそれが当たり前なのです。しかし、日本という国でそれがマナー違反なだけでマナーを破る気で観光しているつもりも彼らにもないはずです。郷に入っては郷に従えと言うように日本の綺麗さを守るためには自国のルールでの維持は困難です。そのための協力費として外国人価格を設定すべきだと考えています。ヨーロッパでは高い税金が課されていますが、その反面、道にタバコやごみを平気で捨てます。彼らの言い分では、高い税金を納めていて、その税金で街の清掃は行われている。だから、道にゴミを捨てる権利があるというのです。日本でこんなことをしている人は白い目で見られますが、ヨーロッパでは珍しくない光景です。
外国へ行くといつも日本が異常なまでに綺麗なことに驚かされます。ヨーロッパに綺麗なイメージを持たれているかもしれませんが、思っている以上に汚いですし、臭いです。日本では臭いもゴミも気になることはほとんどありません。それぐらい日本は綺麗な国なのです。その綺麗さを守るためにも外国の方に負担していただきたいだけなのです。日本の綺麗さは無償ではなく、お金がかかることをしっかり理解する必要があります。日本では考えらないことが外国では普通に起こっています。観光資源を守るための工夫は必要です。
最後に
外国人価格の設定を外国人差別として反対するのは筋違いと思います。現に世界にある観光客価格や外国人価格は差別意識に基づいて設定されているのでしょうか?そんなはずはありませんが、日本の問題になるとそういうおかしなことを言う人が少なからずいます。観光資源を守るために外国の人のためのものではなく、まずはその国のためのものです。その次に外国人です。ルーブル美術館やヴェルサイユ宮殿はそういった考えに基づき、あのような価格設定になっています。日本の観光資源は日本の文化的な遺産です。それを守るのが日本人であり、外国人ではありません。外国人はあくまでもお客さんであり、守る主体ではありません。外国人の方にも協力していただく必要はもちろんあります。お客さんから集めたお金で維持修繕をするのが我々の務めです。日本での、外国人価格導入についてはハードルが高いでしょうが、ヨーロッパのように定価を高額にし、身分証などの提示で大幅な割引を受けられるような制度にすると実運用上、楽になるかもしれません。