
【本】 おすすめのデザイン3部作
何度も読み返したいおすすめの本。
生き方や物の見方に衝撃を与えられた、デザイナーが書いた本を3つ紹介します。
白
原研哉,2008,中央公論新社
白を起点として、そこから豊かなイマジネーションが展開されていく。
美しい世界が描かれている。
白は感受性であると著者はいう。
この本で書かれている「色」というのは、数値で計測して捉えたものではなく、色、質感、匂いなど、その対象を全感覚的に捉えたときに感じるものだとする。
白い紙、水飛沫、卵の殻、
そして白から連想される「空間」からは神社の境内や日の丸の旗。
また白と褐色を対比させ、そこから秩序と混沌、生と死へと連想は進む。
白は生き物が誕生した瞬間の色で、白はやがて褐色へと流れていく。
生きるということは、この白から褐色へと流れる中で、自分が白を立ち上げ続けていく営みだと私は考えた。
デザインの輪郭
深澤直人,2005,TOTO出版
一つ上に書いた本の著者である原研哉も「脅威のデザイナー」と絶賛する深澤直人。人の無意識にデザインを仕掛けるデザイナー。
この本の中で印象深かったのは「ふつう」について書かれた箇所。
著者は、デザインは奇抜で変わったものでなければ、という思い込みがあるとする。
そこで「ふつう」のものをデザインする。
「ふつう」という感覚は今の日本から薄れている。
かっこよさではなく「質」が重要だと著者は言う。
質の良い食材(ふつう)は、昔どこの家庭でも食べることができたが、今、そうしたふつうを求めると、高級料亭に行かないと食べられないと書かれていた。一方
イタリアでは身につけている服や靴、食べ物まで、質素で質の高いものを享受していると言う。
私は年に数回、ある鮨屋に出かけて鮨を食べる。そこで使われている鮨ネタは大変質が高い。毎朝築地へ出かけて質の高いものを入手していると聞いた。しかし、昔、今のように流通網や保存技術が乏しかった時代は、そうした質の高いものが、「ふつう」のものだったのではないかと考えた。どこの家庭でもそうした「ふつう」に触れることができたはずだ。
今は日が立っても腐らない化学調味料が使われ、食感や味を人工的に生成した食べ物が店に並び、それが「ふつう」になってしまった。昔の「ふつう」の食べ物は、たしかに高級料理店に行かないとありつけなくなった。
話は脱線したが、こうした目から鱗が落ちるような話が、この本の中にはいくつも閉じ込められている。
服を作るーモードを超えて
山本耀司,2019,中央公論新社
ファッションブランドのYohji Yamamotoのデザイナー。
著者の子ども時代から話は始まり、どのようなプロセスを経てデザイナーになったのか、今に至ったのかが書かれた本。当然、学卒後就職して会社に勤める人生とは訳が違い、イバラの道、考えられない奇跡のような話もある。
そして、社会の王道ではなく、アンチテーゼ的な道を歩んできたことも書かれていた。何かを作る人はこんな経験をしていないと、いい作品が作れないのかと思わされた。
琴線に引っかかったのは、
デザイナーには豊富なインプットが必要で、会社と家との往復を毎日続けているような人はいい作品が作れないこと、作品にはその人の経験が露呈すると書かれていた箇所。
サラリーマンとなって、人工的に作られたシステムの中で毎日同じことを反復しても、それが創造力の源泉とはなりえないと感じさせられた。その小さな箱の外側に、源泉はあると改めて考えさせられた。
・隠せば隠すほど中はどうなっているんだろうという想像力が掻き立てられること
・間の美学
・作品に現れるその人の経験とは、要約するとどんな異性と付き合ってきたか
について書かれた箇所もとても面白かった。