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ホスピタリティとクリエイティビティの両立~会いたかった珈琲人 内山道広さん~

noteを始めてからというものの世の中に
会ってみたい珈琲人(こひんちゅ)が増え過ぎた。
最初のnoteでも書かせて頂いた葉山の山口さんを始め
その思いや考えを共有する事はとてつもない学びだ。

そして今回も私が会いたかった珈琲人。
1 ROOM COFFEEの内山道広さんに
お話しする時間を設けて頂いた。

内山さんは自身のお店の運営形態として
ダイナミックプライシングを取り入れた事を
ご自身のnoteに記していた。
ビジネス用語としては皆さんには
耳馴染みがない言葉かもしれないが
需要と供給に応じて、商品やサービスの価格を
変動させる仕組みをダイナミックプライシングと呼ぶ。

繁忙期にチケットの価格を上げる航空会社や
インバウンド効果を受け宿泊費を上げるア◯ホテル
などを想像してもらうと分かりやすいと思う。

このダイナミックプライシングによって
付加され、変動する様々な値段を
顧客側のホスピタリティという側面で捉えるか
提供側のクリエイティビティという側面で捉えるか。

今回はそんなお話をしていきたいと思う。
かといってお堅いビジビジした話ではなく
エンタメ業界にも通じるマインドセットアップなので
是非、最後までご覧頂きたい。

東武東上線「中板橋」にある内山さんのお店
1 ROOM COFFEE

内山さんが目指したものとは

この日は通常11時オープンのところ
10時からお店に入れて頂いて
ゆっくり内山さんとお話しさせてもらえた。
店内を隅から隅まで自由に見学する事ができ
写真や動画も沢山撮らせて頂いた。

ちなみにこの形式は「ラグジュアリーパス」として
一般のお客様にも提供されているサービスで
不定期で利用者を募っている。
興味のある方は1 ROOM COFFEEさんの
instagramのストーリーをチェックして欲しい。

ラグジュアリーパスでの入店時に使える
奥の撮影スペースは陽の光が絶妙に差し込む映えスポット

そんな「ラグジュアリーパス」も
内山さんの描いた施作として非常に興味深いが
やはり先程から出てくるダイナミックプライシングに
なぜ内山さんは踏み切ったのか、という話をしたい。

そもそもの発端は週末のお客様の混雑による
待ち時間と提供時間の増大に対して
何か改善手段はないか、という事だった。

インバウンド効果もあり海外からのお客様も増え
土日祝日の混雑状況は内山さんの手に余るものだった。
当時ワンオペでお店を切り盛りしていた内山さんは
列を作るお客さんが視界に入るたびに
自分自身を急かしてしまったという。
待ち時間が増え、行列が伸びるたびに
焦りが募り人為的なミスが
更なる時間のロスを生み出す。

このままでは精神的にも運営的にも
良くないと考えた内山さんは
土日祝日はコーヒー料金を値上げするか
テーブルチャージとして料金を追加するかで悩んだ。
これがまさにダイナミックプライシングの導入だった。

どちらを選ぶにせよ設定する値上げ金額は150円。
しかしこの150円がコーヒーの値上げになるのか
テーブルチャージとしての心付けなのかで
意味は全く変わってくる。

そう「値上げ」か「心付け」かなのだ。
自身の精神的疲弊を緩和するための「心付け」として
お客様に理解頂くという方法を内山さんは選んだ。

そして内山さんの何が素晴らしいかというと
3ヶ月の間このシステムを導入した結果を
実際に数値で我々に伝えてくれたのだ。

結果で見る物質的幸福と精神的幸福

通常時の客数、売上を100%としたときに
3ヶ月の間集計したデータに平均値をみると
ダイナミックプライシングを導入した結果
客数は80%、売上は90%だったという。

この数字を見て結果をどう捉え
そしてどう生かすかが重要だ。

客数の20%減というものを見たときに
やはり来てくれる人が減った、という部分に関しては
少なからず心に影を落とす部分もあったそうだ。

しかしそもそもは混雑の緩和、つまり
客数を減らすことも目的だったこともあり
そういう意味で20%の減少は
丁度良いとすら言える数字なのではないだろうか。

売上の10%減に目を向けてみると
飲食店経営として10%減というのは
決して少なく済んだとは考えにくい数字だ。
しかし、今回のシステムの導入において
予想していたものよりは緩やかな減少だった。
ここに関してはテーブルチャージとして加算した
150円の効果も決して無関係ではないだろう。

さて、今回の結果において
数値化、可視化出来ないものがある。
それは内山さんの精神的な負担が
どこまで減ったのか、ということだ。
言い換えると心の余裕はどこまで増えたか?
という様にも考えられる。

減少した客数、売上と
増加した心の余裕とのバランスが取れているなら
今回、内山さんが挑戦した
ダイナミックプライシングの導入は成功と言える。

開店当初からはお店も移転され
お客さんのキャパも増えた現店舗での内山さん

内山さんがこれを実行したのは2年も前で
実際にお店でお話を伺った所
現在では客数も売上も以前より上がり
精神的にも良い状態でお店に立てているそうだ。

つまり内山さんは挑戦に成功したのだ。
お話を聞いていて胸が熱くなるのを感じた。
しかし今回の内山さんの挑戦の中で
私自身が共感を持ち、賞賛したかった部分は

外側、つまり顧客へのホスピタリティではなく
内側、つまり自分のクリエイティビティを
いかに担保する事ができるか

という、意外と目を向けられる事のない
提供側のケアにおいての事だった。

モチベーション維持にフォーカス

私の考え方の一つに
「自分を幸せに出来なければ
人を幸せにする事などできない」
というものがある。

自分さえ我慢すれば、耐えれば
いつか状況は良くなる、という考え方は
絶対にしない様にしている。

この状態を続けていれば
遅かれ早かれ破綻が襲いかかってくる。

音楽もそうだが、サービス業というものに
従事していると自分へのケアや投資というのは
後回しにされてしまう事が多いように感じる。

「お客様は神様」などという神話のような
考えが一般に蔓延ってしまうのも
この辺りが原因なのではないだろうか。

今回のダイナミックプライシングの大きな目的は
最終的な客数、売上の増加ではなく
作り手、提供側のモチベーションの維持だと
私自身は思っているし、実際に内山さんに
お聞きしたかったのはこの部分だった。

そして内山さんからは
「伝わっていて良かった」というお言葉を頂いた。

カスハラなんて言葉が生まれるほどに
お客様の声が大きくなってきている昨今。
そこにNOを突きつける決断をした内山さんには
心の底から敬意を表する。

そして普段は提供側として生きているものの
コーヒーに関しては顧客であり消費者である私も
150円で内山さんのクリエイティビティと
それを維持するモチベーションに協力できるなら
安いものだ、と思える自分でいたいのだ。

皆さんにもぜひこの精神的姿勢を持って頂きたい。
それはつまり目に見えないもの、無形のモノに
しっかりと価値を見出して欲しいという事だ。

内山さんこだわりのエスプレッソトニック
メニューや内装にも内山さんの思いがこもっている

形無きモノにこそ価値を見出そう

よくSNSで見る話だが
「これは原価で言えば1000円くらいなんだから
1000円で売ってくれよ」などと言ってくる人が
どうやら世の中にいるらしい。

はっきり言おう。それは人ではない。
人の形をした何か別の生き物なのだろう。
原価1000円のものを2000円で売った時に
その差額の理由や経緯を想像できるのが人なのだ。

もちろんそれを想像した上で
その差額に納得が行かなければ買わなければいい。
そこを納得させられないのは売り手の責任だ。
そしてその売り手も万人を納得させる必要がない。

この想像すべき理由や経緯は
音楽だったりサービスそのもだったり
つまり無形のモノになればなるほど
想像し難いものになっていくだろう。

しかし、この想像し難いものを想像できるのが
人という美しい生き物なのだ。

提供する側が提供される側の事を想像し
提供される側が提供する側の事を想像する。
この優しい想像の円環こそが
世の中を、人の心を豊かにするのだ。

今回の記事はnoteの「推したい会社」コンテストに
応募している記事でもある。
内山さんは1 ROOM COFFEE開業後の
2018年に「ROOMS合同会社」を設立している。
この内山さんの会社を私の「推したい会社」として
今後も応援していきたいと思っている。

皆さんも今回の記事の内容に賛同して頂けたら
どうかフォローとスキ!をお願いしたい。
そう。私は皆さんの推しになりたいのだ。
頼む。お願い。いやお願いします!!!

それではまた次のnoteでお会いしましょう。

もはや勝手に戦友だとすら思っている
内山さんと私

#推したい会社

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