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糀・麹の可能性

麹カビは、古くから伝統食品産業を支えてきました。また、極めて多様な分野で産業的価値を発揮しています。近年はバイオテクノロジー分野でも注目され、機能性分子の生産や環境負荷の低減につなげる研究が進展しています。その高い酵素生産能力と安全性、および多様な二次代謝産物生産能は、今後も新たな産業利用の可能性を広げ続けると考えられます。
1)酵素製剤 多様な酵素を生産します。食品加工、洗剤添加物、飼料添加物、医薬品原料など、幅広い分野に利用。特に食品用酵素として重宝されている。
2)醸造・食品加工 醸造以外にも、麹由来の酵素を用いて各種食品の風味改良、テクスチャー改善、栄養価向上なども行われている。またフリーズドライ麹粉末などを用いた発酵調味料の開発や、ベーカリー・菓子製造の効率化、乳製品の風味改善など、多方面で活用が進んでいる。
3)有機酸発酵 クエン酸は食品添加物、医薬・化粧品原料、化学工業用原料として需要が高く、A. nigerによる発酵生産が世界的に広く普及している。他の有用有機酸(フマル酸、イタコン酸など)も麹カビ類が生産し得るため、バイオ由来原料のサステナブル化や石油由来化学品の代替としての期待も高まっている。
4)抗生物質生産 麹カビ属の中には、かつてペニシリン生産に関わるPenicillium属と同様に、麹カビ類も新たな抗菌物質や生理活性物質の供給源として研究が続けられている。
5)その他 飼料・肥料分野: 発酵副産物を家畜飼料に添加し、消化吸収を促進する動物飼料改良材として利用。
医薬・健康食品分野: 酵素や発酵物質は、機能性食品素材やサプリメント、消化酵素剤などに用いる。
バイオテクノロジー・バイオリファイナリー: 微生物由来の酵素や発酵プロセスを利用したバイオ燃料、生分解性プラスチック原料の生産など、環境負荷軽減を目指す研究領域にも麹カビが関与。

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