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【取材記事】SDGsとは日本古来の暮らしに根付く価値観である。伝統文化から考えるサステナブルな社会の実現

観光人力車や着物レンタル、日本文化体験など、失われつつある日本の文化コンテンツを35年の長きに渡って提供し続けている株式会社時代屋 。このたびSDGsの取り組みとして、元祖エコバッグと名高い「風呂敷」を使った「風呂敷体験」サービスを開始しました。

時代屋では、SDGs 17ゴールのうち4ゴールを「時代屋SDGs」として掲げ、持続可能な社会づくりにも貢献しています。しかし、その取り組みの裏側には「日本文化」と「SDGs」との密接な関係があるのだとか。そこで今回は、株式会社時代屋・代表取締役の藤原英則さんに、日本文化とSDGsの深い関わりや時代屋が考えるSDGsについてお話を伺いました。

お話を伺った方

株式会社時代屋 代表取締役 藤原 英則(ふじわら ひでのり)様
1955年生まれ、神戸市出身。 同志社大学経済学部卒。在学中に人力車サークルを創会。 以後、今日まで45年にわたり人力車に関わる。 1979年、大学卒業後に東芝に入社し長年企画業務に従事。 1987年、人力車の時代屋を創業。 定年まで東芝に勤めながら時代屋を育成し、事業化。 定年後に時代屋の代表に就任。 インバウンドを見据え着物レンタル、日本文化体験など多角化を図る。 副業の達人、人力車研究家、浅草に人力車を復活させた男。

インタビュアー

株式会社bajji 代表取締役CEO 小林 慎和(こばやし のりたか) 
ビジネス・ブレークスルー大学 教授 大阪大学大学院卒。野村総合研究所で9年間経営コンサルタントとして従事、その間に海外進出 支援を数多く経験。2011年グリー株式会社に入社。同社にて2年間、海外展開やM&Aを担当。 海外拠点の立ち上げに関わり、シンガポールへの赴任も経験。その後、シンガポールにて起業。 以来国内外で複数の企業を創業しイグジットも2回経験。株式会社bajjiを2019年に創業し現在に至る。Google play ベストオブ2020大賞受賞。著書に『人類2.0アフターコロナの生き方』など。

■日本文化に根付くサステナビリティの精神

1987年創業の時代屋。25年前に浅草に店舗を構えて以降、日本文化・観光コンテンツの拡充を担っています。

小林:今回SDGsへの取り組みとして「風呂敷体験」サービスを開始されたそうですね。会社としても「時代屋SDGs」という4つのゴールを掲げられていて、以前からSDGsをキーワードにした取り組みを積極的に行っていたのでしょうか?

藤原さん:我々の事業は人力車や着物レンタル、日本文化体験といった日本文化にまつわるサービスを提供しているのですが、そもそも日本の伝統文化そのものがSDGsにかなっていると考えています。いわゆる日本の伝統的な価値観—物を大切にする、人を敬う—は世界に通じる価値観でもあり、日本文化の考え方そのものが結果的にSDGsにつながったといえるのではないでしょうか。

時代屋が掲げる「時代屋SDGs・4ゴール」

小林:なるほど。確かにそうですね。

藤原さん:SDGsが今まさに世界で通用する価値観になっている中で、SDGsと親和性が高いのは日本の伝統的価値観だということに思い至ったんです。日本文化として当たり前にあった考え方や風習を最近になって、「SDGs」という言い方をするようになったという経緯があります。

小林:おっしゃる通り、日本文化とSDGsとの親和性は高いですよね。

藤原さん:はい。具体的に言うと、人力車も究極のエコロジーですし、日本の伝統的価値観には自然との調和があります。さらに日本の伝統的な生活様式には再生・再利用という考え方もあり、これらのエコロジー・自然との調和・再生再利用はSDGsの考え方そのものです。

女性車夫も積極的に採用し、男女分け隔てなく学びと成長の機会を与えている。
新車は原則導入せず、古くなった人力車は修理・再生し、再利用している。

小林:まさしくそうですね。

藤原さん:茶道の精神を表す「和敬清寂(わけいせいじゃく)」という言葉も、他者を尊敬し、敬う心を大切にするという姿勢を示すもので、SDGsの精神とまったく同じだと思います。そう考えると、日本は長い文化の中でSDGs精神を持っていたんだなと。しかし、グローバリゼーションの波がおとずれ、日本人が本来もつ国民性というのがどんどん変化いったわけですね、良くも悪くも。そういった中でSDGsというものが、今後は民族・宗教を超えた共通の価値観に置き換わっていくのかなと思います。

■エコな暮らしに貢献する「風呂敷」の魅力を再発見

「風呂敷体験」では、風呂敷を使ったラッピング術やバッグの作り方を学べます。

小林:今回新しく「風呂敷体験」を始められたということですが、どんな経緯があったのでしょうか?

藤原さん:風呂敷自体は、馴染みがあるようで、実はほとんどの日本人は使ってないんですよね。だから知っているようで知らない、使っているようで実はまったく使っていないのが風呂敷なんです。日本人にとって馴染みがあるようでない、摩訶不思議な存在なんですけど、SDGsという切り口から見た場合に、風呂敷ほど持続可能なものはないわけです。日本の風呂敷文化いうものを外国の方にも知ってもらい、また日本人にも知ってもらうことで、身近なところからSDGsを始めるという一つのきっかけにできるんじゃないかなというふうに考えた次第です。

小林:色んな形の美しい結び方、包み方のバリエーションがあると思うんですが、企業向けにチームビルディングの一環として、風呂敷を体験するっていうのは、今の時代にすごくあっていいんじゃないかなと思ったんですよね。

お酒を贈るときも風呂敷に包めば、粋でかっこいい演出に。

藤原さん:そうですよね。風呂敷は包むだけではなく、入れ物として物を持ち運んだり、敷物として使えたりと、とても多機能なアイテムです。そういう意味では、この風呂敷一つでいろんな使い方ができる風呂敷七変化を楽しめます。今の生活の中に風呂敷が一つあれば、色んな場面で活躍できますよね。包装紙やポリバックもいらなくなりますし。

小林:確かにスーパーに行ったときに、エコバックとしても使えるわけですよね?

藤原さん:そうです。エコバッグというのを最近よく目にしますけど、皆さん、形の違うエコバックをたくさん持ってらっしゃいますよね。でも風呂敷一つでもいいんじゃないかなと。もちろんその方の好みもありますけど。

小林:確かにそうですね。ちなみに結び方のバリエーションは、ざっくり何種類ぐらいあるのでしょう?

藤原さん:全部で30種類ぐらいあると言われていますが、その中でよく使えそうなのは10種類ぐらいですかね。色んな柄やデザインがありますから、自分の個性も発揮できます。風呂敷はものを包むだけでなく思いも包むものなので、こちらの気持ちも伝えられるメッセンジャーツールでもあるんです。

■日本文化とSDGsの観点からあらたな日本の魅力を発信

1枚の生地から作る着物は、解いて子ども用に仕立て直したり、小物にリメイクしたり、実はとてもエシカルなアイテム。

小林:今回藤原さんのお話しを伺っていて、SDGsが掲げる17の目標とは、目標ではなく価値観なのだと気づきました。SDGsは目標として向かっていくものだと勘違いしていたのですが、これは広まるべき価値観ですね。

藤原さん:そうなんです。今は世界的に受け入れられる価値観にもなっていますよね。

小林: 確かに国や宗教を超えて目標となる価値観ですね。

藤原さん: はい。我々も日本文化体験サービスを提供していて思うのは、民族や宗教を超えて伝わる価値観は必要だということです。たとえば、イスラム教やキリスト教といった異なる宗教をもつ方々に茶道の精神を伝えると、みんな納得してくれるわけです。つまり、それぞれの違いを超えて共感できる価値観があるということですよね。そういう意味で、やはりSDGsイコール日本の伝統的価値観として広げていける可能性を感じています。

小林:なるほど。

藤原さん:ただSDGsに関しては、政府が言っているからというのでは全然駄目なんですね。みんなが持続可能な社会に向けて、共通認識をもって、共に取り組むことが必要です。長期的な観点から持続可能な社会をつくるためにも、いずれ大きな転換が必要になってくると思います。今日の便利さや豊かさよりも長期的な持続可能を目指そうねという共通概念が必要ですが、それがなかなか難しいですよね。

小林:確かにおっしゃる通りですね。ヨーロッパの場合はテクノロジーの進化をゆるめてでも(地球環境を)守るといった価値観もありますよね。一方、アメリカの場合は合理主義なので、(政策を)とにかく早く進めるという風潮があったり。そういう意味で、日本も伝統文化を継承して、暮らしの原点回帰というものが必要なのかもしれませんね。

藤原さん:はい。明日、明後日の持続可能のために骨身を削ることもかっこいいと思える文化になったらいいですよね。そのためには生活に余裕がないと難しい面もありますが、今後のためにも思い切って一段駆け上がる必要があると思います。

小林:まさにその通りですね。では最後になりますが、今後あらたに取り組みたいことなど、時代屋の展望をお聞かせください。

藤原さん:現在SDGsという言葉が世界中で広く認識されていますから、日本文化とSDGsという観点から、多くの方々に日本文化の魅力を伝えていきたいと考えております。

小林:今回お話しを伺って、日本文化とSDGsの共通性を感じました。時代屋さんは弊社からも近いですし、ぜひ風呂敷体験に伺いたいと思います。本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。


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