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「つまらない住宅地のすべての家」を読んで、「みんな色々あるよなという救い」を得た話。

津村記久子さんの「つまらない住宅地のすべての家」を読んだ。

ある住宅地に、逃亡犯が近づいているという情報が入る。
団結して対策する過程を描く中で、住人たちのそれぞれの生活や人生が少しずつあらわになっていく。

「みんな色々あるよな」と、思った。
そして、なぜだか救われた気持ちになった。

きっと、自分だけじゃないって安心できたからだと思う。
よかった。みんな真っ当に生きているフリして、実はちゃんと苦しんでいるんじゃないか。

それぞれが抱える悩みなど、表に出さなければ誰にも気づかれることはない。
周囲は私を普通の人だと思っているし、私は普通を演じて何食わぬ顔して今日も日常を生きる。

当たり前のことを思い出させてくれた。
家族の形なんてそれぞれで、完璧な家族など存在しないのだと。
みんな綺麗な部分しか見せてくれない。
なんで自分だけこんなにダメなんだと思ってだけど、実はみんな大差ない。どこかでちゃんと苦しみを抱えている。

それがわかるだけで、かなり心が軽くなる。
これが見えない部分を描いてくれる小説の効能だ。

なんだか、前よりも思いやりを持って生きられそうな気もしている。
みんな辛いよね。うんうん。わかるよ。

順調に見えるあの人も、どこかで人に言えない苦しさを抱えているかもしれない。
そんな想像力が人間どうしを繋ぎ、豊かな人生を紡ぎあげてくれる。
見えているものが全てではない。

日々を営む。
当たり前のことだけど、めちゃくちゃ大変なんだいうこと。
みんな色んな荷物や思いを抱えてなんとか生きてる。ギリギリの人だってたくさんいるのかも。

この本を読んで、安心してもらいたい。
苦しむのは、あなただけじゃない。
あなたが異常なわけじゃない。だから大丈夫。

多様性は日常の中にこそある。
普通に生きている人なんて、実は誰一人としていない。
みんな違い、みんな苦しみ、みんなどうにか平静を装って今日をやり過ごす。

あの人もしんどいのかもなっていう想像力。
自分だけじゃない。
みんな色々抱えて生きている。
それが普通。それでこそ人間。
だからこそ面白いと、人生は美しいのだと、前向きに捉えていけたらいい。

みんな大変だけど、みんな頑張ろ。
顔も知らない誰かと、なんだか繋がれたような気がした、とても素晴らしい読書体験だった。

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