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純文学とエンタメが誠にバランスよく配合されている作品 〜「それは誠」を読みました〜

乗代雄介さんの「それは誠」を読んだ。

修学旅行に行った高校生の男女が、ある生徒の恩人にあうために規定のルートを抜け出していくという物語。
なんだか青春の味がした。素敵。

著者の作品をはじめて読んだけど、文章がとても好きだ。
文学的であり、ポップでもある。
洒落た言い方をしてみると、なんだか音楽を聴くように文字が脳内に入り込んできて、とても心地が良かった。

友情であり恋愛であり家族愛であり信頼であり。そのどれもがテーマに散りばめられているけど、良い意味でそのどれもに振り切っていない。奇跡的なバランス感覚の中に、物語が存在してくれている。

だからこそ、惹き込まれるのだろう。
人生とはきっと、そうゆうものだから。
ある瞬間に感じていることと、次の瞬間に味わう感情はまるっきし整合性が取れていなかったり。それが人間らしさでもあり、人生の楽しさだとも思える。

200ページに満たない小説だが、読み終えた今、確かに修学旅行で仲間たちと青春をしたような感覚が残っている。
ワクワクしてハラハラしてドキドキして。大切な人へ想いを募らせたりして。

筆者がインタビューで純文学とエンタメはゼロサムじゃないと仰っていて、なるほど、だからこんなにも惹きつけられるのだと腑に落ちた。

どっちかじゃなくていい。どっちも楽しむ。
何か一つじゃなくていい。色んな感情があっていい。

読書の奥深さと人生の彩りの多さに気づけた、素晴らしい一冊でした。

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