クソッタレだったアンタに捧ぐ。
今まで触れた読み物の中で、最も好きだと言えるものは、チャールズ・ブコウスキーの「町でいちばんの美女」というたった11ページの短編だ。こんなに美しい文章を他に知らないし、僕が短い読み物に拘っている理由と言っても良い。
ブコウスキーの作品は酒、女、ギャンブルで日銭のない荒れた生活の話ばかりで、文才が無ければ本当にただの薄汚いクソジジイである。ここでは敬意と愛を込めて彼をクソジジイ、クソッタレジジイと呼ばせていただきたい。彼は自身の作品内で人間としての醜悪さを一切隠さない。抱いた女性達を議事録にしたような作品があるほどに隠さない。
先に挙げた女性達の話、酒場で喧嘩した話、賭けに負けてむしゃくしゃした話など、大半の題材が下品であるにも関わらず、作品からは哀愁を漂わせる。
娼婦と恋をして、連日散々致しまくった話の後に、砂浜でその娘を胸に抱いて1時間ほど眠った事を“なんとなくこの方が、軀を結ぶより良かった。”と綴りプラトニックを嗅ぐわせるのである。ズルい爺さんである。
急になんでブコウスキーを取り上げようと思ったのかというと、インスタの恋愛アカウントでこんな言葉を見たのがきっかけだ。
“女は変態を隠す為に純情を装い、男は純情を隠す為に変態を装う”
この言葉から連想したのがこの爺さんである。この法則に則るまでもなく、このズルい爺さんはスケベな話題ばかり取り上げておきながらめちゃくちゃにロマンチストであろう。