むにみずべ 静岡編01 源兵衛川せせらぎウォーク
真夏、源兵衛川の輝きは最高潮に達します。川沿いの遊歩道なんて生やさしいものではない、本気の川歩き。
こちら、知っていますか?
このブログでは東京で船頭見習いとして修行中の筆者ムニが、唯一無二の水辺体験、むにみずべを求めて国内外をさまよいます。
若かりし頃のヤンキー富士
最近は長いことお休み中の富士山も、若かりし頃はボコボコと荒ぶって、噴火を繰り返していました。昭和にできた昭和新山や、最近も元気よく噴火する桜島に、富士山はフッと笑いながら言う訳です。
俺も昔はワルだった。
さて今では丸くなったかつてのヤンキー富士から溢れ出た溶岩は、箱根の山にぶつかり、谷筋を海へ向かいました。そうして流れがピタッと止まったのが、ここ、三島。
溶岩の層というのは目が荒く水を通すので、山肌に降った雨は溶岩層を通って三島付近で地表へ。これが三島市内に見られる湧水という訳です。
溶岩と水が顔を出す楽寿園
この三島を形作る地球の息吹、またはヤンキーの吐息たる、溶岩と湧水がまさに直接見える場所が、楽寿園です。
三島駅前に陣取る楽寿園。東京駅で言うところの丸の内の様な場所にあります。
もしかすると、高台である溶岩層の端に沿って東海道線を敷設したため、同じく溶岩層の端にある湧水地の楽寿園が駅前にあるのかもしれません。
そんなこちらの庭園は、神社の一部だったところが、皇族や朝鮮王族、海運王の別邸などを経て、公園として公開される様になりました。
楽寿園は駅から入ると休憩所や動物触れ合いコーナー、文化財の楽寿館があります。ですがその真髄は小浜池です。木々は、きっちりと整備され尽くした東京の庭園に比べてより力強さを感じ、かつ湧水は止めどなく流れます。そして、水の音はとても心地良く響きます。
さてここから水は楽寿園を出て源兵衛川へと続いていきます。いよいよ、せせらぎウォーク、始まります。
かつての清流は、こんなに取り戻せるものなのか
楽寿園の小浜池を源流に、市内を流れていく源兵衛川。これぞ今回のむにみずべです。
灌漑用水として付近の農地に水を供給していた川で、かつては豊富な水量があり、街を流れる中で、野菜を洗い、洗濯をし、様々使われていました。
しかし、水辺の苦難の時代、高度経済成長期を乗り越えることはできませんでした。
工業用水として上流で汲み上げられ、代わりに生活排水が流れ込み、そしてゴミが捨てられ、かつての清流は見る影もなくなりました。
しかし、ここからが三島の本気です。
元号が平成に変わる頃、住民は、国も市も、大学や企業までも、巻けるものは何でも巻き込み、大々的な運動を展開。
そうして、泣く泣く蓋をして下水道と化した、多くの川たちとは違う未来をつかみました。
延々とどこまでも続く飛び石
誰しもが童心に帰る飛び石は、通常川を渡るため、横切る様に設置されます。その長さは数mから数十m程度。
ちょっと童心に帰ってもすぐに現実に戻るような、そこいらの川とは違い、ここではもう童心から抜け出す方法はありません。
ここ三島の飛び石は、川に沿って縦切る様に(?)延々と続いていくのです。
そんな魔法をかけてくる飛び石、様々な思いがあります。
三島では、案内板や歩道の舗装も、庭園内にも溶岩が使われ、黒く荒々しい岩が市内の至る所に登場することで、三島らしさの一部を作ります。
もちろん、源兵衛川の飛び石も溶岩です。しかも多孔質(たくさんの小さな穴が空いている)な溶岩を使うことで、植生の拠り所ともなり、なんと飛び石が水質改善の機能も担うとか。アイデアに脱帽ですね。
また飛び石は所々クネクネと曲がったり、大きさも違ったり、油断なりません。実はこれ、あえてこの様に計画しているのだとか。
住宅街のど真ん中も流れる源兵衛川は、憩いの場になって欲しいけど、ジロジロと家を見られるのは避けたい。そこでフェンスを付ける、なんてことはしない三島。
様々な飛び石が入り乱れることで、皆自然と足元に集中。すれ違う時なんてもう全集中。家の中なんて覗いていたら、気が付けば水の中にいるでしょう。
また面白いのは、絶対に濡れない訳ではないこと。水位が低い時は飛び石が顔を出しますが、2024年夏の様な水量の多い時は、飛び石のほとんどが水面下になります。それでも普通に歩けます。そしてこの水が気持ち良い。湧水は温度が一定で夏はとても冷んやりと気持ちがいい。
アスレチックフィールドでも何でもなく、市内の川で足はびしょ濡れになるのに、サンダルさえ履けば服はそのままでも問題ない。だからこそ市民生活にしっかりと溶け込んでいるのだと思います。
聴こえてくるのは夏の音
油断ならない飛び石を一心不乱に追いながら、ふと気が付くと、あたりは真夏の音でいっぱいになっています。
セミがミンミンと鳴いたかと思えば、飛び石に当たる水の音が強まったり。踏切を電車が通ったかと思えば、楽しそうに水遊びに興じる子どもたちの笑い声が響いたり。
小さな子どもたちだけではありません。道を歩いている時に、さっと自転車で抜いて行った中学生や、バイトの話に夢中だった部活帰りの大学生達も、その後源兵衛川を歩いていて偶然見かけた際には、皆水遊びに夢中でした。
そして何より、三島で見かける人は大抵、サンダルでした(源兵衛川周りに居たからだとは思いますが)。
外湯巡りをする人々が浴衣姿で街に繰り出す城崎温泉や、提灯を持ってそぞろ歩きする温泉街など、その街らしさの風景を人々が作り出していることがありますが、
細やかなながら三島でサンダルの人を見かけると、源兵衛川歩いたのかなと想像し、嬉しくなる訳です。
きっと三島の人たちは、川に入る準備ができています。川が街に開かれれば、すぐにでも使いこなせるだけの英才教育が、行き届いているからです。
以上、静岡は三島の、源兵衛川せせらぎウォークでした。
予約、要りません。準備、サンダルだけです。
明日にも行けます。ぜひ今年の暑い夏、せせらぎで涼んでみてください。
また中郷温水地まで歩いて、三島駅まで戻るのが億劫になった方、せせらぎ号なる路線バスもありますので、ご心配なく。
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