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今まで一緒に生きてくれた「私」に感謝 〜「私をくいとめて」を読みました。〜

綿矢りささんの「私をくいとめて」を読んだ。

独身の主人公女性が仕事や恋愛に向き合い、悩み、それでも前を向いて生きていく姿が描かれている。

主人公は悩んだ時や行き詰まった時、脳内の「A」という存在と会話する。
Aは自分自身であり、脳内の自分と会話している感覚に近い。

面白いのが、恋愛に踏み出して他者との関わりが色濃くなってくると、Aが現れてくる機会がグンと減ってしまう点だ。
主人公はそれを悲しく感じるが、きっと人間としては喜ぶべき状態であると思われる。

誰しも、自分自身のAと会話をした経験はあるのではないか?
私はどう生きたい?何がしたい?
ちゃんと生きられているかな?明日は大丈夫かな?これからの人生どうなっていくのかな?

私の場合、Aと会話する場面は割りかしネガティヴな状態が多い気がする。
Aが現れる時は大体が一人でいる時だし、根がネガティブな人間だから、そりゃ脳内の自分も悲観的な意見を述べてくれる。

ただ、若い頃と比べたら、明らかにAと会話する機会は減っている。
きっと「結婚」して、自分以外の存在が常に側にいるようになったからだと思う。

Aとの会話が苦しい人は、やはり他者と触れ合う時間を多くしていくしかない。
自分の内面を見つめる時間が増えれば増えるほど、Aとのネガティブな対話は増え、層を重ねるように不快な感情が積み重なっていくこともある。

ただ、思い返せばAと会話を繰り返す日々は、自分にとって大切だったのだと思う。
どうしたい?どう生きたい?
大丈夫?まだやれる?
そうやって自問自答を繰り返す日々は確かにしんどかったけど、あの日々が今の平穏な日常を支えてくれているのだと感じられる。

これからもAと会話する瞬間は訪れるのだろう。その瞬間を喜びながら生きていたい。
Aと会話する時、確かに私は自分自身と向き合い、人生と向き合い、真摯に生きようとしているのだから。

私は一人じゃない。
これまで一緒に生きてきた私とともに、これからも私の人生を私とともに楽しんでいければいいなと思う。

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