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石段を登る(600文字)
3月の晴れの日、私は石段を登っていた。
『64、65、66・・・』
2つ目の踊り場で一息ついた。残りは3分の1ぐらいだろうか。
ざっと100段はありそうなこの石段。
下りはあっという間に降りれたけど、登りはやはりツライ。
ここ数日で急に暖かくなりちょっと散歩にでも行こうかと家を出たけれど。
はしゃいで遠出をしすぎたかもしれないな。
手すりに手をつき、運動不足のからだをあずけた時、強い風が吹いてきた。
汗ばんだ体に気持ちいい。
見上げていると、上からフワフワと赤いものが飛んできた。
どうやら帽子のようだ。
私がつかまないとどこかずっと下まで落ちていきそうな勢いだ。
幸いココは踊り場、飛びついても体勢は保てるだろう。
『ナイスキャッチ』
帽子をつかむと同時に、石段の一番上から女性の声が聞こえた。
この帽子の持ち主のようだけど、ここからでは逆光でよくわからない。
『今そっちに持っていきますねー』
そう言って、のこりの石段を数えながら上まで登った。
『98,99,100っと』
『この階段99段もあるからどうしようかと思ってたんです』
『え?100段でしょ?』
私はさっき発見した答えを彼女に伝えた。
『前に数えて登った時、99段しかなかったよ』
どうやら彼女も同じ事をしてたようだ。
どちらが正解かどうでも良くなり、急に親近感がわいて笑ってしまった。
『確かに数えたくなりますね』
どうやら彼女にもそれが伝わったようで、恥ずかしそうに笑い出した。