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近づいたはずなのに見えない!?

2歳児、保育園でのエピソード。

この日の散歩先は、長ーい階段を登った丘。

子ども達は、丘から見える景色が大好きで、週2回は行くお気に入りの散歩先だ。

「あ!かんらんしゃ!」「ぼくのお家もみえる〜!」なんて言いながら子ども達は景色を楽しんでいる。

この丘からは、眼下に広がる家々の奥に、巨大な背景画のような感じで、どぉーん!と富士山がたたずんでいるのだ。

だけど、富士山が大きすぎるのか、遠すぎるのか、子ども達の視界にはいつも入っていない。

子ども達にとっては、一富士二鷹三茄子よりも〝かんらんしゃ〟とか〝ぼくの家〟とか〝いつもお母さんと行くスーパー〟の方がよっぽどテンションが上がるのだろう。

子ども達の発見に共感しつつ〝今日の富士山どんな感じかな〜〟と、大人の楽しみを保育スタッフと共有するのが、いつもの流れだった。

しかし、この日は、子ども達の目に映る景色がいつもと違っていた。長ーい階段を小さな足で5分くらいかけて登り、丘の上に到着した子ども達。

『うっわ〜!大きいお山が見えるぅ〜!」

いつもは視界に入っていない富士山が、子ども達の目に映ったのだ。

富士山の山頂に雪が積もっていたから、いつもと違うコントラストで、子ども達の目に映り込んだのだろう。

富士山の迫力は、子ども達にも通じたようで、ジャンプしたり、戦隊ポーズを決めたり、帽子を投げ捨てたりして、全身で富士山を見た喜びを表現していた。

『よーし!富士山の近くに行ってみよー!』

ある男の子が、そう言うと、他の子ども達も便乗して走り出した。

〝あの富士山をもっと近くで見てみたい!〟という強い想いから、丘の階段を勢いよく駆けおりる子ども達。

だけど、丘を降りたら富士山は見えなかった。2歳児の身長では、木々や家々が、富士山を隠してしまうのだ。

〝富士山に近づいたはずなのに、見えない!〟

『あれぇ〜???』
『お山、見えなくなっちゃった』
『なんでぇ〜???』

子ども達同士、顔を見合わせ、この不思議なカラクリを紐解こうと、角度を変えて見てみたり、『おーい!』って叫んでみたり、だけど富士山は全然見えない。

『よしっ!戻ろう!』

あの男の子がそう言うと、他の子ども達もせっせこせっせこ階段を登る。

そして、また飛び跳ねた。

『やったぁ!みえたー!』
『大きいお山ぁぁぁぁぁ!』
『雪つもってるぅぅぅ!』

自分たちで試行錯誤して見つけた、1番の絶景スポット。

私たち保育スタッフは、何も言わず、手も貸さず、少し離れて、ただ見守っているだけだったけど、その眼差しや存在が〝安全基地〟となり、子ども自らが〝やってみたいをやってみる〟ことに繋がった。


◎いつもと違う気づき。

◎もっと近くで見てみたい!という好奇心。

◎どうやったら富士山が見えるか試行錯誤する探究心。

◎さっきの場所に戻ろう!という切り替え。

◎仲間と、同じ景色や気持ちを共有する喜び。


同じ散歩先でも、色々な条件が合わさって、いつもと違う発見や遊びに繋がるのが、おもしろいなぁと思った!

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