私たち、腹が一緒なんです。
とある友人の話をしよう。
きっかけは、大学1年生の授業だった。
2020年下半期、
絶賛コロナ禍でほとんどがオンライン授業の中、
唯一対面だった授業。
そこで4週間だけ、
たまたま同じグループになった女の子。
第一印象は、あ、なんか、この子好き。
その子のまとう雰囲気は、柔らかくて、可愛くて、
それでいて、凛とした姿勢で自分の考えをはっきり口にする、
素敵だと思った。
授業が終わる日、ごはんに行く約束をした。
学部も出身も、全く違う私たちだが、
そこから仲良くなるのに、時間はかからなかった。
その子はおいしいお店を沢山知っていて、
越して来たばかりの私に、お気に入りのお店を沢山紹介してくれた。
そのお店が、まあセンスのいいこと。
最初は、半年に一度のペースで。
気づけば、今は、月に一度のペースになっている。
長期休みに、毎回旅行にも行くようになった。
大学では全く会わないのに、
まして、恋愛観や価値観はかなり違うのに、
何故か続いてしまう居心地の良い不思議な関係。
思うに、私たちの関係を繋ぎ止めるものの1つは、腹。
好きな食べ物が被るのはよくある話だが、
彼女とは、その"瞬間"に食べたいものの気分が本当に被る。
無計画大分旅行に飛び出した大学3年春。
その日に食べたいと思った夜ご飯は満場一致で、
回転寿司。大分名物そっちのけ。
続く、夏の広島旅行。
夜ご飯はどこで食べようか、
ホテルで鉄板焼きをUberしようか、
大賛成。
そして、今春の温泉旅行。
豪華な懐石料理のあとの部屋飲みのおつまみは、なににしようか。
せーのっ、
「えいひれ」。
これは、ノンフィクションである。
まあ、なんとも、絶妙なところが被る。
わざわざちょっと離れた物産店まで行き、
無事にえいひれ1パック購入。
もはや、腹一緒じゃね?
お腹交換しても、ばれないんじゃね??
そう言って2人で笑った。
彼女とは、近頃、毎月恒例で、
『美味しいものと美味しいお酒を、値段は放ったらかしで、食す会』
を催しているのだが、
お酒の気分もまた、それはそれは被ること、
大体最後は2人揃って梅酒をロックで呑んでいる。
お酒については、
私は他の界隈では大抵最強だと言われるのだが、
彼女は、私と同等か、下手したら私以上に呑む口だ。
だから、彼女とは、安心していくらでも呑める。
旅先の夜、2人で積み上げたお酒を呑むと、
私は、決まって、彼女への愛を語り始めてしまう。
その一部をちょっと公開。
「美的センスがめっちゃ好き。」
彼女か選ぶもの、好きだというもの、
そのセンスがとても好き。
私の好きな作家さんの1人に、原田マハさんがいるのだが、それを教えてくれたのは彼女だ。
美術なんて訳分からん、失礼ながらそう思っていた以前の私に、アートに精通している彼女は、その楽しさを教えてくれ、最高の作家さんに出会わせてくれた。
「あなたは私のお姉ちゃん。」
どちらかというと、普段相談される側にまわることが多い私だが、彼女には唯一心を預けて相談が出来る。
彼女の方が歳が1つ上ということもあるかもしれないが、
私は彼女の所作や価値観に憧れとリスペクトを抱いていて、彼女から大きな影響を受けていることも、彼女が私にとって、姉たる所以かも。
こんな素敵な出会いが、
大学のわずか一コマの授業であるなんて。
だが、思えば、
人と人との出会いというのは、
全てこんな偶然の産物なのかもしれない。
そして、人は、しばしばそれを『運命』と呼ぶ。
運命を辞書で引いてみると、こんな風に出てきた。
だけど、私は、この『運命』という言葉を、
生前から決まっていて神様が出会わせてくれたもの
ではなく、
今を生きていて、命がある限り、
自らの選択で、自らの元へと運び込むことができる出会い
と解釈してみても面白いんじゃないかと思った。
その方が、自分の人生の手網を自分で握っているように思えて、私はなんか好き。
運命の出会いはきっとそこらにある、
運び入れるかは自分次第、
それもまた人生の機微。
これからも自らの選択次第で、素敵な出会いがきっとある。
今、この瞬間、私のこの文章を追いかけてくれているあなたとの出会いも、1つの素敵な運命の出会い。
さあ、今夏はどこへ行こうか。
きっと、その時の、2人で1つの腹次第だろう。
柚。