弱さがあるから人を愛せる。 〜「憐憫」を読みました。〜
島本理生さんの「憐憫」を読みました。
島本さんの作品を初めて手に取ったのですが、とても文章が綺麗で引き込まれてしまいました。
タイトルがいいです。
「憐憫」
ふびんに思うこと。あわれみの気持ち。
女優としてもがく女性と偶然巡り会った年上の男性。
よく見る純愛のラブストーリーとはまた違った、憐憫から生まれる愛おしさがそこには描かれています。
可哀想で愛おしい。
守ってあげたい、とはまた違う。
その人の弱さを見ると安心できる。
なぜなら私自身も弱い人間だから。
弱さを感じない、強い人間だったら、その目の前の弱い人間に対して何も感じなかったでしょう。
弱さを抱えて生きているからこそ、その人の弱さに憐憫という名の愛おしさを感じられたのです。弱さを起点とした愛情だっていいじゃないですか。その愛情があれば、自分の弱さだって愛せてしまうかもしれません。
互いの弱さを認め合い、それを別に補い合うわけでもなく、ただ認め合っていける関係は素敵です。
弱い人間が強く振る舞ったところで、いつかきっとボロが出て、歯車はうまく回りません。
私に生まれる憐憫の気持ちを、大切にしたいと思いました。
可哀想に。その人に何かできるわけでもないけど、そこに存在する憐憫が、他人を愛し、自分を愛して生きることに繋がります。
弱くていい。弱いままでいい。
一つの恋愛小説が、私たちの弱さに憐憫を向けて、人生を軽やかにしてくれました。
みなさん是非読んでみてください。
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