死にたいって嘆くけど結局根っこにある「生きたい」〜「東京島」を読みました〜
桐野夏生さんの「東京島」を読んだ。
女性の強さ、人間に備わった生きることへの欲望について、物語を通じて思い知らされた。
物語の舞台は無人島。
そこからどうにか脱出しようとする過程の中で、登場人物たちの心理がリアルに描かれていく。
例えば私が無人島に放り出されたとして、自分が助かるためにどうでも良い他人を蹴落としたりもするだろう。
食べ物がなくなったら、しょうもない大嫌いなあいつの肉を喰らってでも生きようとするかもしれない。
きっとそれは本能だ。
人であり動物であるから、死んじゃダメだと思うし、生きるための行動を取り、人格さえも適応して歪んでいく。
死にたい。消えたい。
口癖のように呟く現代人たち。
もちろん、本当に辛い環境で苦しんでいる人たちもいる。
だけど、究極の状態までに追い込まれた時、結局私たちの脳裏によぎるのは「生きたい」という気持ちなのだろう。
ない状況を見て、ある今に幸せを感じる。
普通に飯食えて、シャワーも浴びれて、快適に過ごせて。
死んでしまいたいと思う夜もこれからあるだろうけど、自分の根っこにはきっと生きたいが存在してくれる。
何だか安心できた、そんな読書体験でした。