映像美にうっとり『陰陽師0』
4月19日より、映画『陰陽師0』が公開されている。
『陰陽師』の原作者である夢枕獏が全面協力、監督と脚本を「アンフェア」シリーズの佐藤嗣麻子が務める。生誕1100周年を迎え、完全オリジナルストーリーで安倍晴明が蘇る。
今回、舞台となるのは陰陽師の学校「陰陽寮」。平安京は身分が激しく、貴族のような権力を持つには官僚になるしかない。寮でも「学生」「博士」「得業生」「蔵人所」などと位が分けられ、出世が目指されていた。そんななか地位に興味がなく、変わり者の学生として知られていたのが、若き日の安倍晴明(山崎賢人)である。ある日晴明は、貴族の源博雅(染谷将太)と出会い、依頼を受ける。その内容は、皇族の徽子女王(奈緒)を襲う怪異を解決してほしいというものだった。
一流の陰陽師とは「呪」を使いこなす者だとされていた。呪術とはまた異なるもので、言葉によって人を誘導し、感覚を使って補強するーー言い換えれば暗示や催眠術のようなもの。これは、お手玉が鼠に見えた博雅のように“真実”を見る者は大変かかりやすい。だが、常に“事実”(この場合はお手玉)を見ている晴明にとっては、博雅の“真実”は人の数ほどあるただの思い込みでしかないのだ。
本映画では、この思い込みが物語を転がしていく。『陰陽師』といえば、鬼や霊のなど妖をしずめていく物語という印象を持つ人が多いだろう。徽子女王を襲う怪異の解決が入口であったが、本編は徐々に出世をとりまく人間による陰謀へと移っていく(もちろん、妖要素も!)。探偵モノのようなミステリー風味を感じつつ、晴明と博雅の好対照コンビによる愉しい掛け合いが堪能できる場面でもある。
また、映像美についても触れておきたい。大覚寺、仁和寺などで撮影された場面が次々と映し出されていくハイクオリティVFX。平安京の景観、建物の優美さなど、世界観の演出に圧倒される。とくに、博雅と徽子女王が互いの想いをぶつけ合うシーンは、息をのむほどの美しさだ。軽く吹雪く雪景色から、春を想起させる桜の花が咲く。どんどん草が生い茂り、つるを伸ばし、あたり一面に色鮮やかな花が咲き乱れる。満たされない徽子女王の心が、博雅の本心を聞いて幸せで溢れかえった瞬間だった。平安京の雅びな空間の再現はもちろん、登場人物の心情にリンクする映像の演出には心を奪われずにはいられない。
『陰陽師0』には、豪華な俳優陣が顔をそろえる。どこか人間離れしたものを感じさせる山崎賢人、博雅のピュアな感情を体現する染谷将太、温かみのある優しさを放つ奈緒。さらに、安藤政信、村上虹郎、板垣李光人、 國村隼、北村一輝、小林薫など、実力派俳優がこの艶やかで妖しい世界観を色濃くしているのだ。最強の“呪術エンターテイメント”、すでに2回目を観に行きたくなっている。
陰陽師0
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