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人間だから、弱いし、揺らぐ。〜「ともぐい」を読んで感じたこと〜

直木賞受賞作、河﨑秋子さんの「ともぐい」を読んだ。

「熊文学」とも評される作品で、熊とそれを狩って生きる孤独な人間の姿が、とてもリアルな描写で表現されている。

読後に感じたのは、「人間って、やっぱ弱いよな」ってこと。
そして、「弱くても別にいいんだよな。人間だし。」という、なんだか自分を肯定してあげる気持ちも芽生えた。

主人公の男性は一人、熊を狩りながら生きていくが、その日々に疑問を感じ、揺らぐ。
別に、そのままで生きていけるのに。
食うことに困っているわけでもないのに。

時代も境遇も違うが、その部分になんだか親近感を覚えた。
私たちも、ストレスを抱えながらどうにか社会で役割を務め、金を得て飯を食っている。
そして、「俺の人生、このままでいいのかな?」とか、葛藤する。
別にいいのに。
飯が食えてて、明日死ぬ心配なんてないのに。

人とは、揺らいでしまう生き物なのだろう。
どんなに満たされても、未来への不安を拭うことなどできない。
それが人間というもの。

「ともぐい」というタイトルを考える。
私が考えるのは、「みんな同じやで」という著者からのメッセージだ。

あの人よりも優れている。
あの人よりはマシだ。
あの人はすごい。
あの人みたいに生きられたらいいのに。

他人と比較してしまうけど、人間など、根本では同じなのだ。
いとも簡単に揺らいでしまう自分を抱えながら、苦しみながら日々を生きていく。
そんなもの。みんな同じ。みんなともぐい。

この本を読んで、自分を責めてしまうことから少し解放された気がする。
私たちは熊じゃない。
どこまでいっても、死ぬまで人間なんだ。

だから、苦しんで当たり前。
揺らいで、うまく生きられなくても当たり前。

人間として、生きていこう。
ともぐいしながら、しんどいよなって愚痴言い合って生きていこう。

共食いってより、友食い。
みんな友だ。共に、この人生を強く生きていきましょう。

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