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むにみずべ 岐阜編02 郡上八幡の水舟と川ガキ
とうとうフィナーレを迎えた郡上踊り。
熱くも涼しい郡上八幡の夏は、清流が人々を、街を潤します。
これ知っていますか?
徹夜で踊る世界遺産
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一般に徹夜してやることといえば、手袋を編んだり、麻雀をしたりと、まぁその辺が相場です。
(建築の皆さんは、魂のエスキスや、決死の模型作りもあるかも知れません…)
しかし、郡上八幡は、そんなインドアイベントに終わるような街ではありません。
そうここでは、外で、徹夜で、踊り明かすのです。
たとえ雨が降ろうとも。
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ユネスコも、そんな覇気の漂う文化を認め、郡上踊りは無形文化遺産になりました。
訪れた2024年9月7日は、くしくも郡上踊り最終日。徹夜で踊るのはお盆の4日間だけですが、最終日もまた夜遅くまで続きます。
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3ヶ月に渡って踊り狂う夏、その熱気は、足元で冷やしてくれる郡上八幡の水に支えられています。
最も高いところにある 天空の水都
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水都と称する街は数多ありますが、そのほとんどが海辺や、水路の張り巡らされた低地にあります。そんななか、郡上八幡は、奥美濃の山中に忽然と姿を現す、天空の水の都です。
だからこそ、いわゆる水都のイメージのような、たくさんの船の代わりに、ここでは他の追随を許さない清流と、そこに置かれる水舟が主人公です。
郡上八幡の水辺を彩る水舟
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水舟と呼ばれる段差の設けられた水場は、上から飲用水、野菜などを洗う、食器を洗う、魚を育てるなど、段毎に利用方法が決められ、水を共有する工夫がなされています。
特に最終段には鯉が放たれ、食べカスなどをもれなく綺麗にした上で、川に戻します。
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基本は住民が管理し日常生活に使うものであり、旅行先の道端で食器や野菜、衣服などを洗うこともない観光客は使うタイミングがありません。
しかし、むにみずべとしてご紹介するからには、それだけじゃないのです。
この水舟を体験する方法、それは飲むこと。湧水はひんやりと冷たく、暑い夏には最高です。さぁ持っているペットボトルをすぐさま飲み干し、いざ向かうはポケットパークです。
ポケットパークの結晶
郡上八幡では、高度経済成長期に失われていった水辺を、いち早く1970年代には取り戻す動きが始まります。そうして、日本経済が好調だった1980年代を見事に使いこなし、街の至る所に、ポケットパークをたくさん作ることにしました。
このポケットパークは、単に遊具を置くのではなく、郡上八幡ならではの水の使い方を研究して作られており、場所によって様々な使い方を体験することができます。
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特に有名なのは、宗祇水です。
名水百選の筆頭
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宗祇水は、かつてこの辺りを治めた殿様が、宗祇という和歌の達人にその奥義を授けた後、この泉の辺りでお別れの和歌を詠んだことが由来です。
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1985年に始まった名水百選に宗祇水が選ばれ、水のポケットパーク整備は勢いを増します。
と、この名水百選を契機に、郡上八幡はもう一つの文化を全国に知らしめることになります。
川ガキです。
責任を背負って飛んでいく川ガキ
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名水百選をきっかけに行われた名水シンポジウム。その取材カメラが捉えた川ガキたちは瞬く間に、郡上八幡の夏の風物詩となりました。この時に内外に知れ渡ったことで、安全第一で水に触れられない水辺が多くなった現在においても、「自己責任」との認識で、今日もぴょんぴょこ飛び込みます。
水舟から飲む水も、吉田川への飛び込みも、「自己責任」だからこそ文化として根付いているのだと思います。
おそらく2024年に整備が始まったのであれば、全く違う街の姿になっていたでしょう。
さて、もちろんここには、飛び込まずとも手軽に楽しめる清流スポットが沢山あります。
清流沿いの遊歩道
まずは中心を流れる吉田川。宮ヶ瀬こみちは、山と川と人が共存する郡上八幡を最も感じさせてくれる遊歩道です。
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郡上踊りの始まりを演出します
また、川ガキの方以外、陸ガキの皆さんが遊ぶなら、吉田川の支流、小駄良川が最適です。
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相変わらず透き通るような清流
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遊歩道を歩くと感じるのは、郡上八幡の水面がとても賑やかであることです。
川ガキ達による飛び込みだけでなく、浅瀬で遊んだり足を浸ける人々、そして何より、鮎の友釣りにいそしむ釣り人です。
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京都の嵐山では、行き交う舟の多さに感動しましたが、
どうやら中心にある水面がぽっかりと空いているのか、それとも賑わっているのかは、素敵な水辺空間の大きな鍵のひとつであると言えそうです。
以上、想いが溢れ長くなりましたが、郡上八幡の水舟と川ガキでした。
郡上踊りは終わりましたが、ぜひ厳しい残暑、足を運んでみてください。