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若者の気持ちがわからずに苦悩する、おじさんたちにも読んで欲しい。〜「すべての恋が終わるとしても」〜

冬野夜空さんの「すべての恋が終わるとしても」を読んだ。

若者に140文字の小説が流行っているらしい。
時代だよなぁと、おじさんらしい感想を抱いた。

140文字で「サクッと」エモくなり、感動したい。ある種の煩悩のような感覚だが、様々なコンテンツが繰り広げられる現代においては、とても賢い小説の嗜み方ではないかと思う。

一般的な小説を読もうとすると、どう短く見積もっても1時間単位の時間を捻出する必要がある。リタイアしたご老人なら贅沢な時間の使い方もできるけど、残念ながら若者にそんな時間はない。漫画も読まなきゃいけないし見るべきYouTubeも溢れかえっている。SNSのチェックも欠かせない。

正直言って、私が本書を読んで抱いた感想は「物足りない」だった。しかし、この物足りなさが十分であり、むしろ余分なところを削ぎ落とした無駄のなさは、若者に大いに喜ばれるのだろう。

歳を重ねると、無駄の中にこそ人生の喜びが隠れていると思い込みたくなる。だから同じような長ったらしいエピソードトークをだらだらと繰り広げ、地獄のような空間を作り上げてしまったりもするのだが。

本書に触れることで、少し現代の若者たちの文化であったり考え方の一端に触れられたような気がした。
今若者たちが求めているのは、無駄のないスタイリッシュな気軽さを兼ね備えた、本書のような文学なのだ。

もちろん、読書の楽しみ方は人それぞれだ。
この本を読んで文学の楽しみに気づいた人は、140文字じゃ飽き足らず、もっと分厚い本を手に取るのだろう。

こうして時代や文化や人生についてたった140文字の小説が考えさせてくれた。それってすごいことだと思う。
毛嫌いせずに、飛び込んでみて欲しい。
140文字の世界は、案外居心地が良いものだったりする。

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