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「わたしの部屋」暮らしレシピ #7 お抹茶の時間

皆さまこんにちは

今日は家で飲むお抹茶について書こうと思います。

僕の実家は佐賀県唐津市という所で、焼物で有名な町で生まれ育ちました。

父方は焼物を扱う店を唐津市内にて経営しており、主に地元の唐津焼と有田焼の専門店です。

母方は唐津焼を制作する窯元でした。


実家では毎日祖母がお抹茶を点て、また母方の窯元でもお抹茶を頂くことが多かったと思います。

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いつもお茶を飲んでいた場所、三玄窯。




僕の実家だけでなく、やはり焼物で有名な産地ですので、窯元でも普通の家でもお抹茶は身近にあるものでした。

よく子供の頃、祖父の窯場へ遊びに行く事が多かったのですが、決まってお昼ご飯が終わった後と、夕方に一服ずつ母が点ててくれていました。

作家としては自身の作ったお茶碗がどの様に変化するかを毎日試し使いしていたのだと思います。

従業員さん達もみんな一緒にお抹茶を飲んで、ここがこうだったったらいいよね、とか、やはり作品のことについて使いながら話し合っていました。


僕は子供だったので、その時にお茶碗の持ち方や、頂き方などは祖父のお弟子さん達から習ったと思います。

お茶碗は高く持ったらダメだよ、とか、片手で持ったらダメだよ、とか、基本的な事でした。

それもそのはずで、今思えば僕が使っていたのは400年前の唐津のお茶碗でお弟子さん達がヒヤヒヤしたのはなんとなく伝わっていて、子供ながらに、壊したら怒られるんだろうなと感じていたのです。

たしか、瀬戸唐津というお茶碗でした。


唐津ではお菓子が鉢に盛られていて、一人一人取って食べて、お抹茶を飲むという、田舎的な、ほんわかした時間でした。

なんの気負いもなく、身内だけで過ごすお茶の時間です。

特別な事は何もありませんでした。


大人になって、お茶会などにもお呼ばれして行く機会も増えて思うのは、お茶って都会的なものなんだなという事でした。

一種の空間芸術の様なもので、玄関を入ってから全てが、招いた人をもてなす装置。亭主の趣味志向を存分に働かせた美的空間を共有する場です。

田舎のそれとは180度違います。

茶室のある庭に入った瞬間、置いてある石が違う、木材が違う、ふすま、天井、何から何まで洗練されています。

そんな空間で、ピーンと張り詰めた空気の中お茶を頂くわけですから、五感を通じて贅沢な気持ちになっていきます。

非日常を体感するんですね。

お茶会に呼ばれる度にその非日常の空間を楽しんで、素晴らしい道具でお抹茶も頂けるという事でいつもワクワクしてしまいます。


田舎のお茶と、都会のお茶、ですが
見た目が180度違っても、どちらのお茶も心地良い事だけは変わりません。

今年はコロナ渦にあり、だんだんとお茶会が減ってきているようです。でもそんな時だからこそ、都会でもこの心地よいリラックスできる時間を作れないかと僕なりに思っています。

今日は、自分が大人になって、親や祖父達は田舎でお茶の時間を過ごしていたけれど、令和になって、都会に住んでいる自分にとってお茶の時間をどう過ごしているかを、使っている道具を交えて書いていこうと思います。

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東京に住んでいる大多数の人がマンション住まいで、椅子とテーブルです。

使える空間も限られています。

そこで、自宅でお茶を楽しむ時、「お盆」「お茶碗」「お菓子皿」という3つの道具を中心にお茶の時間を考えたいと思います。

この3つの道具があれば最低限自宅でお抹茶を楽しめます。

そして自分もこれ以上自宅のマンションでお抹茶を飲む時、道具の種類は増やしていません。

この種類の取り合わせでとても楽しめるからです。


これから順に、ご紹介していこうと思います。


「お盆」について

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お茶碗とお菓子皿を乗せる、いわば道具のステージです。

田舎の、どの家にもある様に思われるお盆ですが、ちょっとした木地の違いや縁に立ち上がりの差異があり、都会に集まってくるお盆は魅力的なものが多いです。

お茶に使うお盆については、やはりシンプルなものが良いですね。

上にお茶碗とお菓子皿、お抹茶の緑、お菓子の色まで乗ってくるわけですから、なるべくお盆の主張は避けたいものです。

変な直しや、装飾の着いたものは盆上でお抹茶を点てるのに向きません。

写真の様な、割と普通のお盆がコーディネートした時に名脇役として良い働きをしてくれます。

いずれも、明治から昭和初期のお盆を今は使っています。

フラットで、縁の立ち上がりが低いものです。



「お茶碗」について。

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僕が普段使っているものは茶色が多いですね。

昔からお茶碗といえば井戸茶碗、とされてきた様に、お抹茶の緑が映える色がこの色です。

手前は福岡糸島で作陶されている内村慎太郎さんの古井戸茶碗。

奥は江戸時代の美濃の半筒の茶碗です。
昔は向付に使われていたのかも知れませんが、やや小ぶりで現代の空間にはマッチします。

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やはり、土っぽく、茶色いものは秋冬で、
青磁や、白磁は春夏でしょうか。

季節によって、シンプルに変えてみるのもいいですね。


「お菓子皿」

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菓子皿、と言っても僕が普段使っているのは手塩皿、豆皿といわれる直径10cm以下の小さなお皿です。

菓子皿がグッと小さく、引き締まった作品であれば盆上に緊張感が漂います。

小さなものほど拘って真剣に選んだ方がいいです。

食卓でのカトラリーでもそうですね。小物がピリっと作りの良いものだと全体が引き締まります。

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扇型の豆皿は古伊万里の白磁です。
四角の方は産地不詳ですが、恐らく民藝系の産地でしょう。

変形型を選ぶのも、菓子皿選びの楽しみの一つです。

お茶碗は丸い形が多いため、菓子皿で面白いデザインを選んでコーディネートする事ができます。

お茶碗は変形だと使いづらいですからね。。



今日、菓子皿に乗せたのはたねやさんの迎春干菓子です。

とても可愛らしく、小さくもデザインが細いです。

季節柄、縁起の良いモチーフばかりで嬉しくなります。

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こちらも同じくたねやさんの栗子みち。

使っている菓子皿は塗りのもので多治見の木工作家のもの。

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刷毛の跡をわざと残す様な感じで、一点もの感があり面白いです。

内村慎太郎さんのお茶碗の様に、やや大振りのお茶碗に合います。

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より、お茶会っぽく演出したいなら、茶杓と棗もあっても良いと思います。が、人を招く時に出すぐらいですね。

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マンションでお抹茶を飲みたい時に使う道具、という事でご紹介しましたが、

基準をどれか一つ決める事が大事だと思います。


○このお茶碗を基準にするならお盆はこれ、菓子皿はこれ。

○このお盆を基準にするならお茶碗はこれ、菓子皿はこれ。

○この菓子皿を基準にするならお茶碗はこれ、お盆はこれ。


そして、これらの道具を買おうとした場合、コツみたいなものがあります。

この「お盆」「お茶碗」「お菓子皿」の3つを同時に意識することです。

焼物好きな方が陥りやすいのですが、これを手に入れるぞ!これを探しています!と意気込んでる人にはなかなか理想の道具が揃わないものなのです。

例えば茶碗だけを追い求めている人は他のお盆やお菓子皿が目の前を通り過ぎても気づかないんです。


肩の力を抜いて、ぼんやり意識しておくぐらいが、自分の好みのものに出会った時、柔軟に動けます。

なんとなく見てみて、この3つの道具に含まれれば、あとは直感で気にいるかどうかです。

暮らしを豊かにするには物の買い方への意識も重要になってきますね。

楽しむということは簡単そうでいて難しい事です。

が、その過程でワクワクしたり、調べたり、人と出会ったりするんですよね。

冒頭に田舎と都会のお茶の時間を挙げましたが、

田舎の様に肩の力を抜いて、都会のお茶のように洗練された道具組を自宅で楽しむためにどちらも自分にとっては大事な事です。

マンションの一室で、両方のいいとこ取りができたら最高です。


これからもいろんな場所にいって、時代にあったお茶の時間を楽しく考えていきたいと思っています。

                               おわり

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LAPIN ART 坂本 大
現代のうつわと古美術骨董を取り扱うLAPIN ART OFFICE ディレクター。本プロジェクトを通して、自分の大切な物との向き合い方を、自らが描く理想の暮らし方とギャラリストとしての知見を掛け合わせながら提案する。
⬛︎ LAPIN ART ウェブサイト

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