〈あの図書館の彼女たち〉 戦時下における本の力について考える
戦争✕図書館──
つい手に取ってしまう本のテーマである。
【あの図書館の彼女たち】
今年4月に出版になった《あの図書館の彼女たち》は、第二次世界大戦中のパリ…にあるアメリカ図書館を舞台にしていて、実在の出来事や人物を基に肉付けされたストーリー、というのが私の読みたい意欲を掻き立てた。
本が人と人とを結びつけ、心を育ませる一方で、つらい別れをも呼び込むこととなる。
図書館に収蔵された本の運命と、戦時下のパリに生きる人々の運命、そして時代も場所も越えて、その一昔前の人々の心に触れることになったアメリカの少女…が切り拓かなければならない運命。
オディールの過去が少しずつ解き明かされる過程はミステリーのようでもあり、引き込まれるうちにあっという間に読み終わった。
ここで悩ましいのは、読書感想文にもならないような、語彙力皆無の私のこの記事である。
体裁を整え格好よく書くことなどできそうもなく、金曜夜の疲れた頭が早く寝たがっているので、私のエセ感想文はこのくらいにして、これまでに読んだ(観た)作品をご紹介しようと思う。
【戦地の図書館】
こちらは、あの図書館の彼女たちと同じく第二次大戦中にアメリカが展開した史上最大の図書作戦について書かれたノンフィクション。
「ビブリオホロコースト」と呼ばれるナチスが行った1億冊にも及ぶ書籍大虐殺に対して、時の大統領ルーズベルトは、書籍は民主主義の象徴であり、思想戦における武器だと心から信じ、それに賛同した国民や図書館員たちが戦地に本を送り続けた。
日本もドイツと同じように思想統制が敷かれ、多くの本が発禁処分となった同時期に、アメリカ人兵士たちは兵隊文庫を肌見離さず持ち歩き、銃撃戦の最中に、時に負傷した病院で、更には蛸壺壕の中で泥土にまみれながら、暇さえあれば本を読んでいた理由は、自分というものを保つため、人間であるということを忘れないためだった。
本の力を感じることができる一冊だと思う。
【夢見る帝国図書館】
こちらは、明治に日本で初めて開設された上野の帝国図書館(現国際こども図書館)の資金難に苦しみ続けた戦前戦後の歴史や、そんな中足繁く通った文豪たちのエピソード、図書館が樋口一葉に恋してしまったり、発禁処分を受けた本たちが語り合ったり…とってもユーモラスな語り口で展開されていくファンタジーのような物語。
この本がきっかけで昨年秋に初めて上野を訪問し、閉館時間は過ぎていたが夜の「帝国図書館」を静かに見つめることとなったのを思い出した。
そして最後はドキュメンタリー。
【戦場の秘密図書館】
内戦下のシリアで、秘密の地下図書館を作った若者たちのドキュメンタリー。
たる爆弾が日夜降り注ぐ中、若者ががれきの中から本を集め、廃墟の地下室に収蔵。銃撃戦に明け暮れる戦闘員らが、休憩時間に訪れては手当たり次第にページをむさぼり読む。英語を学んだり、哲学を議論したり、スカイプ通信で外国の著者と対話する…。
「戦争は決して過去のものではない」
ということを思い知らされるドキュメンタリー。
当たり前のように本がある毎日が、当たり前のものでなくなる。それが戦争。
この手の本を読むと、心が苦しくなる一方で、本が持つ力や希望を強く感じ、ポジティブな感情に満たされる。
引用ばかりになってしまうが、最後にルーズベルト大統領の言葉を記したいと思う。
❝私たちは皆、本が燃えることを知っている。しかし燃えても本の命は絶えないということもよく知っている。人間の命は絶えるが、本は永久に生き続ける。いかなる人間もいかなる力も、記憶を消せない。いかなる人間もいかなる力も、思想を強制収容所に閉じ込められない。いかなる人間もいかなる力も、あらゆる圧制に対する人間の果てしなき戦いと共にあるこの者をこの世から抹殺できない。私たちは、この戦いにおける武器は本であることを知っている。❞